仲間と笑い、学び合い 第15回全国業者青年交流

全国商工新聞 第3331号10月8日付

経営のヒントもらえた

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交流会で得たことを胸に、元気にアピールする参加者

 「仲間・同業・原点・笑い・学び・『photo』×あえる」をテーマに、全商連青年部協議会(全青協)は9月23、24の両日、第15回全国業者青年交流会を福岡県北九州市で開催(詳報4面)。各地から業者青年ら416人が集い、経営交流や仲間づくりなど多彩な企画で学び合いました。さまざまな「あえた」を胸に、夢や期待を語る参加者の声を紹介します。

多彩な企画に400人

 地域経済の担い手として、若手経営者や業者2世が集まり、経営を伸ばすヒントや共に頑張る仲間を広げる2年に1度の全国業者青年交流会。多彩な学びと出会いの場に、熱気があふれました。
 「事業の原点を思い出せた」と好評だったのは「商売っておもしろい!未来を開く業者青年トーク」と題したパネルディスカッション。起業を考えている参加者からは「私も自営業の生き方に挑戦したいという気持ちになれた」との感想が。
 「融資や補助金に役立つ事業計画づくり」「従業員教育」「税務調査」「自治体の事業者支援施策」「保育・子育て」など多彩なテーマの11の分科会で学びを深めました。
 アクセサリーやカー用品など製品展示の場では、名刺交換も行われ、出会いの輪が広がっていました。

志は同じ 仲間ができた

 九州で初めて開催された第15回全国業者青年交流会。パネルディスカッションや11の分科会、夜の交流会など多彩な企画を通じ、「明日からの商売に生かしたい」「志が同じ仲間ができた」と笑顔が広がりました。「交流会の報告会を開いて魅力を伝え、より多くの仲間を青年部に迎えよう」との提起に大きな拍手がわきました。

経営 暮らし 学び合い 11分科会で交流

SNSを活用

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「融資・補助金に役立つ事業計画づくり」は上品忍・中小企業診断士を講師に学習。グループワークで新事業の構想を練りました
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「名刺を使って営業スキルアップ」は名刺マスターの三反田潤さんが講師。グループで「売り上げを伸ばすには」などアイデアを交換

 「早速やってみたい」と参加者に好評だったのが、販路拡大に使えるSNSや名刺の活用方法を学ぶ分科会。「ウェブ・SNSマーケティング」では、グループワークを行いました。
 加藤光世さん=IT=は、SNS活用方法のステップとして(1)見込み客を100人集める(2)集客した見込み客をリスト化(3)リスト化した見込み客にセールスする-と説明。「写真より動画の方が受けがいい」「LINE@は開封率が高い」など、資料を示しながら話しました。
 フェイスブックに広告を出している参加者が「昨年、一昨年と比べて反応が減り、売り上げが減少した」と質問。野澤文平さん=情報通信=が「広告の中身の違いやタイミングを分析してみて。ちょっとしたことで売り上げが大きく変化する」と話し、参加者の注目を集めました。
 「時代に合った宣伝が学べれば」と参加した田中秀和さん=介護=は「様子が分かれば、親族も安心できる」と、デイサービスの動画配信を着想。「計画中の新事業ではLINE@を使った宣伝をしてみたい」と話していました。

税金・雇用・継承

Photo女性限定「The Lady Cafe」では、従業員教育や家庭のことが話題に。「悩みを出し合え安心した。また頑張れそう」と好評

 知識を付け、経営を守り、発展させよう-。「税務調査対応、消費税・複数税率・インボイス」は、参加者が70人を超え、大きな関心が寄せられました。「従業員教育と人材不足対応」では、「トライアル雇用助成金」などの制度に注目が。「事業継承のバトンタッチ練習」では、三井逸友・横浜国立大学名誉教授を助言者に、継ぐ側、継がせる側から事例が上がりました。

地域とつながり

 中小業者を取り巻く環境・地域の変化、自治体施策も学習しました。移動分科会は、北九州市の職員を迎え、開業を応援する「スタートアップ支援」について、コワーキングスペース「COMPASS小倉」やリノベーション物件を見学しました。
母親の衣料品店を継いだ小倉民商青年部の堀田光正部長の店も訪問。堀田さんは経緯や悩みを話し、新規開業と併せて既存商店への支援の必要性も訴えました。

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初開催の「保育・子育て」では幼児教育専門家の熊丸みつ子さんからパパ・ママへ熱い激励が。赤ちゃんと一緒の参加もあり和やかに

 「地域とつながるイベントづくり」では、民商まつりや夜オリ、イベントのやり方などを討議。「青年部づくり・青年部活動」では、人が集まるための工夫や部員拡大の努力などを交流しました。

仲間 商売 紹介し合い

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「若いうちから口腔ケアが重要」と話す福岡・筑紫民商の柴田直さん=歯科材料卸=は、口腔ケアグッズを展示
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福岡県青協プレゼンツの哺乳ビン早飲み対決では、各県の代表が大奮闘。笑って交流を深めました

夕食交流会 名刺交換会 製品展示

 夜は夕食を食べながらの大交流会。名刺交換や交流企画、製品展示などが行われました。
 乾杯が終わるとすぐに、あちこちで名刺交換。茨城・日立民商の小室慶太さん=塗装=は「同業種の人から、仕事の取り方とかいろいろ教えてもらえた」と笑顔でした。
 舞台の左右に設けられた製品展示コーナーには、イラストやアクセサリー、カーケア用品などが並びました。
 盛り上がったのは、福岡県青協プレゼンツ「哺乳ビン早飲み対決」。各県の代表の奮闘に参加者から大きな拍手と笑いが起きました。

青年が活気づけば民商も大きく動く 福岡県青協

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交流会成功を支えた福岡県連・県青協

 「青年部が民商のエンジン。活気づけば民商が動く」。九州で初めて開催された全国業者青年交流会の成功に向け、大奮闘してきた地元・福岡の県青協と県連。100人を超える参加で交流会を盛り上げました。
 開催地に決まって以降、幹事会では「交流会を活性化のチャンスに変えていこう」と討議。連日の訪問活動で参加を呼び掛け、春日那珂川民商青年部の再建や新たな県青協幹事が誕生するなどの変化をつくり出しました。小倉民商青年部では、北九州市役所を訪れ、後援や移動分科会への講師派遣など協力を要請しました。
 当日は保育や案内、受付などで民商役員や婦人部員らが要員として交流会の運営を支えました。
 山根祐紀議長=建築塗装=は閉会全体会で開催地代表としてあいさつ。「全国どこにも負けない県青協を作ろうと奮闘し、民商と青年部の仲間がもっと好きになった」と胸を張り、「僕たちが民商のエンジン。青年部が活気づけば民商も大きく動くし、素晴らしい組織になる。熱い気持ちを持ち帰ってパワーアップし、11月の全青協総会でまた会いましょう」と力強く呼び掛けました。

明日の客をどう笑わすか 落語に学ぶ経営

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商売人にちなんだ落語を演じる林家はな平さん

 毎日忙しくて笑うことも忘れてしまう…。そんな業者青年のため、文化企画では若手落語家の林家はな平さんが登場しました。
 商売人にちなんだ落語として、江戸のリサイクル業・くず屋が主人公の「井戸の茶碗」を披露。「落語は初めて」という参加者も多くいましたが、さまざまな登場人物を演じ分ける話芸に引き込まれ、大きな笑いに包まれました。
 また、はな平さんの人生を変えた言葉として「飲み会などに行きたくないと思ったら行け。楽を選ぶと絶対にいい方向に進まない」「明日の客をどう笑わすか考えろ。それが積み重なって売れるようになる」「修業とは理不尽に耐えること」などを紹介しました。
 フロアからは「仕事上で、自分の価値の決め方、値段を上げるタイミングに悩む」との相談が。はな平さんは「必要としてくれる人が増えることで値段は上がっていくのでは。私は値段だけが価値だとは思っていない。はな平でなければという仕事ならどんなに安くてもいい」と話しました。

起業 継承 語り合い パネルディスカッション

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商売の原点を話し、「自営業の生き方は楽しい」と語り合ったパネルディスカッション

 「自営業で自分の人生をもっと楽しくしたい」-。パネルディスカッション「商売っておもしろい!未来を開く業者青年トーク」は、独立や承継を決意した業者青年が登壇し、交流を深めました。横浜国立大学の三井逸友名誉教授が講演。「人間的な経済の回復を担うのは中小・マイクロ企業との認識が世界で広がっている一方、日本ではそうした企業が減少し続けている。自分の生き方を追求できる仕組み作りが重要」と強調しました。その後、三井先生をコーディネーターに、大分民商青年部の福田恭司さん=情報通信、福岡民商の田口伸剛さん=塗装=が商売や青年部への思いを語り合いました。

会社員時代より家庭も円満に

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三井逸友さん 横浜国立大学名誉教授・嘉悦大学客員教授。日本中小企業学会常任理事(元会長)などを歴任

福田 インターネットなどの情報通信を通じて、オフィスの環境改善を提案しています。大手通信会社で学び、5年ほどカラオケ配信会社に勤務。営業で日本一になり、年収も良かったのですが、お客さんに自分が思うサービスを届けたくて起業を決めました。120%の仕事を徹底することで、リピーターが増えていて、売り上げも倍々で上がっています。
 起業して良かったのは、お客さんの喜びの声がリアルに伝わり、自分たちの評価になること。土日祝は休んでいるので、夜が遅かったサラリーマン時代と比べて、家庭も円満になりました。
田口 大学院を卒業後、食品の開発をしていましたが、1年半前に親の塗装会社に入りました。承継を決めたのは、昔からやりたいことを支援してきてくれた親への感謝の気持ちと、人事異動で尊敬する上司と働けなくなったことで感じた、サラリーマンの決定権のなさからでした。
 でも、職種が違う上、父の会社を手伝ったこともなかったから、現場では初めてのことだらけ(笑)。今は8割くらいはこなせるようになりました。

安定に満足せず成功する人生を

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福田恭司さん オフィス環境改善サポートの(株)LOL代表取締役。3年前に起業し「お客さまに寄り添う会社」を信念にまい進

三井 二人とも自分の選択で今の生き方を選んでいるんですね。一方で、困難もあることでしょう。どう乗り越えていますか。
福田 多種多様な仕事をしているため、マニュアル化が難しいことと、自社ブランドの構築が課題です。
 ライバルは大企業も含め多いので、どう生き残るか。営業時代を考えると、お客さんが、商売がうまくいくようにサポートしてくれていたと思うんですね。そういうお付き合いができるエンドユーザーを大切にしていきたいです。
田口 サラリーマン時代は、安定した生活を続けた方が最終的には幸せなのではと、保守的になっていましたが、失敗と成功を繰り返しながら成功する方が面白い人生になるのではないか、と切り替えました。
 技術面の困難もありました。現場で怒鳴られながら、まねして学んで、必死で慣れてきました。ひたすらやれば何とかなります。
三井 後継者がいないというのは、廃業の最大の理由で、どこの企業にとっても焦眉の課題です。父親から家業を継ぐよう言われたことは。
田口 一度もなかったです。無理強いされていたら反発していたかもしれません。今は社長である父に、何でも意見が言えて、ストレスもないです。
三井 福田さんは将来についてどんなビジョンがありますか。
福田 5年後、10年後を見据えた計画書を作っていて、4年後の目標は売り上げ6億円です。10年後は「九州全県に支店をつくる」ことですが、世の中の流れが速く、具体的な計画は難しい。3年、5年の計画を実行するのが大切かと。将来の借り入れも見据え、社員と夢のある事業計画書を作っています。

民商の仲間は本音で話せる

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田口伸剛さん (有)田口塗装店の2代目。一度は勤め人の道に進みましたが、1年半前から親の会社で修業中

三井 若手経営者は孤独になりがち。民商・青年部についてどう感じていますか。
福田 民商の人たちは本音で話してくれるから、自分の仕事のヒントももらえます。青年部でも勉強会など開催しています。苦しみ、喜びを共有し、乗り越えられたときには達成感が生まれるはず。
田口 仲間ができやすいし、頑張っている仲間を見て、自分も頑張ろうと思える。モチベーションが上がります。
三井 生き方、暮らし方の選択として世のため、人のための働き方、生き方があっていいと思います。最後に交流会の感想を。
福田 いろんな人たちの話を聞き、自分ももっといい企業をつくろうと改めて思いました。仲間の悩みも吸い上げて、民商や行政に伝えて、働きやすい世の中を一緒に作りたい。
田口 分科会で会った人の話に引き込まれ、新しい仕事に挑戦したくなりました。全国の人たちと連絡先を交換し、これからつながっていく仲間なんだと実感しました。2年後、また会えるように、自分の会社も、民商も、頑張っていきましょう。
三井 私は大勢の参加者が目を輝かせ、思いを持ち、耳を傾けている姿に感動しました。自分の人生を選択し、生き方を求めているからこそ、自分自身の体験や将来に結びつけて聞いているんでしょう。
 この交流会は、人の経験から学べるめったにない「ビジネススクール」。学んだことを事業の在り方、将来につなげてほしい。

参加者の感想

熱い思いにびっくり 神奈川・大和民商 Yさん=ネイルサロン・飲食

 こんなにたくさんの人たちが熱い思いで集まっていることにびっくり。普段は人見知りなんですが、「民商」「若手経営者」などの共通点や同じ志を感じる仲間に出会えた2日間になりました。
 女性が働きやすい環境をめざして、5年前からネイルサロン「リリージュ」を経営しています。今年4月に家族で飲食店をオープンした時、民商の人たちにすごくお世話になって、「つながっていると良いことある」と実感。私も何かしたくて、今年6月から、大和民商青年部の部長を引き受けました。
 「青年部づくり」の分科会で「お祭りをして地域に根付いている」という話を聞きました。私も地元青年部の仲間で話が出ていた花火大会を実現しようと決意。経営や活動をサポートしてくれるスタッフも「まずはやりたいことをやってみようと背中を押してもらって、モチベーションが上がった」と話していました。
 子どもや店のこともあり、交流会に参加することに少し迷いがありましたが、県の仲間にも支えてもらい、一歩踏み出せて、刺激をたくさんもらえました。

店のHP立ち上げたい 沖縄・名護民商 Rさん=総菜・小売

 父親が経営する総菜・小売店で働いています。将来、独立も視野に、自分のやりたいことは何かを探しています。5月に入部し、今回の交流会の話を聞き、何かヒントがもらえるかも、と参加を決めました。
 普段関わりの少ない美容業の人から仕事の話を聞いたり、今後の事業展開の話などを聞き、将来の可能性が広がりました。  「広告・SNS」の分科会で「関連するものを投稿している人をフォローする」「広告・SNSで上げてはいけない文言」など、体験談や考え方を聞きました。学んだことを参考に、店のホームページを立ち上げたい。
 みんなと話して、消費税とインボイスにも興味が出ました。今後も学習会や交流会に参加して、自分のやりたいことを見つけたい。

商売のアイデア発見 札幌北部民商 Kさん=金属リサイクル

 父親と一緒に金属リサイクル業を営んでいます。
 商売で新しいことにチャレンジするヒント、5月に部長になったので、青年部のヒントも得るために今回、初めて参加しました。  交流会で面白いアイデアを持つ仲間に出会いました。特に塗装業の人が、内装リフォームに興味がある一般の人たちに壁の塗り方などを教えている話は、新鮮に聞こえました。
 うちでは、物置や趣味部屋などに使えるガレージハウスも販売しています。「自分で好みのものを作りたい」という人も増えているので、興味・関心を持つ人に教えてあげられたら、と思いました。
 青年部活動では、学習会の重要性を学び、楽しい学習会を開きたいと思います。部長としてあと2年。足跡を残せるよう頑張ります。

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