週2回以上発行の定期購読紙が対象
2019年10月1日から消費税の税率を10%に引き上げる大増税が計画されています。その際、食料品と「定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞の譲渡」の消費税は軽減税率の対象となり8%に据え置かれます。つまり駅買い新聞や商工新聞など週1回発行の新聞は軽減税率の対象とはならず、10%への値上げ対象ということになります。さらに問題なのは、大手新聞社が新聞販売所に卸売りするのは10%で、新聞販売所の配達売り上げが8%になる、ということです。
軽減税率の対象となるにもかかわらず販売所では(1)課税事業者では資金繰りが一時悪化する(2)簡易課税事業者では増税となる(3)免税業者においても増税となる-という事態が起こります。
まず(1)の課税事業者の資金繰りが悪化する点です。全ての課税取引に準じて消費税額計算しますから、新聞仕入れ時は10%、新聞売り上げ時は8%となり、消費税の差額分について一時的に資金繰りは悪化します。理論上は納税を通じて精算されますが、「値上げ」が行われることも想定しておかなければなりません。
(2)の簡易課税事業者は増税になります。表1は計算が複雑ですが、軽減税率導入による増税額が分かります。
最後に(3)の免税事業者においても増税が生じる点です。表2によると、消費税の申告・納税はないのですが、支払われる経費には消費税が含まれていますから、仕入れ等の金額が増加し資金流出額が10万円も増加します。
簡易課税業者と免税業者は消費税申告での調整が図れないため、増税となります。
※本紙上での表1の数値に一部誤りがありました。こちらに掲載している表が正しいものとなります。
部数の維持を狙う身勝手さ浮き彫り
大手新聞社が消費税率を8%にしたい理由は、販売部数を維持したいからです。日本新聞協会の発表によれば2017年の一般紙の世帯に対する発行数は約3876万部となっています。2007年が4696万部、2000年が4740万部ですから、激しく減少しています。最近の下落は電子新聞の普及と無関係ではありませんが、電子新聞は「譲渡」ではなく「提供」に当たるため、現在のところ軽減税率の対象とはなりません。
購読者が減れば主要な収入の一つである広告収入のさらなる減少(2016年3801億円ですが2006年7082億円の約53・7%)を招くため、軽減税率でこれ以上読者離れを食い止めようというのです。
加えて、中小新聞販売店には負担を押し付ける一方、自らは痛みを感じずに軽減税率の恩恵にあずかる大手新聞社の身勝手さが浮き彫りになっています。
今も経営厳しい 新聞社は対策を=大阪府の販売店主
販売所を40年以上、経営しています。確かに読者が減って経営は厳しい状況です。最高時の日刊紙4600部から今は4000部に減っています。しかし、軽減税率が導入されてもされなくても読者は減ると思っています。
まだ、正確な計算をしていませんが、新聞代が軽減税率になると年間300万円を超える負担をしなければなりません。
新聞社が何らかの対策を取ってくれなければ販売所はお手上げです。いや、対策を打ってもらわなければ困ります。