2018年12月15日
全国商工団体連合会
事務局長 岡崎 民人
自民・公明両党は本日、「平成31年度税制改正大綱」を発表した。消費税率10%への引き上げを大前提にしたものであり、容認できない重大な問題がある。
第一に、消費税率が10%に引き上げられれば、1世帯当たり約8万円、国民1人当たり3万6000円の負担増になることである。2人以上世帯の実質消費支出は、税率8%への増税前と比べて年間25万円減少し、パートを含む労働者全体の実質賃金は年額18万円も減っている。金融資産を持たない単身世帯が38%を超えるなど、格差と貧困が広がっている。大規模災害に見舞われた地域では、いまだ復興もままならない。こうした状況下での消費税増税は失政の極みである。
第二に、消費税増税のタイミングも最悪である。消費税増税後、オリンピック特需が終焉し、「働き方改革」によって最悪8兆円規模で労働者の所得が縮小するといわれている。また、米中の貿易戦争など世界経済の先行き不調による輸出の減少も危惧されている。こうした状況下で消費税10%への増税を行えば、国民生活も景気も大打撃を受けることは火を見るより明らかである。
第三に、「住宅に係る措置」「自動車に係る措置」を明記したことである。「買える人だけ」への減税を消費税増税に伴う景気対策として実施すること自体問題である。キャッシュレス決済でのポイント還元やプレミアム付き商品券なども含めると景気対策費用は2兆円を超えると報じられている。これだけで消費税率1%分に匹敵する財源が必要になる。しかも、対策は短期間で終わり、効果も疑問視されている。「増税のために税金を使う」のであれば、増税する意味はない。
第四に、「低所得者への配慮のための軽減税率制度」を実施するとしているが、政府が言うように1兆円軽減されたとしても、国民1人当たりでは月額660円程度に過ぎない。しかも、二つの税率の線引きがあいまい、かつ複雑であり、事業者には煩雑な実務と新たな納税コストが押し付けられる。
さらに重大なことは、「軽減」税率実施のために必要な財源を確保するために、インボイス制度実施による免税事業者への新たな負担増を「恒久財源」と称し、社会保障切り捨てで賄おうとしていることである。
インボイス制度による増収を「2000億円」と政府が試算していることも大問題である。インボイスが発行できない免税事業者を取引排除の危機にさらすだけでなく、免税点制度を無力化し、売上高1000万円以下の小規模事業者に新たな消費税負担を押し付けるなど、言語道断である。
また、「大綱」には、「情報照会手続の整備」が盛り込まれた。「帳簿書類その他の物件の閲覧又は提供その他の協力を求めることができる」ことを法令で明確化し、情報収集への協力を罰則付きで義務付けるなど、課税強化につながる動きを見逃すわけにはいかい。
そもそも消費税は、低所得者ほど負担が重く不公平な最悪の大衆課税であり、「応能負担」「生活費非課税」というあるべき税制の原則からすれば「増税中止・税率引き下げ」にこそ道理がある。
軍事費を毎年増大させる一方で、必要な社会保障費を削減するなど、自公政権による税金の使い方は、憲法が定める国民の平和的生存権と福祉の向上に反している。
「大綱」が発表された同じ日に、各界の著名人10氏が呼び掛けた「10月消費税10%ストップ!ネットワーク」が結成され、増税中止1点での幅広い共同による運動が始まった。
民商・全商連は、この呼び掛けに応え、消費税の増税中止実現に全力を挙げるものである。そして、「納税者の権利宣言」(第5次案)で示したあるべき税制・税務行政の実現に向けて奮闘する決意を表明する。