全商連
全商連トップ とじる
地方税
徴収強化すすむ地方税
徴収部門の自治体職員座談会
「まず差し押さえろ」
義理と人情、税法は後回し
 預金、生命保険などの差し押さえ、滞納処分や各地で地方税回収機構が設立されるなど、地方税の徴収がかつてなく強まっています。県や市の徴収を担当する職員6人に集まってもらい、話を聞きました。

座談会出席者
A=県税職員、B=県税職員、C=県税職員、D=市税務課職員、E=政令市税務課職員、F=県税職員

「三位一体」で危機感
‐今、現場ではどのような徴収や研修がおこなわれているのですか。
 県税が今、強調しているのが「早期着手、早期完結」です。滞納者にはまず預金、給与、生命保険などを差し押さえろ、その方が早く処理がすすむと。以前はまず電話加入権の差し押さえでしたが、これはもう財産的価値を認めていません。
 うちの県税も傾向は同じです。給与の差し押さえなどは勤め先に分かるので、かなり大きな影響がでる。
 県税の現場ですが、4月の人事異動で新人や税務の初めての人が来たら、いきなり納税者を差し押さえさせたり、一緒に連れて行って調査するとか、まず体で覚えさせる。税法などは後回し。
 うちの県税もそう。まず納税交渉から始めるべきなのに教育の仕方がまったく逆ですね。
 うちは政令市ですが、研修では本当に信じられないような内容で、とにかく差し押さえしろと教育している(資料)。特に若い人、経験の浅い人は給料日に銀行に飛んでいって預金に2万、3万円残っていても差し押さえし、取り立ててしまう。今後、成績主義が導入されるのでもっと大変になる。
‐成績主義というと。
 昨年、公務員にも給与体系に成績主義が導入された。6月から7月にかけてそれぞれの職員が「チャレンジシート」に当局のめざす業務運営方針を具体化して、いつまでにどれだけ処理するのかの目標を出し、上司が点検して5段階の評価で給与に反映する。差し押さえや滞納処理件数が評価の基準になって当局の思う方向にいっそう職員が駆り立てられることになる。
 パソコンで情報が共有化され、職員が持っている事案一つひとつを上司が全部あけて見られる。大量の滞納案件を抱えて、じっくり考えて処理する余裕がなくなっている。
‐全国に地方税回収機構の設立が広がっていますが。
 小さい市町村は独自に差し押さえたりという執行はなかなか難しいので、大きな滞納などはどうしても回収機構に回してしまうのじゃないか。回収機構の職員と話したのだが、市町村合併がすすむと大きな自治体になるので、独自にやれるのではないかと質問したら、これはむしろ逆だと。合併した自治体はそのまま回収機構にお願いするので、合併後も回収機構への参加が増えていると言っている。
 回収機構は滞納処分が専門の組織。いろいろ問題も多い。12日付のしんぶん赤旗に三重地方税管理回収機構のことがのっていたが、分割納付の履行中で移管すべきでない事案を津市が移管してしまい、市と本人が戻すように求めたが回収機構側が頑として応じないという。機構はこれまで1件あたり20万円で引き受けていたが、これからは10%の成功報酬方式でいくと。今後、機構の徴収にいっそう拍車がかかるのではないか。
‐今後地方税の徴収はどう変わっていくのでしょう。
 徴税強化の根本的な要因は、自治体財政の赤字。それと「三位一体」改革で地方交付税が大幅に減る。国は税源を委譲したからちゃんと渡しているというけれど、徴収するのは自治体。滞納が増えれば財政がさらに苦しくなるという相当な危機感がある。
 個人住民税が最低税率5%から一律10%になり、低所得者はこれまでの2倍の税金になる。これは大変なことで、市町村からは県に地方税48条に基づいて直接徴収してほしいとの要望も来ている。
 団塊世代のいっせい退職という07年問題でベテラン職員の大量退職も大きい。退職者の再雇用や民間委託を導入して乗り切ろうとしている。
 滞納処理の基本は生活と営業の実態を正確に把握して処理方針を決めるべき。職員の中には資力がありながら納付に応じない人と、払う意思があっても納付困難な人を区別せず、滞納者は一律に悪い人という判断をしている人もいる。

早く相談に来て
‐「市場化テスト」で徴収の民間委託も言われています。
 今後危ぐされるのはクレジットカードの利用。今年3月に総務省が自治体に対して「納税にクレジットカードの利用ができますよ」という趣旨の通達(資料)を出した。こんなことがどんどんすすんでいったら多重債務や破産に拍車をかけることになる。
 「市場化テスト」という言葉は新しいが、効率性のみを重視して地方税の徴収業務を民間事業者に委託しようとしている。そうなれば営業停止になったサラ金会社以上の取り立てもおこなわれ、もっとひどい状態になるのではないか。
‐今後、ますます徴税が強化されていく方向ですね。
 そうです。ところで徴収部門の職員としては滞納者と連絡がとれないのが一番困る。なんらかの接触がとれて、支払い困難であれば滞納処分の執行停止もできるのだが、催告書を送ろうが電話をかけようが全然反応がない人もいる。そうなると財産調査に行って見つければ差し押さえせざるを得ないということにもなる。
 自治体としては国税徴収法にある5年の時効前に滞納処分するのが責任ということもあって徴収強化に走ってしまう。できるだけ早く相談にくれば早期の分納も検討できる。
 どうしても払えない人は「滞納処分の執行停止」しかない。自治体によって多少基準の違いはあるが、不動産があっても滞納処分の執行停止をおこなっている。納税者が誠意をもって相談に来ていただければ、どこの納税の職員も誠実に対応するはずです。

 
全商連トップ ページの先頭 とじる