中小業者の切実な要求掲げて
全中連が7省庁と交渉

全国商工新聞 第3331号10月8日付

 全国中小業者団体連絡会(全中連)は9月21日、消費税10%増税の中止、インボイス制度の導入中止、中小企業に対する社会保険料負担の引き下げ、西日本豪雨対策などの切実な要求を掲げ、経済産業省・中小企業庁、財務省など7省庁と交渉しました。交渉に先立って国会内で開かれた集会には全国から108人が参加。日本共産党の宮本徹衆院議員があいさつし、改憲、消費税10%を阻止しようと呼び掛けました。

【中企庁】持続化補助金継続を

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中小企業庁に豪雨被害対策などを求める橋沢政實代表幹事

 小規模企業基本法に基づく施策拡充や被災業者支援を求めました。
 「消費税10%への税率引き上げは中止を」との要望については、「法律上既に決まっていることなので言えることはない。軽減税率の事務負担が大きいことは認識しているので準備の補助などを続けていく。インボイスは3年以内の検証規定があるので、現場の状況を踏まえて問題点を伝えていきたい」と述べました。
 ものづくり補助金・小規模事業者持続化補助金について「継続していきたい。来年度概算要求で当初予算につけている」と回答。「災害復旧」関連要求では、「北海道では停電に伴う食料品の被害等も出ているので販路開拓を支援していきたい」としたものの、大阪の代表が「再建支援法に一部損壊が含まれない。事業用資産がなぜ対象とならないのか」とただすと、「内閣府が所管なので答えられない。中企庁として講じる支援は現地の被害状況の調査を踏まえて講じたい」と答えるにとどまりました。
 また、広島の代表が「豪雨災害からの復興を応援するためにも民商フェスタを『商店街にぎわい創出事業』として補助の対象に」と求めました。これに対しては、「商店街と民間組織の連携体であれば対象となる。商店街がない場合は特例的に商工会、商工会議所等を商店街組織と見なす場合もある。広島民商が商店街の代替として活動を行っているか、個別に内容を確認させていただいて判断したい」と検討を約束しました。

【厚労省】社会保険料 強権的な滞納処分告発

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厚生労働省・日本年金機構との交渉で要請書を手渡す保団連の住江憲勇会長(左)

 国民健康保険(国保)では、保険料(税)の滞納に伴う差し押さえに関して、「滞納一括納付」強要(さいたま市)、市役所での「差し押さえ現場写真」の掲示(埼玉県本庄市)などの事例を挙げ、実情をよく把握し、適切に是正指導するよう要請。子どもの均等割軽減措置の導入に関しては「国保財政への影響を考慮しながら対応していきたい」と回答しました。
 社会保険料の負担軽減要求では、岐阜北年金事務所で強権的な滞納処分が続いていた問題などを受け、「適切でない問題が起きた場合、指導をする。連絡があれば精査したい」と明言。参加者からは「中小企業の社会保険料の軽減措置を求めた国会付帯決議もある。具体的措置を講じてほしい」(静岡)と要望しました。
 雇用保険手続きや労働保険事務組合への共通番号(マイナンバー)の記載や扱いを強要する問題では、「そのこと(共通番号の不記載・不採用)だけで直ちに罰則や認可取り消しになることはない」と言明。年金機構とのやり取りでも、扶養控除等申請書への共通番号記載について、「記載がないことだけを理由に不受理とはしない」との説明しました。
 また、換価の猶予の申請書、申請の手引き、概要の3点セットを年金事務所窓口に置くと前年の要請で回答しながら実施されていないことを追及。これには、「初めての滞納者に対し10月から内容通知書と一緒に概要を送ることにしている」と答えました。
 医療機関の消費税非課税からゼロ税率への要望について、19年度税制改正に際し、抜本的解決に向けて税当局とも話し合いをしていると前向きの回答がありました。

【国税庁】収支内訳書強要やめよ

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事前通知を文書で行うことや、納税者の承諾を得ない反面調査をやめることなどを求めた国税庁交渉

 税務調査の事前通知は文書で行い、おとり調査(内観調査)、納税者の承諾を得ない取引先などへの反面調査をやめること、分納の相談には真摯に対応し、払えない事実と納税の誠意が確認できれば猶予を許可することなどを要求しました。
 「収支内訳書」を提出していないことを理由に、納税者が不利益を被っている事例を告発。東京・王子税務署が「収支内訳書が提出されていない」ことを調査理由にしたこと、新潟・新津税務署も収支内訳書の提出がないことを理由に更正の請求の処理を拒否した実態を追及。庁側は「一般的に収支内訳書の提出をしないことをもって納税者が不利益を被ることはない」と回答しましたが、いずれも請願書を提出し、回答を求めました。
 また、税務署員が納税者への通知なしに取引先に反面調査を行っている問題を取り上げ、参加者は「調査前になぜ反面調査が行われているのか。他にも同じようなことが行われているのではないか」と追及。庁側が「情報収集の一環として行っている」と答えたため、参加者は「人権侵害だ。税務運営方針では反面調査は客観的に見てやむを得ないと認められる場合に限って行われていることが明記されている」「質問検査権の乱用だ」「反面調査によって取引が中止されたらどうするのか」と抗議しました。
 また、千葉・佐原税務署が香取市に回答を求めている「課税状況等の照会について」の文書の中に、納税者の世帯状況の記入を求めている問題をただすと「情報収集の一環」とする納得いかない回答に終始しました。
 岩手・一関市からの参加者はグループ補助金を「不課税」と認め、現場への周知徹底を図ることを求める請願書を提出しました。

【国交省】社会保険加入強要ただす

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法定福利費の別枠計上などを求めた国交省交渉

 加入義務のない小規模事業者に対する社会保険の加入強要問題や、法定福利費の別枠計上の実態を把握すること、西日本豪雨対策などについて対応をただしました。
 加入強要問題では、「周知する」と言いながら、現場では加入強要が続いている実態を告発し、分かりやすい媒体を使った指導の徹底を要望。「フローチャート方式にまとめた分かりやすいリーフレットを作成した。諸会議で活用し、あらためて周知徹底させたい」と答えました。
 「法定福利費の別枠計上」について、国交省は実態調査で「法定福利費の内訳を明記した見積書を提出した下請け企業は70%」「減額されることなく契約したのは55%」と回答。大分県の参加者は「国も県も設計見積単価を4割上げている。しかし、下請け業者の単価は5~6%上がっただけ。国として実態を正確に調査し、指導すべきと強く求めました。
 西日本豪雨災害対策について、環境省の「災害等廃棄物処理事業」と連携し、市街地だけでなく、市街地以外でも堆積土砂撤去に取り組んでいる、と答えました。

【金融庁】円滑な資金供給求め

 財務内容や一時的な遅滞、条件変更など過去の実績、担保・人的保証にとらわれず、中小業者のニーズに合った資金の供給にきめ細かく、迅速に対応することなどを求めました。
 「金融円滑化法終了後、監督指針と金融検査マニュアルを改正し、きめ細やかな対応に努めている」「条件変更の申請に関する実行率は90%を超えており、制度の機能が発揮されている」としたものの、町工場を営む参加者は「金融機関から、『条件変更をしているから手形の割引はできない』『3年後に融資が完済できないなら、成長しないと判断。成長しない会社とは取引できない』などと言われ、話し合いもできない状態にある」と告発。
 金融庁は「一般的には、預金者の理解をもらいつつ取引するもの。条件変更していても取引は可能。金融機関に話し合いの場を持つよう伝える」としました。
 また、銀行破綻をきっかけに、父の残債務が整理回収機構(RCC)に譲渡されたという参加者は、「元金を完済後、RCCから元金を超える利息部分について『債務の確定承認書』への署名・押印を求められている。期日までに出さなければ競売の手続きをとると言われ、生活再建もできない。利息の減額や長期分割の話し合いもできない状態」と告発。「民間同士の取引を金融庁が把握する必要はない」と回答したため、「金融機関の監督庁としてその立場でいいのか」と追及。「まずはRCCに取り次ぎ、要請があったことを伝える」と回答しました。

【財務省】消費税10%中止せよ

 来年10月に予定されている消費税10%への税率引き上げは中止し、税率を5%に引き下げること、複数税率とインボイス制度の導入は実施しないことを求めました。
 「(増税は)財政健全化、社会保障の持続可能性を維持しながら実施するために決められたもの。軽減税率などで消費税がもつ逆進性や痛税感を緩和し、引き上げがしっかりとできる環境を整える。インボイスは二つの税率で適正な課税を確保するために必要なもの」と回答。
 参加者は「まるで安倍首相が答えているようだ」と怒り、収入が減る中で、切り詰めながら生活を維持している国民・中小業者の実態を突き付け、再度検討することを要望しました。
 また、店内飲食やテイクアウトで税率が違ったとしても税込み販売価格を統一する「疑似一物一価」を財務省が提案していることに対して、「転嫁対策と言いながら、一方で転嫁しないことを推奨するのか」と抗議しました。
 地震や豪雨災害などが相次ぎ、被害を受けた中小業者の支援を充実させる補正予算の編成を求めたことに対し、「概算要求で中小企業支援策を盛り込んだ。関係省庁とも連携し、対応する」と述べました。
 400兆円を超える大企業の内部留保については、「財務省としてもなんとかしなければと思ってはいる」との回答にとどまりました。

【総務省】「換価の猶予」活用図れ

 共通番号(マイナンバー)制度の問題や地方税の徴収問題について追及。「地方税の申請型換価の猶予の活用状況の実態調査」について、現在、調査中であることが分かり、「年度内にまとめたい」との回答を得ました。
 昨年度、誤送付が発生した住民税特別徴収税額の決定・変更通知書について、「事務手続きが大変だという要望もあり、当面、書面には記載しない」と回答。地方税の徴収では「『滞納者の個別・具体的な実情を十分に把握した上で、適切な執行に努める』ことを事務連絡や研修会などで周知徹底している」と答えるも「(自治体を)指導する立場にない」という姿勢に終始しました。
 参加者は「滞納者が分割納付の相談に行っても『そんな額ではダメ』と言われる」「滞納整理機構に送られると、今まで事業の継続を中心に約束してきたことがほごになり、強権的な回収が行われる」「納税者を威圧するようなポスターが張られている」と、納税者を委縮させる徴収実態を告発しました。
 また、千葉県香取市からの情報公開請求で入手した「課税状況等の照会について」という税務署の文書に関して、住民基本台帳法上の取り扱いについて明らかにせよと追及しました。

【経産省】

 全国FC加盟店協会は経済産業省と交渉し、フランチャイズ本部が最低賃金の上昇に見合う利益を加盟店に還元するように指導するとともに、国の直接支援を求めました。

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