2019年上期営業動向調査
経営厳しく推移

全国商工新聞 第3364号2019年6月10日付

10%増税で売上減4割 「廃業考える」2割も

 全商連付属・中小商工業研究所はこのほど、2019年上期営業動向調査を公表しました。経営努力が見られるものの、売上DI値は▲35.6、利益DI値は▲41.8で、多くの中小業者の経営は、厳しい状況です。「消費税問題」を経営上の困難、と回答した割合が3期連続で上昇したのが今期の大きな特徴。加えて消費税率が10%になった場合、全ての売り上げ別の階層で「売り上げが減る」と予測する割合が突出し、「利益が減少する」と予測する割合も高く、増税後の先行きに不安が広がっています。

 総合経営判断DI値(「良い」から「悪い」を引いた割合)は▲44.8(前期▲44.1)でほぼ横ばい。食料・繊維・木製品・印刷関連製造業と金属製品・機械器具製造業、サービス業の3業種が改善。建設業(建築設計含む)と流通・商業、宿泊・飲食業が悪化しました。
 売上DI値は▲35.6で3.8ポイント改善しました。4業種で改善したものの、建設業(建築設計含む)、宿泊・飲食業は悪化しました。
 単価・マージンDI値は▲8.7と、3.5ポイント上昇。宿泊・飲食業を除く5業種で上昇しました。
 原材料・商品の仕入値DI値は58.0で4.8ポイント上昇しました。食料・繊維・木製品・印刷関連製造業とサービス業の2桁上昇はじめ4業種で上昇。流通・商業と宿泊・飲食業は下降しました。
 利益DI値は▲41.8で4.3ポイントの改善。食料・繊維・木製品・印刷関連製造業の16.3ポイントはじめ、サービス業および建設業(建築設計含む)の3業種で改善しました。
 次期の経営見通しDI値は▲45.1で5.0ポイント悪化。建設業(建築設計含む)と流通・商業、サービス業で悪化を、食料・繊維・木製品・印刷関連製造業が改善を見通しました。

経営の困難招く

 「経営上困っていること」(複数回答)では「消費税問題」が、18年上期から3期連続で上昇。仕入れで支払った消費税を売り上げ・単価に転嫁できずに、身銭を切っている実態が、経営上の困難の一つになっていることがうかがえます。
 最近の取引における消費税の転嫁状況では、「転嫁できていない」(「一部」「ほぼ」「全く」の合計)は、売り上げ別の階層が低いほど「転嫁できていない」割合が高くなり、売上1000万円未満では64.9%に、同1000万円~1500万円未満では41.1%に上っています。
 税率10%になった場合の転嫁予測でも、「転嫁できないと思う」(「一部」「ほぼ」「全く」の合計)は、売り上げ1000万円未満で71.6%、同1000万円~1500万円未満で53.9%となるなど、全てで現状よりも消費税の転嫁が難しくなると認識しています(グラフ)。

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 10%が商売に及ぼす影響では、「売り上げが減る」(「大幅に」含む)、「利益が減る」と予測する割合が高くなり、全階層で40%以上を超えました。「廃業を考えざるを得ない」も、売り上げ1000万円未満で9.9%、同2000万円~3000万円未満で9.1%となりました。

増税不況に懸念

 「ひとこと欄」では消費税増税について、「8%でも大変。10%なら売上・利益は大幅に減り、公共料金や水道光熱費の高騰で一層経営難に」「10%実施なら、単価の2%分の値下げ要請がくるだろう。製造業は親企業のいい値でやるしかない」「増税後、客は安い大型・量販店に行くだろうし、ポイント制度による『囲い込み』に誘導されてしまう」「10%になれば宿泊料が高くなり、客足は減る。長い不況が待ち構えている」などの声が寄せられました。

2019年上期営業動向調査

 <調査時期>2019年2月20日~3月19日<有効回答>644人(調査対象モニター人数:47都道府県1216人、有効回答率53.0%)<回収方法>郵送記入<業種構成(新6業種分類)>建設業(建築設計含む)27.3%、食料・繊維・木製品・印刷関連製造業8.2%、金属製品・機械器具製造業14.2%、流通・商業20.6%、宿泊・飲食業9.1%、サービス業20.6%<事業形態>個人64.0%、法人36.0% ※同調査は半年ごとに実施。

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