全国商工新聞 第3393号2020年1月13日付
消費税5%減税をはじめ、中小業者が希望を持てる政策転換が求められる2020年の幕が開けました。全商連第54回総会を会勢の前進で迎えるために、どういう運動と組織建設を図っていくのか-。全商連の岡崎民人事務局長に聞きました。
-1年をどう展望しますか。
安倍政権は、憲法と平和、暮らしと経済、民主主義と人権など、あらゆる分野で暴走を続けています。「桜」疑惑やカジノ汚職など政治のモラル崩壊も極まっています。
新年早々、米トランプ政権はイランへの軍事的挑発を強行しました。国連憲章を無視した暴挙です。安倍政権は自衛隊中東派兵の閣議決定を撤回し、トランプ政権に軍事行動の中止とイラン核合意への復帰を求めるべきです。
日米貿易交渉の一方的な譲歩、日韓関係の悪化、日ロ領土交渉の破綻など安倍外交は八方ふさがりです。経済主権を売り渡し、過去の植民地支配への真摯な反省もなく、歴代政府の立場さえ投げ捨ててきた結果です。原発政策も頓挫し、安倍政権の中心的な政策は国民との激しい対立を招き、その転換を求める世論と運動とのせめぎ合いが強まっています。
中小業者の営業と生活、権利を守るたたかいの歴史を重ね、「平和でこそ商売繁盛」を信条としてきた民商・全商連の本領を、大きく発揮していく年にしたいと思います。
-消費税5%への引き下げは切実ですね。
消費税率10%への引き上げや複数税率、キャッシュレス決済のポイント還元が混乱と廃業を広げています。
増税による収益悪化が急速に広がり、レジの変更費用やカード決済の手数料負担が資金繰りを悪化させ、接客や商売のありようにまで悪影響を及ぼしています。増税と制度改悪が、被災地にも打撃となることは明らかです。
5%への減税を求める運動が広範な国民の希望になっています。また、複数税率・インボイス制度の即時廃止の要求は、官制団体を含めた幅広い中小企業団体との一致点を広げています。
「右手に署名、左手に商工新聞」で世論と運動を巻き起こし、「10%対策・網の目学習運動」を班・支部まで徹底します。
10%増税後、初めての確定申告を迎えます。納税者同士で集まって、学び合い、区分経理にも対応しながら、自ら記帳・計算し、申告書を仕上げることが大切です。
51回目を迎える3・13重税反対統一行動は、自主申告運動への弾圧をはね返すとともに、政治の流れを変える結節点として地域の広範な団体との連携も強めます。法人申告の会員にも呼び掛け、納税猶予の申請とも結合し大きく成功させましょう。
税のあり方と使い道を正す世論と運動を広げます。
在日米軍の「思いやり予算」の廃止、過去最高の軍事費を大幅に削減して、社会保障や中小企業予算を増やすことです。「社会保障のため」というウソは、もはや通用しません。莫大な利益を積み上げ、449兆円もの内部留保を蓄える大企業や、大もうけしている富裕層に応分の負担を求めるべきです。
-経営要求も高まっていますが。
地球温暖化と相まった異常気象から、大規模災害が頻発しています。被災者の生業再建へ自治体連携型補助金が実施されるなど直接支援を広げてきました。
被災者支援で積み重ねてきた成果と経験を生かし、経営・暮らしの再建へ力を合わせます。東日本大震災から9年になります。原発再稼働中止と完全賠償・賠償金非課税を求めます。
全自治体との懇談・要請を継続し、災害復旧や生業の再建、循環型地域経済への施策の拡充を要求します。昨年秋にも、小規模企業振興条例上の支援団体と認定された県連や民商が増えています。引き続き、認定を広げ、民商しか知り得ない小企業・家族経営の実態と要求を示します。
全国知事会など地方6団体が国民健康保険(国保)への財政支援強化を要求していることを踏まえ、国保料・税の引き下げを求めます。出産手当、傷病手当の創設や均等割廃止を地方議会に働き掛けます。自然エネルギー条例、公契約条例などの政策提案を強めます。
集まって、話し合い、相談し、助け合う活動こそ民商運動の原点です。班・支部で「商売を語る会」を開き、まちづくり、業種別・問題別対策を強めます。
自治体連携型持続化補助金やものづくり補助金などの学習と事業計画づくりに挑戦します。
2月12日には、全国中小業者決起大会と合わせ、省庁交渉、国会議員要請、請願デモなどが取り組まれます。各地・各分野・業種別の要求と署名を結集しましょう。大会を機に実現した成果を、直ちに地域で生かしてほしいと思います。
-平和・民主主義を守る取り組みの展望は。
安倍首相は、2021年9月の自民党総裁期限までの改憲をたくらんでいます。しかし、参議院選挙や世論調査の結果は「アベ改憲ノー」です。学習と署名を思い切って広げ、改憲発議を阻止します。
辺野古の「美ら海」への土砂の投入はわずか1%しか進んでいません。「オール沖縄」の団結、県民の「新基地ノー」の決意、全国の支援を強め、新基地建設を中止させます。
核兵器禁止条約は80カ国が調印し、昨年末時点で34カ国が批准しています。あと16カ国で成立することになります。核なき世界を求める世論に背を向け核抑止論にしがみつく日本政府の姿勢に批判が相次いでいます。
今年は、広島、長崎への原爆投下から75年の節目の年です。NPT(核拡散防止条約)再検討会議に合わせニューヨークで世界大会も開催されます。「ヒバクシャ国際署名」を広げ、代表派遣に取り組むとともに、日本政府に批准を迫るたたかいも大きく広げたいと思います。
この3年間で、市民と野党の共闘は大きく深化しました。5野党1会派は、「市民連合」と「共通政策」を確認し、安保法制、憲法、消費税、沖縄、原発など国政の基本問題で政策的一致をつくり上げてきました。民商・全商連として、政党・議員・市民連合などと懇談し、消費税5%への引き下げや地域経済振興の方策を共通政策に盛り込むよう働き掛けていきたいと思います。
-仲間づくりも期待されています。
中小業者が役割を発揮できる社会を実現するには、道理を掲げ、団結を強め、国民共同を推進する民商・全商連が大きくなることが大切です。地域にどんな民商をつくるのか展望を語り合いましょう。
積み重ねてきた数々の成果や実績、仲間の温かさのある民商の魅力を、ぜひ地域の中小業者に知らせていただきたいと思います。中小業者の生きる道ひらく相談活動を大きく広げ、要求運動と組織建設を一体に推進します。
5月には全商連第54回総会が宮城県で開催されます。2年前の53回総会時現勢を回復・突破して迎えられるよう力を合わせます。商工新聞を積極的に活用し、学習を力に助け合いが実感できる班・支部建設を推進します。
家族一人ひとりの要求を大切にし、力を合わせて困難を解決するのが民商・全商連運動です。共済会は、いのちと健康を守る助け合いの輪を広げ、すべての組織が会員加入率80%を早期に突破します。
婦人部は、実態調査結果を暮らしと営業の見直し運動に生かし、所得税法56条廃止をめざします。青年部建設に民商・全商連の未来がかかっています。業者青年に魅力ある民商建設を進めます。
-2021年は創立70周年ですね。
中小業者の多彩な要求を一つひとつ実現してきた歴史に学び、会勢を前進の軌道に乗せて70周年を迎えます。
記念事業は今後検討されますが、その一つとして、築50年を超え老朽化した全商連会館の建て替えを行っています。運動を次世代に引き継ぐ一大事業として、団結の「とりで」の建設募金にご協力をお願いします。
中小業者が希望の持てる、政治・経済・社会をめざして、力を合わせましょう。