全商連
全商連トップ とじる
公正取引
灯油高騰 これじゃ廃業だ
政府は元売りへ指導を
灯油缶を各家庭に配達する燃料店。重さがこたえます(名古屋市内)
 灯油が高騰しています。石油情報センターによると、配達価格は全国的に18リットル当たり昨年1月と今年1月の比較で全国的に約300円上がり、1400円から1500円台も。値上げ幅の全国トップは青森の360円。全国的に大雪、寒波の影響で過去最高の高値を更新中です。
 青森市の米穀・燃料店主は「1週間ごとに2、3円仕入れ値が上がる。オイルショックのときのようだ」といいます。頭を抱えるのは仕入れ先への支払い。「厳しいから払いを待って」という顧客が増えているのです。
 「こたえるのはガソリンスタンドが灯油を目玉にしていること。うちの仕入れ値で売る。若い人は車で買いに行けるが年配者は無理。お客さんの多くは高齢者でやめられない」と板ばさみです。
 東京・新宿区のある燃料店は「卸値が高すぎる。昨年春から毎月の値上げだ。異常事態なのに政府は見て見ぬふりで手を打とうとしない」と怒ります。帝国データバンクによると、素材・原料価格高騰関連倒産(05年1〜11月)のうち原油関連は40%を占め、さらに増えると予測しています。
 ところが石油元売り各社は、この間の卸価格の値上げに続き、2月出荷分の石油製品卸売価格の引き上げを発表。灯油は1リットル当たり2〜4円の引き上げ。今までも値上げ分を吸収できずにいる業者は「これじゃ廃業だ。元売りは安定供給の責任を果たすべきではないか」と追及します。
 原油市況は原油需要、供給地の政治状況、投機、気象などで揺れますが、関係筋によると、「暖冬に嫌気がさした元売りが減産したとたん寒波となった上、製油所の事故が重なった」と同時に、「元売りが3年前から低在庫政策をとっているため需要変化に対応できない。日本の脆弱な供給体制こそが投機筋にすきを与え、市況の混乱を招いたのではないか」と指摘します。

大手元売り4社54%の大増益に
 元売りは「精製が追いつかず品薄。韓国からも輸入する段取りをしている」と値上げへの理解を強調しますが、大手石油元売り4社(新日本石油、出光興産、コスモ石油、新日鉱ホールディングス)の06年3月期(05年度)の売上高は原油価格高騰を受けた価格上昇でいずれも前年同期比10〜20%アップと予想され、営業利益は4社合計で54%の大増益に。純利益121%(05年12月期、04年同比で)の昭和シェルは理由の一つに「ガソリンの需要の堅調、寒波による灯油の需要増による国内販売増、精製コスト削減・効率化」を上げています。
 経産省の地域経済産業調査(全国1300社、05年10月)でも、収益面で7割が影響を受け価格転嫁は数%という事態では、「元売りはもうけを吐き出し適正価格を守るべきだ」(燃料店主)の声は切実です。
 石油情報紙「セキツウ」常務取締役の山内弘史さんは「世界的に石油需要は上がっているのに原油の生産や精製への投資が減っている。特に今年は暖冬といわれ、原油処理を落としていたところに世界的な大寒波で間に合わなくなった。日本も以前は備蓄を義務づけていたのに、規制緩和でそれをとり払い、作り過ぎないようにするから事態に対応できない。行政側は過不足が起きないようにというだけだ。元売りに備蓄をきちんとしろというべきではないか」と指摘します。
 
全商連トップ ページの先頭 とじる