全国商工新聞 第3335号11月5日付
李信愛税務士(右から4人目)からレクチャーを受ける視察団(右端は藤川副会長)
不公平な税制をただす会は10月15~17の3日間、ソウル市内にある韓国の税務署や税務士(税理士)会を訪問し、消費税(付加価値税)やインボイス制度、納税者の権利憲章(1997年制定)などの内容や問題点を把握しようと税制視察を行いました。参加した全国商工団体連合会(全商連)の藤川隆広副会長が報告します(2回連載)。
視察には、不公平な税制をただす会の代表委員である浦野広明、湖東京至、菅隆徳の3税理士をはじめ12人が参加しました。今回の企画は、韓国で税務会計事務所を経営し、日本の税制度にも詳しい李信愛(イ・シネ)税務士の尽力によって実現したものです。
特に、三成(サムソン)税務署(全国128税務署のうち第5位の税収)で税務署長と、韓国税務士会会館で李昌圭(リ・チャンギュ)会長との懇談が実現できたのは、李信愛税務士の働き掛けによるものであり、大変貴重な視察となりました。
韓国の付加価値税の税率は1977年の導入以来、10%。単一税率ですが、インボイス制度を導入しています。
買い物時にレジから打ち出されたレシートを見ると、本体価格と税額、その総額が記載され、さらに10桁の事業者登録番号が印字されています。
韓国の事業者登録番号は最初の3桁は地域、次の2桁が業種、残りの5桁が事業者ごとの番号と決められており、これを見ればどこの地域の何の業種なのかが分かるようになっています。
申告時の簡易課税制度は年間売上4800万ウォン(約480万円)以下が対象(17年は160万人)。日本とは計算方法が違い、申告は必要ですが、税額控除が大きいため、納付義務を免除された個人事業者は約120万人です。ただし、ソウル市内の業者は適用外など、地域限定もあるため、複雑な制度となっていたり、日本のような申告・納税を免除する制度がないことは、問題だと感じました。
三成税務署長に、韓国内で消費税引き上げの議論はないのかと質問したところ、税務署長の見解ではなく、あくまでも事実を述べると前置きをした上で、「人権意識や福祉への要求が高まり、税率を上げる議論もあるが、今は法人税引き上げの方が国民の抵抗感が低い傾向がある」と回答。実際、韓国では、法人税率が18年から3%引き上げられ、25%になっています。そして、「法人税引き上げにより大企業の海外進出が加速する恐れもあるが、今は、世論が認めない傾向にある」と解説しました。
16~17年の100万人が集結した「ろうそく革命」で示された民衆の力が、税制を正しい方向に導いているのではないか。市民運動で展望を切り開くダイナミックさを実感しました。