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  トップページ > 業種のページ > 建設土木 > 全国商工新聞 第2909号 1月11日付
 
業種 建設土木
 

祝い金で町に建築ブーム

山形・鶴岡民商余目支部が要望
 地元業者に仕事を

 「やっと明るい見通しが見えてきたの」―。山形県庄内町(05年7月、旧余目町、旧立川町が合併)の「持ち家住宅建設祝い金事業」(祝い金)が地元建設業者に「活力と自信」を与えています。建設ブームが広がり、町も「第2の公共事業」と位置づけるほど。地域経済活性化の“切り札”としてクローズアップされています。

町民も業者も笑顔
 「もう快適。これまでの家に比べたら最高です」。リフォーム工事を終えたばかりの自宅で新年を迎えたTさんは笑顔いっぱいに話します。
 雨漏りに加え、寒さで部屋の移動さえ「おっくうだった」という築37年の自宅。地元業者の(有)長谷部建築に増改築を依頼して昨年秋、「高断熱・高気密」の家に生まれ変わりました。
 「先立つものがなくて3年前から悩んでいた」というTさん。その背中を押したのが町の祝い金事業でした。
 家が新しくなったうえに、50万円の祝い金をもらうことになったTさん。「うれしいですね、少しでも家計の負担が減らせるわけですから。祝い金で笑顔になります」
 町民に笑顔をもたらしている祝い金は08年4月にスタート。地元業者に新・増築を発注した場合、施工主に工事費の5%を助成する制度(最大50万円)です。増改築だけでなく、新築や車庫、倉庫、店舗なども対象とし、申請も簡素にするなど「使い勝手がいい」のが特徴です(図)。

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 「忙しくなった。祝い金で仕事も増えている」とTさん宅をリフォームした(有)長谷部建築の長谷部忠社長(鶴岡民商会員)も制度を喜んでいる一人。祝い金を活用した仕事をこれまで5件受注、工事総額は7000万円に上っています。
 「住宅のリフォームをすると、基礎、製材、サッシ、建具、内装など20社近くがかかわってくる。延べ人数でも200人を超える仕事。住宅建設による地域経済活性化への影響は大きい」といいます。

7億円を突破
 制度を活用した初年度の新・増築の工事件数は109件(うち新築25件)。翌09年度は1・5倍の158件(同22件、09年11月現在)と急増し、09年度の工事費総額は7億円を突破。町の調査でも着工数の増加分はすべて地元業者への発注で、町に建設ブームをつくりだしています(表)。

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 「町の最大の公共事業である一般土木工事(10億円)に迫るほどで、祝い金事業は『町の第2の公共事業』なんですよ」と原田眞樹町長も胸を張ります。  町の試算によると、経済波及効果は約30倍。「住居の整備に合わせて家具、家電、調度品の購入も行われているため、もっと大きくなる」と指摘し、固定資産税も約300万円の増収が見込まれると予測しています。
 もともと新・増築の件数は100件前後で推移していた庄内町。しかし、その7割を大手ハウスメーカーが受注。地元業者には仕事が回らない事態が続いていました。
 その実態を示し「地元業者に仕事を」と原田町長(当時は余目町長)に真っ先に要望したのが、鶴岡民商余目支部でした。その後、町は商工会や建設労働組合とも懇談を重ね、「地元建設業者の受注増加と施工主への支援をどうするか」を考え抜いてつくったのが祝い金でした。
 「助成金ではなく『祝い金』という名称にしたのも、町が歓迎するという意味が込められているんです」と原田町長はいいます。

後継者育成も
 「祝い金」制度は「営業は苦手」という業者の仕事のスタイルに変化を作り出しています。
 (有)斎藤建具店の斎藤芳郎代表もその一人。「『建具の調子はどうですか』と言ってお客さんのところをメンテナンスして回る。その際に、気軽にリフォームを提案するんですよ」と斎藤さん。元請けとなる大工さんを紹介することで仕事を増やし、その件数は20件にも達しています。「もう大歓迎。大手ハウスメーカーに対抗する自信がついてきた」と力強く語ります。
 制度創設後、大工さんなどでつくる地元の建設組合「匠工組合」に10人の若者が加入。後継者育成につながるなど、思わぬ波及効果ももたらしています。
 鶴岡民商副会長で全商連常任理事の遠藤強さんは強調します。
 「祝い金制度は、地元建設業者を思い切って支援することが、単なる業者支援にとどまらず、地域経済活性化の切り札になることを示している。建設関連業者の実態を自治体や首長にぶつけて、仕事おこしの提案を積極的に行っていくことが求められています」


 「持ち家住宅建設祝い金事業」
 地元の建設業者に住宅の新築などを頼むと、施工主に工事費の5%が祝い金(現金)として交付されるもの。1000万円以上の工事の上限は50万円で、住宅の新築、増改築、修繕工事を町商工会に加入している法人と個人業者に発注することが条件。事業は08年度から3年間の予定ですが、原田町長は「別の形で制度を継続させていきたい」と表明しています。
   
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