全国商工新聞 第3377号2019年9月16日付
厚生労働省(厚労省)が2019年の年金財政に関する検証結果を公表しました。5年ごとに行われている財政検証ですが、前回より公表が遅れたのは、参院選直前に「公的年金だけでは老後資金が2000万円不足する」とした金融庁審議会の報告が大問題となったためでしょう。選挙が終われば案の定、「マクロ経済スライド」により、将来の年金額が大幅に削減・抑制される実態を平然と明らかにしました。
厚労省が「モデル世帯」としたのは「夫が40年間会社員、妻が専業主婦」の場合です。65歳で受け取る年金水準について、現役世代の平均収入に比べ、現在の約6割が10年も経ずに5割程度まで減るとしました。また、経済や雇用の状況次第で5割を割る場合もあるともしました。
国民基礎年金への仕打ちはいっそう深刻です。年金の自動減額期間が延長され、支給額は現在の水準より約3割も減るとしました。満額でも月に6万5000円程度で、最低生活も賄えない現在の支給額を、さらに目減りさせていくとしたのです。
黙ってはいられません。「マクロ経済スライド」を廃止し、「減らない」年金を実現することは待ったなしの課題です。
方策の一つは、高額所得者優遇の見直しです。例えば、保険料を徴収する年収の上限を健康保険と同様、約2000万円まで引き上げ、併せてアメリカの公的年金並みに、高額給付の伸びを抑えれば、約1兆円の財源が確保できるといわれています。
二つは、約200兆円に上る年金積立金の有効活用です。ヨーロッパ諸国と比べても破格なため込みを、アベノミクスの成果を演出するための株価つり上げに使うのでなく、貧困の解消や格差の是正、高齢者の尊厳のためにこそ生かすべきです。
いま、悪政転換をめざす市民と野党の共闘が発展することで、消費税増税と社会保障改悪の根拠となってきた「税と社会保障の一体改革」への合意が霧散しました。「共通政策」にある「生活を底上げする経済、社会保障政策の確立」へ、真に安心できる年金への改革を迫る運動を広げていこうではありませんか。