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消費税廃止各界連絡会(各界連)の消費税増税中止を求める署名宣伝行動(1月17日)

 安倍政権は消費税を10%に引き上げようとする一方で、「戦争する国」づくりへ軍拡路線を突き進んでいます。軍事費は過去最高を更新。増税の口実にしていた社会保障費は削減し、中小企業対策費も減らしています。消費税は何に使われているのか、消費税はどんな税金なのか、本来、税金の集め方、使い方はどうあるべきか?。消費税と税制の問題をあらためて検証します。

【目次】
「社会保障のため」はウソ 消費税収 法人税減税の穴埋めに
兵器”爆買い”で過去最高 軍事費削って福祉に回せ
財源は税のゆがみただして 富裕層・大企業に応分負担を

「社会保障のため」はウソ 消費税収 法人税減税の穴埋めに

 政府は「社会保障の財源を確保するために消費税増税が必要だ」と強弁してきましたが、社会保障を充実させるどころか、抑制してきたのが実態です。第2次安倍政権発足以来の7年間で社会保障費は4兆2720億円も削減しました(図1)。高齢化に伴って増える医療、介護などの社会保障費の「自然増」分さえも7年間で1.7兆円を削減。70~74歳までの医療費窓口負担の引き上げや介護保険要支援1、2の保険外し、年金支給額引き下げなど、次々と社会保障改悪に踏み切りました。

 消費税が導入された1989年度から2018年度までの消費税収は累計372兆円。一方で、同時期の法人税減収は累計291兆円に上ります(図2)。消費税収の約8割が、法人税減税の穴埋めに使われてきたのです。

 しかも法人税は消費税導入前の89年は19兆円の税収がありましたが、16年度には10.3兆円まで落ち込んでいます。
 安倍政権は法人税の減税が、賃上げや新たな設備投資に回ると主張してきましたが、第2次安倍政権が2012年に発足して以降の5年間、労働者の実質賃金指数は大幅に低下。年間15万円も減少し(図3)、国際的に見ても低い水準です(図4)。設備投資もわずかしか増えていません。

 法人税が下がって増えた大企業の利益は、内部留保に回っています。資本金10億円以上の大企業(金融・保険業を含む)の内部留保は425・8兆円(2017年度)に上り、12年度比で1.28倍に増えました(図5 法人企業統計)。

 「消費税は社会保障のため」というのはデタラメであることは明らかです。

兵器”爆買い”で過去最高 軍事費削って福祉に回せ

 第2次安倍政権が2012年に発足して以降、軍事費は増え続け、2019年度予算案で5兆4700億円を計上し、7年連続で最高を更新(図6)。さらに昨年12月に閣議決定した新「中期防衛力整備計画」(2019年から23年度)に基づいて史上空前の27兆4700億円を注ぎ込む方針です。いずも型護衛艦の空母化改修やアメリカからF35戦闘機などを「爆買い」しようとしています。

 1機116億円のF35A戦闘機を5年間で46機を調達し、F35B戦闘機と合わせ、最終的に147機態勢にすることを決定。機体購入費と維持費は6兆2181億円に上ります。戦力保持を禁じる憲法の下で「100機以上購入して、いったい何に使うのか、目的が見えない」(元自衛隊幹部)との批判さえ出ています。
 トランプ大統領言いなりに米国から爆買いした高額兵器のローンは5兆円超に上るといわれ、単年度の軍事費を足せば10兆円を大きく超えています。2兆円から3兆円で推移していた兵器購入費は安倍政権が発足してから急増。戦費調達のため、さらに消費税が増税される危険性があります。
 財源がないと言うなら、異常なまでに膨れ上った軍事費を削るべきです。
 大軍拡に突き進む一方で、国民の暮らしに関わる社会保障や教育予算などは大幅に削減・抑制。米国の言いなりになって「戦争する国」づくりのための軍拡路線を改め、国民の暮らしや中小企業を応援する政策が必要です。F35A戦闘機15機分の予算を中小企業対策費に回せば、2019年度の中小企業対策費1740億円を倍増することができます(図7)。

 1万9895人の保育所待機児童(18年4月)をなくすため、認可保育所(定員90人・221カ所)をつくる費用は約265億円必要ですが、F35A2~3機分で賄えます。さらに7機分で小中学校にエアコンを設置(17万カ所)するための817億円を捻出することができます。
 高額兵器の購入をやめて、高過ぎる国民健康保険(国保)料(税)に1兆円を投入すれば、協会けんぽ並みの保険料(税)に引き下げることが可能です。

財源は税のゆがみただして 富裕層・大企業に応分負担を

 本来、税金は負担能力に応じて集めるというのが原則です(応能負担の原則)。株などでもうけている富裕層や利益を上げている大企業に応分の負担を求め、生活が困窮している低所得者や利益が少ない中小企業には負担を軽くすべきです。
 ところが日本の税制は不公平が拡大し、生活費にまで課税する重税を庶民に押し付けるなどゆがめられています。
 所得税は株や土地取引で得たもうけは他の所得と分離して申告することができるようになっており、しかも税率が一律20%(国税と地方税)と低く抑えられているため、所得が1億円を超えると、税金の負担率は低くなっています(図8) 。

 財界や大企業は「日本の法人税率は先進諸国に比べて高い」と叫んでいますが、受取配当金等益金不算入や研究開発費減税など、さまざまな優遇措置が適用され、大企業の法人税実効税率はドイツ、中国、イギリスなどよりも低いのが実態で、「大企業が正しく納税すれば消費税増税は必要ない」(富岡幸雄・中央大学名誉教授)ものです。
 一方、消費税は低所得者ほど負担が重くなるという逆進性が強く、貧困と格差を拡大させています。中小業者にとっても消費税は経営が赤字でも、価格に転嫁できなくても事業者が身銭を切って納めなければならない過酷な税金です。税目別の新規発生滞納額でもトップです(図9)。

 社会保障を充実させるために必要な財源は消費税に頼らなくても確保できます。大企業への優遇措置を廃止して法人税に累進課税率を導入した場合、現在の法人税収10兆円(2016年度)が29兆円に増えます(菅隆徳税理士の試算)。また、所得税の最高税率を引き上げ、累進化が高かった1974年当時の19段階の税率で計算すれば、申告所得税の税収が2兆9000億円から12兆7000億円に増え(浦野広明税理士の試算)、法人税と所得税を合わせて29兆円の財源が確保できます。
 ゆがんだ税金の集め方、使い方をただして公平な税制を確立することこそが求められています。

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