消費税10%で廃業を検討2桁も

全国商工新聞 第3336号2018年11月12日付

「インボイス不安」切実な声

 全商連付属中小商工業研究所はこのほど、2018年下期営業動向調査を公表しました。4期連続で上昇していた単価・マージンDI値は今期下降し、利益DI値が減少、総合経営判断DI値も44.1と前期と比べて横ばいにあり、全体として依然厳しい経営状況が続いています。1年後に控えた消費税の税率10%への引き上げによって「廃業を考えざるを得ない」との回答が、宿泊・飲食業、流通・商業の2業種で2桁となるなど、増税が経営を圧迫、将来への大きな不安材料となっていることが浮き彫りになりました。

業種別で明暗も

 総合経営判断DI値(「良い」マイナス「悪い」)は(前期44.4↓18年下期▲44.1)と前期比でほぼ横ばい。業種別には流通・商業とサービス業、金属製品・機械器具製造業3業種が改善。悪化は3業種で、特に食料・繊維・木製品・印刷関連製造業と宿泊・飲食業は2桁の大きな悪化となりました。

 売上DI値は(前期38.5↓同▲39.4)と0.9ポイント悪化。業種別には金属製品・機械器具製造業や宿泊・飲食業など4業種が改善ないしは横ばいで、建設業(建築設計含む)と食料・繊維・木製品・印刷関連製造業が悪化しました。

 単価・マージンDI値は(前期10.9↓同▲12.2)と1.3ポイント下降。業種別には金属製品・機械器具製造業と宿泊・飲食業の2業種が2桁上昇し、建設業(建築設計含む)や流通・商業など4業種は下降ないしは横ばいでした。

 原材料・商品の仕入値DI値は(前期53.4↓同53.2)と、ほぼ横ばい。業種別には建設業(建築設計含む)と金属製品・機械器具製造業が上昇し、4業種が下降。このうち食料・繊維・木製品・印刷関連製造業の下降が目立ちました。
 利益DI値は(前期44.3↓同▲46.1)と、1.8ポイント悪化。業種別には改善3業種と悪化3業種に分かれ、金属製品・機械器具製造業が13.8ポイント改善する一方、食料・繊維・木製品・印刷関連製造業は25.8ポイント悪化しています。

 消費税10%増税による商売への影響について、全6業種で売り上げと利益が減少するとの回答割合が突出。「廃業を考えざるを得ない」との回答は、流通・商業で11.9%、宿泊・飲食業で15.1%と2桁に上るなど、将来に対する深刻な影響を及ぼしていることが浮かび上がっています(図1)。

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 消費税率が10%となった場合の「消費税の転嫁」については、「転嫁できない」(「一部」「ほぼ」「まったく」の合計)との認識が6業種すべてで増加。建設業は(建築設計含む)54.8%(最近の転嫁状況は38.3%)、食料・繊維・木製品・印刷関連製造業48.1%(同33.3%)、金属製品・機械器具製造業31.9%(同19.8%)、流通・商業55.2%(同37.0%)、宿泊・飲食業82.7%(同76.5%)、サービス業55.1%(同46.0%)で、転嫁がより厳しくなるとの認識が広がっています(図2)。

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ひとこと欄から

 「ひとこと欄」には「免税業者だが、インボイス方式が導入されたら、役所や会社関係への納品の場合、どうなるか不安」「消費税が思うように払えず分納している。昨年は融資を受け滞納分の本税を払った。10%に上がると、不安だ」「インボイス方式の導入で伝票などの事務処理、事務経費の増加、免税業者との取引をどうするか、心配だ」「得意先から1枚のファクスで値引きの指示がくる。応じるしかないが、仕事が増えても利益にならない。消費税が上がったら、仕事を続けていけるか、心配だ」
などの声が寄せられています。

18年下期 営業動向調査

<調査時期>18年8月21日~9月20日
<有効回答>680人(調査対象モニター人数:47都道府県1302人、有効回答率52.2%)
<回収方法>郵送記入
<業種構成(新6業種分類)>建設業(建築設計含む)26.0%、食料・繊維・木製品・印刷関連製造業8.9%、金属製品・機械器具製造業14.5%、流通・商業22.5%、宿泊・飲食業8.0%、サービス業20.1%
<事業形態>個人64.2%、法人35.8%

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