不安をあおる架空請求など 特殊詐欺

全国商工新聞 第3372号2019年8月5日付

相談することが一番の対策

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 「最終通達書」「最終通告書」…。身に覚えがなくても思わずドキッとする通知。そんな言葉をはがきなどに書き込み、料金を請求する架空の「不当請求」が事業者や市民に送りつけられています。「オレオレ詐欺」をはじめとする特殊詐欺の一つで、「不安をあおり、弱みに付け込む」のが特徴。公的な団体に見せかけたり、実在の弁護士事務所、弁護士の名前を使うケースも。だまされないためにはどうすればいいのか。その撃退方法は? 東京法律事務所の加藤健次弁護士と一緒に考えました。

公的機関装う威圧的な文章

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「民事訴訟最終通達」などと書かれた特殊詐欺のはがき

 「最終通知書」が届いたんですけど…。各地の民商に寄せられる相談です。民商のニュースでも「不審はがきにご用心」と“警告”しています。
 はがきに記されているのは「民事訴訟最終通達書」「総合消費料金未納分訴訟最終通知書」「特定消費料金未納に関する訴訟最終告知のお知らせ」などの文字。漢字を多用しているからでしょうか。‘威圧感’さえ伝わってきます。封筒に赤字で「緊急」と書き込んだケースもあります。
 差出人には「地方裁判所管理局」「民事訴訟管理センター」「法務局共同事務センター」などの名前が使われ、住所も「千代田区霞が関1の1の3」などとなっています。
 文面も「契約不履行による訴状が提出され…民事裁判が開始されることを通知する」「ご連絡なき場合…不動産物の差し押さえを強制的に履行」「取り下げ等のお問い合わせは必ずご本人様からご連絡を」などと書かれています。
 連絡しなければ「裁判に訴える」というわけです。しかしもちろんこれは、詐欺的な「不当請求」。だまされてはいけません。

アドバイス1

おかしな電話や封書はがきには一切応じない

 おかしなはがき、電話、封書には一切応じてはいけません。裁判所からの連絡は「書留」で特別送達されます。普通の郵便、はがきでは来ません。
 たとえ本当に払わなければならない債務があったとしても、裁判などの手続きを経て支払えばいいのであって、すぐ払う必要はありません(税務署からの通知は除く)。
 詐欺集団が「すぐ振り込め」と急がせるのは、「不安をあおり、弱みに付け込むため」です。

「だまされない」と思う人ほど被害

 しかしだまされた人が多いのも事実です。
 警察庁の調べによると、特殊詐欺によるこの10年間(2009年から18年)の被害額は3480億円。詐欺として認知された件数は11万8200件で、1件当たりの被害額は約294万円に上ります。
 しかも被害者の95.2%が「自分は(どちらかといえば)被害に遭わないと思っていた」と回答し、その理由として57%が「だまされない自信があった」と答えています。
 詐欺電話などを受けた際の被害者の心理の特徴は「自分がお金を払えば親族を救えると思った」「親族が起こしたトラブルを聞いて驚いた」「親族の将来に傷がつくと思った」「トラブルを家族や会社に知られたくないと思った」が上位を占めています。

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 まさに「弱みに付け込み、不安をあおる」ことによって詐欺を働いていたことが浮かび上がってきます。
 それでは、うっかり電話に出てしまった場合、どう対処すればいいのか。

アドバイス2

仲間や民商と相談し詐欺を見破ろう

 詐欺集団は“だまし”のプロです。話し込めば話し込むほど相手の話術にはまっています。だまされた人の多くが「自分はだまされない自信があった」と思っていたことでも明らかです。
 同時に詐欺の電話を受けた後、家族や友人・知人、金融機関の職員などに相談している人ほど、詐欺やウソを見抜いています。
 家族や民商に相談することがだまされない最大の防御です。おかしなはがきや封書をもって、相談しましょう。また、電話でもいいので民商の顧問弁護士や知り合いの弁護士に、「こんなはがきがきた」「こんな電話がきた」と率直に相談しましょう。

怪しい事業者はHPで確認する

 不当請求を行っている事業者名について都道府県などの自治体、法務局などが公表しています。おかしい事業者と思ったら、HP(ホームページ)でチェックを。

 振り込め詐欺等の被害にあった方-振り込んでしまったお金が返ってくる可能性があります-金融庁、消費者庁、警察庁などのHPを参照。

特殊詐欺とは

 面識のない不特定の者に対し、電話、はがきその他の通信手段を使って、預貯金口座への振り込みを要求し、現金等をだまし取る行為。振り込め詐欺(オレオレ詐欺、架空請求詐欺、融資保証金詐欺、還付金等詐欺)とそれ以外の金融商品等取引名目の特殊詐欺などを総称したもの。2014年に過去最高の565.5億円を記録。最近では、人手不足に付け込み「一定期間無料」と言いながら、いつの間にか有料契約を結ばせる詐欺的手法や新聞などの「お悔やみ欄」を見て手紙を送りつける「お悔やみ詐欺」も話題になっている。

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