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  トップページ > 業種のページ > 製造・小売 > 全国商工新聞 第2795号 8月27日付
業種 製造・小売り
 
変わる業界・印刷
製紙メーカー 7月から印刷用紙10%値上げ
印刷関連10団体 「容認できぬ」と意見書提出
これで3度目 企業努力も限界
 原油や古紙高騰などを理由に製紙メーカーが7月1日からいっせいに印刷用紙を値上げしました。印刷関連業者は価格に転嫁できずに悲鳴を上げています。全日本印刷工業組合連合会(全印工連)や日本グラフィックサービス工業会(ジャグラ)など印刷関連10団体を組織する日本印刷産業連合会(日印産連)は7月9日、王子製紙および日本製紙の2大製紙メーカーに「値上げは容認できない」と意見書を提出しました。印刷業界挙げて反対の声を上げています。

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全国商工新聞を印刷している鰍ォかんしの新聞印刷機。新聞用紙も値上げの対象になっています(撮影=尾辻弥寿雄氏)
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印刷会社に詰まれている印刷用紙(東京都内で)
 今回の印刷用紙の値上げは一律10%以上、1キロあたり約10円です。製紙メーカーは昨年も春と秋から暮れにかけて印刷用紙を値上げし、今回はそれに続く3度目の値上げ。「企業の努力だけではもう限界」との声が印刷業界全体に広がっています。
  日印産連の意見書では(1)昨年末に続く、半年後の再値上げであり、全品種一律10%以上の大幅な値上げはあまりにも唐突で急である(2)値上がり分を印刷物の価格に反映することは困難であり、お得意さまの理解が得られない(3)為替差益を考慮しても国内紙の値上げ幅が輸出紙に比べて大きい‐‐として値上げに反対しています。

中小印刷業者を値上げが直撃
  加藤忠彦専務理事は「製紙メーカーは原油や古紙の値上がりで来年3月期決算見通しで経常利益の約3割減を予想しているが、赤字にはなっていない。製紙メーカーと印刷業界は両輪の関係で、お互いの状況を理解し合わなければならない。われわれは紙がなければ商売はできない。用紙値上げ分を印刷価格に反映するのは非常に厳しい」と強調します。しかし、製紙メーカーはこうした印刷業界の声を聞き入れず、値上げを強行しました。
  印刷用紙は通常、製紙メーカーから代理店や卸商を通じて印刷業者に流れています。全印工連の武石三平専務理事は「昨年2度に続く再値上げであり、今回は代理店や卸商の強い攻勢を受け、中小印刷業者には10%の値上げが直撃している」と言います。
  全印工連は約7000社の中小印刷業者が加入しています。従業員が19人以下の事業所が約80%を占め、印刷用紙代の値上げは死活問題です。「値上げ反対の主張は変えられない。しかし、製紙メーカーの値上げに対する姿勢は固く、価格修正への理解を顧客に求めざるを得ない」と武石専務理事は話しています。
 
価格修正が容易ではない官公需
  業界内では製紙メーカー各社が一律に10%以上の値上げを代理店に求めていることに疑問の声が上がっています。「私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律」(独禁法)では組合や団体が価格を決めることは、禁止されています。ところが、製紙メーカー各社は上げ幅も値上げ時期も足並みをそろえており、「独禁法違反ではないか」との声が上がっています。
  「過去には公正取引委員会に意見を上げたこともあるが、資料となる裏付けがなければ動かない」と武石専務理事は指摘します。
  印刷業者は価格修正への理解を顧客に求めていますが、年度初めに予算が決まる官公需は容易ではありません。用紙が上がってもその分を価格には転嫁できず、官公需のウエイトが高くなっている地方ほど事態は深刻です。しかもその予算は前年比10%〜15%カットされた額で、もともと単価が低く設定され、値上げ分を上乗せする余地などないのが現状です。
 
転嫁できないと経営成り立たず
  さらに再生紙の問題が降りかかっています。これまで日本製紙と王子製紙の2社はR(リサイクル)100%の再生紙を生産していましたが、日本製紙が生産過程でCO2が発生することを理由に、9月から生産を中止します。官公需の仕事はR100%の指定が多く、品薄になるのが予想され、値段が上がることが懸念されています。
  1300社余りの印刷業者が加入し、情報提供や従業員などの教育研修などを重視して活動しているジャグラも対応に苦慮しています。青木俊樹専務理事は「ジャグラとしては値上げ反対の旗は降ろせない。再々再度の値上げで印刷業者の経営は極めて深刻。値上げ分を転嫁しなければ、経営は成り立たない。顧客に理解を求めているが、製紙メーカーに対しても言うべきことを言い、値上げ反対の行動を起こすことも必要」と話します。
 
大手2社優遇に不公正と批判も
  ジャグラの会員で宮城・仙台民主商工会(民商)の三戸部尚一さんは(50)はこれまでの2回の値上げでは価格に転嫁しませんでした。しかし、今回はやむなく価格修正を要請せざるを得ない状況です。「2大メーカーである大日本印刷と凸版印刷は、購入量が多いとはいえ、製紙メーカーからかなり安い価格で用紙を購入している。われわれには代理店を通して一方的に値上げを通告してくるが、この2社に対して製紙メーカーはお伺いを立てるなど公正さに欠ける」と批判しています。
  紙の卸業者からは「大日本と凸版がせめて値上げ分の5%を負担してくれれば、用紙代を上げる必要はない」との声も上がっています。
  今後、印刷用紙代がさらに上がる可能性も否定できず、石油を使うフィルムやインクなどの価格も上昇しています。資材高騰の波を乗り越えられるかどうか、印刷業界全体が瀬戸際に立たされています。

 

 
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