全国商工新聞 第3349号2019年2月18日付
「消費税につぶされてたまるか」「10%中止に」と参院前で声を上げてデモ行進する茨城県の大会参加者
全国中小業者決起大会に先立ち、中小企業庁や国税庁、厚生労働省など7省庁と交渉しました。消費税10%への引き上げ中止や災害時の支援制度の拡充を求めるとともに、強権的な徴収行政の実態などを告発し、改善を要求。災害によるグループ補助は「支援をするために柔軟に対応する」(中企庁)、社会保険料の徴収について「すぐには差し押さえをせず、相談に応じる」(厚労省)などの回答を得ました。
「日本経済の屋台骨にふさわしい予算と政策を」と中企庁に迫る橋沢政實代表幹事
消費税増税の中止、中小企業対策予算の大幅増、被災者生活再建支援制度、信用補完制度の拡充などを求めました。
災害時支援制度の拡充の要求では、庁側が「基本は自助努力」と発言したのに対し、参加者は「国は災害支援をしなくていいということか」と厳しく批判。支援金の上限を500万円に引き上げるとともに、半壊、一部損壊の被災建築物や店舗・工場も支援対象とすることを求めました。
また、西日本豪雨災害に対するグループ補助の条件について、ほぼ同型の中古品を求められるなど厳しすぎるとして、その緩和を要求。庁側は柔軟に対応することを約束しました。
兵庫の参加者は、2020年に返済期限を迎える阪神・淡路大震災の「緊急災害復旧資金融資」の返済実態の把握とともに、今ある制度を活用し、返済免除の方向を示すよう要望。静岡の参加者は県信用保証協会が、いったん合意した民宿の競売条件を突然変更し、競売を迫ってきていることについて「生業を奪わないでほしい」と訴え、中小企業庁として指導するよう求めました。
交渉の最後に、全中連の橋沢政實代表幹事は「中企庁は中小企業を日本経済の屋台骨と位置付けている。それにふさわしい予算と政策を」と強く要望しました。
要請書を手渡す住江憲勇代表幹事
毎月勤労統計の統計偽装に関し、「国民の信用は地に落ちている。失地回復に努めてほしい」と要請。「労働保険事務組合として監督官庁の不正に怒りを禁じえない」(東京)などの指摘もありました。
強権的な取り立てが目立つ社会保険料の徴収問題では、「すぐに差し押さえず、相談にも乗り、計画的な分納をお願いするようにしている」と回答。「3年間で保険料は払ったが延滞金が残っている。寛容な措置を」(岐阜)との要望に、省側は「具体的な状況をお聞きし対処したい」と応じました。
全中連交渉で繰り返し取り上げてきた強権的な滞納処分については、昨年9月に岐阜北年金事務所と民商の懇談が実現。懇談で「滞納者の事業継続に配慮して対応していく」との回答が得られています。
国保料(税)の徴収について省側は「さらなる減免制度の導入は考えていない」と従来の立場を繰り返しつつ、「保険料を払えない人には適切に相談に乗るよう指導している」と回答。「差し押さえの現場写真を相談窓口に張るなど人権侵害がある」(埼玉)、「徴収猶予が1年あるはずなのに役所で半年と言われている」(兵庫)、「病気が悪化して払えなくなると即差し押さえを受けた」(群馬)、「市の職員が納付の緩和措置すら知らない」(山口)といった訴えが相次ぎました。
労働保険事務組合での個人番号の取り扱いでは、「助言指導はするが、取扱規定にマイナンバーの扱いが盛り込まれていなくても認可を取り消すなどの不利益処分は考えていない」と回答しました。
国税庁では、税務調査の事前通知の文書での徹底や、納税緩和制度の周知と活用、申告書に個人番号の記載を強要しないことなどを求めました。
事前通知について「なぜ文書で出せないのか。現場にいきなり電話されても通知事項が記録できない」と指摘しました。
また、納税者の自宅で事前通知を行い、その場で調査を開始した事例について、「調査期間までの相当時間の余裕をもって行う」とする国税庁次長の国会答弁(2011年11月)に反すると抗議。「国税通則法にも(通知を要しない)例外規定がある」と回答しました。
事前通知が不十分で、税務調査で署員が「いきなり通帳を見せろ」と迫ったり、「納税者の理解と協力を得て行う」とする税務運営方針も「知らない」と答えたりするなど異常な実態を告発。「状況を調べる」と約束しました。
確定申告も終わっていないのに税務署が「消費税の納税はあるか」と電話で問い合わせしていることについて「申告前に税額を聞くのはやめること」と申し入れました。
各地で「所得税及び復興特別所得税の調査について」と題して日時を指定して呼び出す文書が送られている問題について、庁側は「税務調査の一環で、了知した段階で受忍義務が発生する」「応じない場合にただちに不利益を受ける訳ではないが、放置すると罰則がかけられる場合もある」と回答。「国税通則法が定めた実地調査の事前通知の義務規定を形骸化するもので断じて許されない」と抗議しました。
国土交通省では、建設業者の社会保険加入に関わって、法定福利費が下請け業者に保障されることなどを要望。省側は「必要な法定福利費が元請けから下請けに適切に支払われることが重要。建設業関係団体には適切な法定福利費の確保を繰り返し要請してきた。引き続き、実態把握を進めて必要な法定福利費が確保されるよう取り組む」と回答。
また、「社会資本整備総合交付金」の活用は「自治体が計画して行う住宅リフォーム助成などの事業が対象になる」ことをあらためて示しました。
金融庁では、融資について中小業者のニーズに合わせた資金(小口、低利、長期返済等)供給へのきめ細かな対応を要望。庁側は「金融機関が顧客ニーズを捉えた積極的な資金供給に努めてもらえるように促したい」と答えました。
金融庁が地域の企業の経済実態を把握するための「地域生産性向上支援チーム」をつくるにあたって「民主商工会や県商工団体連合会とも対話して金融機関への期待や要望を把握するように」と訴え。「内部で検討し、支援チームが対話を展開することになれば、要望などを教えていただきたい」と前向きに回答しました。
総務省では、自治体が税務署などの求めに応じて住民票の写しなどを交付する際、請求事由確認の徹底などを求めました。省側は「法令上、(請求事由を)確認することになっている」と回答。徴収行政について大分県内で、2年間(2017~18年)で7000件に迫る差し押さえが発生していることや、18年の申請型換価の猶予の実績がゼロである実態を告発。「滞納者に寄り添い、換価の猶予の周知を図る」ことを強く求めました。
財務省では、消費税10%への増税を中止し、複数税率やインボイス制度の導入をやめることなどを要望。省側は「消費税増税は、リーマンショック級の経済危機が起こらない限り予定通りやりたい」との考えを示しました。参加者は「大企業が420兆円もの内部留保をため込む一方、中小業者は大変な思いをしている」「消費税は社会保障に使われていない」と批判しました。
国連女性差別撤廃委員会が所得税法第56条の見直しを求めていることについて省側の認識をただしたところ、「それは日本政府と協議して出したものではない」と回答。参加者から批判が集中しました。