全国商工新聞 第3379号2019年9月30日付
9日午前5時ごろ、千葉市付近に上陸し、9時までに茨城県沖に抜けた台風15号は、伊豆諸島や関東地方南部を中心に猛烈な風雨をもたらし、千葉市で最大風速35.9メートル、最大瞬間風速57.5メートルを観測するなど、観測史上1位の最大風速や最大瞬間風速を記録しました。
千葉県では、多くの電柱が倒壊・損傷し、送電線鉄塔2基がなぎ倒されました。電力供給に支障をきたした最大戸数は93万4900戸に上り、最大断水戸数は13万9744戸に達しました。「屋根が吹き飛んだ」など家屋の被害も甚大です。
加えて大規模停電が情報の途絶を招き、日常生活や経済活動とともに復旧作業を困難に陥れ、被害を増幅させました。
冷房が使えず、熱中症とみられる症状で3人が亡くなりました。「納期が迫っているのに停電で仕事がストップ」(製造)、「壁が崩れ営業できない」(スナック)、「出荷前のナシが8割落下」(農家)、「酸素ポンプが止まり、いけすの養殖魚が全滅」(漁業)、「温度管理ができず、暑さで豚が死んだ」(酪農)など、損害は多大かつ多岐にわたります。
大規模停電の背景として、東京電力が送配電設備への投資額を減らしたことが設備の老朽化を招いた可能性があると報道されています。昨年来の台風被害から、円滑な復旧を妨げる倒木等の撤去への対策が強調されていました。突然の停電が、いかに深刻な被害をもたらすか-昨年9月6日に北海道で起きたブラックアウトが実証していたはずです。
こうした指摘や経験が生かされなかったことは重大です。同時に、利益を最優先してきた東電の経営体質も問われています。原発を中心とした「大規模・一極集中」から自然エネルギーを生かした「小規模・分散型」の発電へと切り替えることも急務です。
建物の損壊や浸水被害は、東京都の伊豆大島などの島しょ部をはじめ横浜市金沢区など広範囲に及んでいます。
国・自治体や東電は、被害の実態把握と回復・支援に全力を挙げ、大規模停電への対策を抜本的に強めるべきです。