全国商工新聞 第3350号2019年2月25日付
政府は消費税10%への引き上げにあたり、食料品(外食、酒類を除く)と新聞等の税率を8%に据え置く軽減税率制を採用し、消費税の負担を緩和すると言っています。本当に負担の緩和になるのでしょうか?
この点を、総務省が公表した「家計調査」2018年分(2月8日公表)を使って検証しました。結果は表のとおりです。
ここからも分かるように、食料品などに軽減税率を採用しても、消費税の軽減は月額で1000円前後に過ぎず、月当たり、世帯員1人当たりでいえば500円程度に過ぎないのです。これで消費税の負担緩和策とはおこがましい限りです。
なぜ、軽減税率がこの程度の負担緩和にしかならないのでしょうか? それを考える上で参考になるのがEUほか、日本の消費税に相当する付加価値税を導入している国々の税率の構造です。EUというと、付加価値税が飛び抜けて高いと紹介され、日本の消費税率はまだまだ低いという宣伝にしばしば利用されてきました。
確かに、EU諸国では標準税率は20~25%とされています。しかし、食料品はイギリス、カナダ、オーストラリアはゼロ税率、韓国は非課税、フランス5.5%、ドイツ7%です。また、イギリスでは水道水、国内旅客輸送もゼロ税率、オーストラリアでは水道水がゼロ税率です。
この他、図書もイギリス、ドイツ、韓国でゼロ税率、フランス、カナダでも日本より低い税率です。
つまり、一口に軽減税率といっても、日本の消費税の場合、諸外国と比べて、食料品等の軽減割合は極めて小幅で、適用対象も非常に狭いことが分かります。
これが軽税率による消費税の負担緩和が僅少な理由です。
こんなまやかしの「軽減」税率に惑わされず、富裕層の所得の大半を占める株式譲渡所得を20%という極端に低い税率で優遇したり、法人税率を引き下げ、使うあてのない内部留保を積み増すなどのゆがんだ税金の集め方を正せば、消費税の増税は全く不要なのです。