全国商工新聞 第3341号2018年12月17日付
来年10月の消費税増税中止の決意を固め、自主計算活動の発展をめざした交流会
全国商工団体連合会(全商連)は2日、「消費税闘争と自主計算活動交流会」を開き、全国から200人が参加しました。消費税闘争をさらに強めるとともに、倉敷民商弾圧事件の裁判から得た教訓を力に、自主記帳・自主計算・自主申告活動を正しく発展させようと開いたもの。来年の統一地方選挙と参議院選挙で増税推進勢力を少数に追い込み、10%への増税を必ず阻止しようとの決意を固め合いました。
太田義郎・全商連会長は主催者あいさつで憲法前文を紹介しながら「主権は国民にあることを宣言した上で、納税の義務を課している。同時に租税は法律の定めを必要としており、政府によって勝手に決められるものではない」と強調。「自主計算・自主申告は国民の権利であり、そのことを納税者に広く浸透させるとともに、消費税増税に反対する国民の声に応えて必ず阻止しよう」と呼び掛けました。
会場からも各地の取り組みを報告
「消費税に代わる財源提案と小法人パンフの使い方」について菅隆徳税理士が講演。トヨタ自動車など最高益を上げる大企業が、優遇税制で税負担を大幅に減らしている実態を告発。「大企業優遇税制をただせば10兆円の財源が生まれ、さらに法人税を累進課税にすれば9兆円の税収が増え、消費税に頼らなくても財源はある」と訴えました。
『その気になれば誰でもできる小法人の決算・申告』(2018年改訂版)のパンフを使った学習で菅税理士は冒頭、「知り合いの中小企業の社長が経理は税理士に任せっきりで突然、銀行の貸しはがしにあって倒産寸前まで追い込まれたことをきっかけに、自分でパソコンに入力して毎月の試算表や損益計算書を作成して経営を改善させた」ことを紹介。あらためて自主計算・自主申告の大切さを強調し、法人と個人の決算の違いや所得金額の出し方、加算、減算の主な項目などに触れながら決算書の作成を説明しました。
則武透弁護士が「禰屋裁判をめぐるたたかいの方向」について特別報告。「消費税が5%から8%に引き上げられる直前に、倉敷民商を弾圧し、増税反対を迫る民商運動の手足を縛ったのが事件の最大の特徴」と強調。小原・須増事件の岡山地裁や広島高裁の有罪判決の中においても「税理士法は納税者の相互協力を規制の対象にしていないこと、申告納税制度は憲法上の要請からも尊重されるべきであると認めさせたのは大きな成果」と紹介しました。
さらに、禰屋裁判について、広島高裁では一審判決(懲役2年、執行猶予4年)を破棄、審理が岡山地裁に差し戻され、判決から1年が経過しようとしている中で、いまだに検察官が立証計画を出さずにいることに触れ、「弁護団は起訴そのものの取り下げを求めている」と、さらなる支援を訴えました。
中山眞常任理事が報告と問題提起を、5人が活動報告(それぞれ別項)を行いました。フロアーからも「ポケットティッシュ3万個を作って配布し、増税中止を求める1万人アピール運動を取り組む」(京都)、「毎月1回、法人申告の会員が集まって、税務調査の動向や心得を学んだ後、申告書をみんなで税務署に提出している」(新潟・新津)などの報告がありました。
鎌田保副会長が閉会のあいさつを行いました。
全商連常任理事 中山 眞さん
消費や実質賃金が減り、さらに「働き方改革」で、最悪8兆円規模で労働者の所得が縮小し、米中の貿易戦争など世界経済の先行き不調による輸出減少も危惧されている下で消費税率を10%に増税すれば、景気も国民生活も大打撃を受けると強調。「税制で商売をつぶすな」の大闘争の提起に応えた奮闘を呼び掛けました。
複数税率の狙いは「10%を超える税率引き上げを国民に受け入れやすくするため」であり、インボイス制度(適格請求書等保存方式)の導入は「小規模事業者の事務負担軽減と生業維持のために導入された免税点制度を無力化する仕掛けに他ならない」と批判しました。
また、キャッシュレス決済とマイナンバーやインボイスを結び付け、国民の消費情報と事業者間の取引を税務当局が把握できるようにするなど危険な狙いを明らかにしました。
景気対策として打ち出している「キャッシュレス決済で5%分のポイント還元」は中小業者に新たな負担増を押し付け、住宅、自動車の購入支援は大企業や富裕層に恩恵を与えるもので、プレミアム付き商品券の発行も実施期間や購入者は限られており、商品券の恩恵も「買える人だけ」と「使ってもらえる店だけ」と批判。「10%中止こそ景気対策の声を大きく広げよう」と呼び掛けました。
請け負い克服の問題では倉敷民商弾圧事件に関わって「消費税率8%への引き上げ直前に岡山地検、広島国税局、岡山県警が倉敷民商と岡山県連への家宅捜索を強行した当時の情勢が、現在の局面と重なっていることに留意する必要がある」と強調。「記帳請け負い克服の方向は記帳を要求運動として正しく発展させることであり、納税者が自主的に集まって話し合い、相談し助け合う活動は、記帳代行や税理士法違反とは無縁。会員自身が『申告書は自分で書いている』と胸を張って主張できるようにすることが、弾圧を許さない対策の第一歩。活動の自己点検を行い、請け負い克服に向けて組織的な議論と実践の強化」を呼び掛けました。
たたかいの展望について「沖縄県知事選挙での勝利が証明したように、諦めず、幅広い市民と野党が共同してたたかうなら、悪政転換の道を開くことは可能。消費税10%中止、改憲阻止の署名を軸に大運動を展開し、自主計算運動を強め、組織を大きくすることが不当な税務行政を正し、安倍内閣を退陣させる力。このことを確信に、力を合わせて方針実践に踏み出そう」と呼び掛けました。
講演や全国からの活動報告に耳を傾ける参加者
滋賀・草津甲賀民商事務局長 植田 義和さん
消費税増税に対する怒り、不安の声を受けて、支部主催の学習会を開催してきました。今回は民商三役が講師をするにあたって、商工新聞や号外などを繰り返し読んで学習したことが力になり、「これは大変や」「おかしい」と怒りが湧き、「署名を集めてがんばろう」と呼び掛けてきました。
副会長が126人分の署名を集めたのをはじめ、学習会に参加した会員も多い人で60人分を集め、また、班長や支部役員も「署名集めてきたで」と、毎日、事務所に署名が届けられている状況です。毎月の宣伝行動でも、役員、会員がマイクを握り、自分たちの言葉で訴えています。
秋田県連 会長 小玉 正憲さん
今年12月議会に向けて、来年の増税中止を要請し、各議会に「陳情書の提出と内容説明のお願い」文書を出し、訪問しました。陳情書には「反対」や「廃止」の文字は保守層が賛成しないので書かず、来年の増税を「中止」、「延期」してほしいと要請。議会を訪問し、複雑なインボイスについて説明すると「こんなに大変なの?」という反応が返ってきます。地域経済がめちゃくちゃになることを説明すれば、議員も納得してくれます。地元団体を含めて話し合うことが大切です。
東京・豊島民商事務局長 熊谷 雅敏さん
楽しく励まし合って記帳活動を行う「記帳カフェ」や簿記3級講座を開催しています。自主記帳運動を進める上で、学習を保証することが大事。請け負い克服にも役立ち、簿記の資格や会計ソフトを使える役員、会員が増えれば、法人決算時期や確定申告時期に活躍できます。請け負い克服の実践には、工夫が必要。請け負いの多いところは、苦労し、悩んでいる。仲間の民商、県連、全商連として支えるための交流会などを行い、いたわって励まし合うことが求められているのではないでしょうか。
岩手・一関民商事務局長 山口 伸さん
法人向きの「記帳・経理学習会」を開いていましたが、参加者の経理・決算に関する理解度がさまざまで、長く続かなかったことを教訓にして、個人・法人を問わずに経理の基礎知識を学び合うための「記帳カフェ」を開催し、仕訳や振替伝票の作成などに取り組んでいます。学習会に参加する人の要求を把握し、共通する要求を重点的に取り上げることで、脱落する会員を生まず、記帳カフェや経理学習会の参加も増えて、自主記帳が定着します。申告納税制度を実現し、国民主権を徹底・確立することが、税務当局の横暴を食い止め、不公平な税制を正す力になると思います。
大商連事務局員 林辻 直也さん
来年の消費税10%増税を控え、税務署の動きが活発になり、お尋ね、呼び出しが乱発されています。無予告臨店で無申告あるいは売り上げ1000万円のボーダー層の洗い出しが増えています。調査件数も個人・法人ともに増加し、その中で、税金の不安、税務調査による入会が増え、若手業者の紹介で、フリーランスの入会もあります。例年、大阪の春の拡大は会員比4%にとどまっていますが、不安の声を捉えて「拡大で反撃だ」と8%の“倍返し”をしていこうと話し合っています。署名の反応も良くなってきて、街頭に立てば10人分の署名が集まるのが当たり前、20人分に届くようになってきています。ますます訴えて、消費税の増税を止めましょう。