全国商工新聞 第3327号9月10日付
循環型地域づくりについて交流した第1分科会
第1分科会には約90人が参加。遠藤強全商連常任理事が司会を、吉田敬一駒沢大教授、井内尚樹名城大教授が助言者を務めました。
吉田氏は「アベノミクスはトリクルダウンを生まず地域中小企業を破壊する。持続可能な地域振興に特効薬はない。地域経済循環力を強める土台は、振興条例に基づいた内発的発展の道」と助言者報告を行いました。
続いて、井内氏が「経済(エコノミー)とは節約を意味する。地域からムダをなくしていく必要がある。地域の産業連関を分析し、漏れているものを減らし、地域資源の利活用を図り、循環型の経済をつくることが求められる」と問題提起しました。
その後、広島・庄原民商の深屋進さん、群馬・吾妻民商の金澤敏さん、沖縄・名護民商の西尾栄一さんの3氏が、振興条例づくりや、条例に基づく中小業者施策拡充の取り組みの経験などを報告。
フロアからも、中小業者の実態調査の報告(岡山、神奈川)や、「文化財修復事業」の取り組みなどの報告(京都)があり、いかに地域振興への懇談や共同を発展させてきたかなどの経験も交流されました。
吉田氏は「これからの社会にとって、商店街は高齢者が元気で生き生きと暮らす上でなくてはならない社会インフラ。シャッター通りが広がっているのは日本だけ。民商・全商連の地道な運動に確信をもって、地域になくてはならない営業づくりに挑戦しよう」と激励しました。
消費税に頼らない財源と社会保障充実への展望を考えた第2分科会
約50人が参加した第2分科会では、橋沢政實全商連副会長が「消費税増税が中小業者に与える影響について」をテーマに座長報告。中小商工業研究所の「2018年上期営業動向調査」から消費税を転嫁できない業者の実態や、インボイス制度の導入による事務の煩雑さ、取引先との関係など、制度の矛盾を学び知らせることの重要性を話しました。
助言者報告では、金澤誠一佛教大学教授が安倍政権の社会保障改革で介護の要支援1、2の保険外し、国保都道府県化による保険料の引き上げ、年金、生活保護基準の引き下げなど、「公助」が大幅に後退してきた実態を報告しました。社会保障・社会福祉サービスの確保のための保険料・利用者負担の引き上げによって家計負担が増加していることを指摘。社会保障の充実とともに最低賃金の引き上げの必要性も強調しました。
湖東京至元静岡大学教授・税理士は、複数税率・インボイス制度について解説。煩雑になる実務や免税業者が取引から排除される危険性を指摘。EUの付加価値税見直しの検討や、マレーシアの消費税廃止など世界の流れを紹介し、「消費税増税は阻止できる」と強調しました。
埼玉県連の金澤利行常任理事が埼玉県の国保都道府県化の実態について、愛媛・新居浜民商の植松ゆかりさんが増税と複数税率・インボイス制度の阻止に向けた学習について、群馬・前橋民商の中山誠二さんがインボイス制度の問題と今後の運動について、報告しました。
「事業計画づくり」と資金繰り対策を考えた第3分科会
第3分科会には45人が参加。服部守延常任理事が冒頭に分科会の狙いについて座長報告。上品忍・中小企業診断士が「小規模事業者における事業計画づくりの方法と意義」について、鳥畑与一静岡大学教授が「『事業性評価』とは何か-金融行政の変化と狙い」をテーマに、それぞれ助言者報告を行いました。
鳥畑氏は「ゼロ金利政策やマイナス金利政策で金融システムがまひしている中、金融行政が事業性評価を重視する姿勢を打ち出した。中小事業者は今後、事業性がしっかりとした経営計画と実績をつくる必要性がある」ことを強調しました。
これを受け、岩手・一関民商の山口伸さんが「『事業性評価』で融資を獲得していく上では、自主記帳・自主計算で資金の流れを把握し、SWOT分析などで経営を客観的に分析する必要がある」と指摘。長崎・東彼民商の朽原明浩さんは、融資獲得の実績を踏まえ「なぜ借りるのか、借りることでどのように経営が改善されるのか理解してもらうことが必要」と報告しました。
また、群馬・渋川北群馬民商の松澤俊夫さんも、計画書・申込書・必要書類を作成し融資実現した経験を語りました。
三井逸友・横浜国立大学名誉教授がまとめを兼ねた助言者報告。「自分たちが事業計画をつくり、頑張っている経験が報告され、良い分科会だった」と感想を述べた上で、「事業計画は経営の現状把握と方針・目標を策定し、作成した事業計画をもとに定期的にPDCA(計画、行動、評価、改善)を繰り返し、ギャップを埋める努力が大切」とアドバイスしました。