全国商工新聞 第3377号2019年9月16日付
日本では、消費税が社会保障の主要財源と位置づけられ、社会保障の充実のためと称して、税率の引き上げが行われてきた。しかし、消費税が増税されても、社会保障の充実は見られず、医療・介護のように削減されている分野もある。
憲法25条から導かれる「応能負担原則」に従えば、社会保障の主要な財源は、逆進性の強い消費税ではなく、累進性のある所得税や法人税に求めるべきで、所得税や法人税の累進性を強化する税制改革が必要となる。
所得税については、所得税率は1986年まで15段階、最高税率70%(住民税の最高税率18%と合わせて)であったが、現在は7段階、最高税率55%(住民税の10%と合わせて)と累進性が大きく緩和されている。少なくとも、最高税率の水準を86年水準にまで戻せば、相当の税収増になるはずである。
法人税については、引き下げられてきた税率を元に戻し、さらに引き上げも検討すべきだろう。法人税率は、現在は23.2%(18年)で、所得が増えても同じ一律の税率である比例税率になっているが、これを所得税と同じ累進税率(所得が増えると税率も増える方式)にすれば、法人税収は19兆円増加し、資本金5000万円以下の中小企業は減税となるとの試算もある(菅隆徳税理士の試算)。また、大企業に集中する租税特別措置の見直しや廃止など、法人税の課税ベースを拡大することで税収増が可能となる。「不公平な税制をただす会」の試算では、こうした不公平税制の是正により、17年度の増収は、国税で27兆3343億円、地方税で10兆6967億円、合計38兆310億円に上るとされる。消費税を増税しなくても、いや減税しても社会保障の財源は十分確保できるのである。
すでに景気後退局面に入ったとみられる現状での消費税率10%への引き上げは、景気をさらに悪化させ、企業倒産の増加、失業率の上昇をもたらす可能性が高い。景気が悪化すれば、法人税・所得税の税収が減り、税収全体が落ち込んで、財政再建にもならない。現にこれまでも、消費税の税収分は、所得税や法人税の減収分の穴埋めに使われており、財政再建にほとんど寄与していない。また、複雑な複数税率やポイント還元制度などの導入は、現場に大混乱をもたらすこと必至である。
社会保障と消費税・税制の正確な現状を知らせつつ、医療・介護・年金など社会保障の充実案、そのための財源は所得税と法人税の累進性の強化によって十分賄えることなどの対案を提示し、野党共同で消費税増税中止法案を提出させる運動が早急に求められている。