6割が事業者にエネ高騰支援 交付金の継続希望も多数
全商連付属・中小商工業研究所が全自治体調査

 新型コロナや物価高騰への対応目的で、地方自治体が原則、自由に利用できる地方創生臨時交付金(コロナ交付金)。全商連付属・中小商工業研究所による全自治体調査では、「コロナ関連」であれば使途に制限がないことを生かして、多くの自治体が地域の実情や特性にあわせて、多彩な事業者支援を実施したことが明らかになりました。回答した775自治体の約6割が「中小企業に対するエネルギー価格高騰対策」を策定(2022年)。さらに2千以上の事業者支援策が実施され、多くの自治体が、23年度以降もコロナ交付金の継続を望んでいる実態が浮き彫りになりました。また、7割近くの自治体が支援策の立案に「事業者・事業者団体の意見」を参考にしており、自治体要請の重要性が一層明らかになっています。

中小業者支援策の策定に7割の自治体が「事業者団体の意見」を参考にしており、自治体要請の重要性が明らかになっています(写真は2月2日の岐阜県連の県への要請行動)

地域経済の核に支援策 公共交通や観光も

 「2022(令和4)年度・物価高騰の影響を受ける中小業者向け支援策・実施状況調査」(22年11月1~30日、回答数775、回答率43・3%)は、自治体が22年度に地方創生臨時交付金を活用して実施した支援策に関して、四つの設問で回答を求めたもの。
 設問1(図1)は、政府が22年9月9日、臨時交付金の増額・強化として創設(予算6千億円)した「電力・ガス・食料品等価格高騰支援交付金」を活用する、「生活者支援」と「事業者支援」について聞いたものです。
 事業者支援のうち「医療・介護・保育施設、公衆浴場等に対する物価高騰対策支援」(制度数555、71・6%)、「農林水産業における物価高騰対策支援」(同469、60・5%)、「中小企業に対するエネルギー価格高騰対策支援」(同436、56・3%)と、地域経済の核となる分野に支援策が講じられていることが分かります。さらに、「地域公共交通や地域観光業等に対する支援」も31・9%に上りました。

原油高対策に直接支援 信用保証料補助も

 設問2は、22年度に地方創生臨時交付金を活用して実施した設問1に該当する以外の事業者支援策を聞いたもので、支援策は2048制度に上りました。
 図2は、上記「中小企業に対するエネルギー価格高騰対策支援」と「設問2」のうち、直接支援策と資金繰り支援策の一部です。福島県伊達市の「中小企業エネルギー等高騰対策事業継続応援金」(上限10万円)や沖縄県の「原油・物価高対策緊急支援事業」(同50万円)など、原油・原材料高騰の影響を受けている事業者向けに、直接支援が多彩に講じられています。燃料価格の急激な高騰に直面している運送業者への燃料費補助や、省エネや再エネ設備導入を目的とした補助金なども実施されています。新型コロナウイルス感染症に起因する融資を受け、認定支援機関の支援を受けている中小企業を対象に、借入金額の一定率を補助する「事業資金緊急対策事業費補助金」(岩手県遠野市)や、コロナ関連融資を受けている事業者の借り換え時の信用保証料を補給する「経営安定借換支援」(福井市)などの資金繰り支援策も行われています。

「団体の意見」参考7割 自治体要請が重要

 設問3(図3)は、支援制度を検討する際に重視したことは何か、を聞いた回答結果です。「担当部署の議論」が524(67・6%)と最も高く、「事業者・事業者団体の意見」が518(66・8%)と続きました。自治体が、事業者・事業者団体の意見を踏まえて、支援策を制度設計している様子がうかがえます。

 設問4(図4)は、132の自治体から寄せられた、22年度臨時交付金の効果や課題、今後に関する意見の一部です。臨時交付金が事業者支援や経済対策、産業振興に有効であったとの意見、23年度も臨時交付金の継続・拡充・増額を求める意見が特徴です。「新型コロナウイルス感染症の影響が今も続いているなか、小規模自治体の中小企業者を下支えするためには、臨時交付金はとても重要」「臨時交付金はコロナ禍の経済復興のためには、なくてはならない交付金である。コロナ禍からの復興が道半ばの時であるため、ぜひ令和5年度も地方創生臨時交付金の配分を国は進めていただきたい」との意見も寄せられています。
 中小・小規模事業者や住民への実効性ある支援を実現するかどうかは、自治体の首長や議会の姿勢にかかっています。4月の統一地方選では、各自治体が行ってきた施策を点検し、コロナ禍と物価高騰で痛めつけられてきた中小業者の営業と暮らしの再建に寄り添い、地域経済の底上げに真剣に取り組む議員を選択することが求められます。

新型コロナウイルス感染症対応 地方創生臨時交付金

 コロナ禍と物価高騰に対応するため政府が補正予算で手当てした地方自治体への交付金。2021年度第1次補正以降、23年度第2次補正までに17兆1260億円が予算化されています。

2022(令和4)年度
「物価高騰の影響を受ける中小業者向け支援策実施状況調査」の特徴とまとめ(PDF)