全国商工新聞 第3354号2019年3月25日付
第19回統一地方選挙が、4月7日(前半戦)、21日(後半戦)の投票で行われます(日程はこちら)。中小業者の切実な要求実現のチャンスであり、今後4年間の地方政治の方向性を定める大事な選挙です。「お金が回ってみんなが潤う豊かで活気ある自治体・地域づくり」を実現するにはどうしたらいいのか、四つの焦点で考えます。
「消費は持ち直している」「所得環境は改善している」-安倍首相が国会で繰り返してきた答弁です。しかし国会論戦を通じて、家計消費や実質賃金が「マイナス」であることが浮き彫りになっています。内閣府が3月7日に発表した1月の景気動向指数(景気の動向や局面を把握する指数)の悪化を受けて、景気判断を「下方への局面変化」へと引き下げました。
「深刻な経済情勢の下で消費税率を上げていいのか」。これが統一地方選挙で問われる第一の焦点です。
共同通信社の世論調査(3月9、10日)では、消費税10%への引き上げについて「反対」が54.4%となり、前回調査から3.4ポイント増加。元内閣官房参与で『「10%消費税」が日本経済を破壊する』の著者でもある藤井聡・京都大学大学院教授も、商工新聞のインタビュー(2月4日号)に「消費税10%は景気を冷やす最悪の増税」と批判しています。
全商連付属・中小商工業研究所の営業動向調査(18年下期)でも、消費税が10%になった場合、流通・商業で「売り上げが減る」が48.3%に達し、「廃業を考えざるを得ない」は流通・商業で11.9%、宿泊・飲食業で15.1%に達しています。加えて政府が狙うインボイス(適格請求書)の導入によって、約161万の免税業者が課税業者になり、1社あたり15.4万円の消費税の納税が迫られるという試算を政府が明らかにしました。消費税増税が中小業者を廃業の危機に追い込むことは明らかです。
「今、消費税を上げるべきではない」は、国民多数の声です。日本共産党の志位和夫委員長は「今からでも止められる」と呼び掛けています。
国保税の引き下げを求めた埼玉県連の県交渉
「事業不振で滞納したら、正規の保険証を取り上げられた」「分納していたのに一括納付を要求された」「滞納分の支払いを求められ、売掛金を差し押さえられた」…。高すぎて払えない国保料(税)の過酷な取り立てによって、生業が脅かされ、医療を受ける権利さえ奪われる事態が全国で進んでいます。
統一地方選挙の二つ目の焦点は、国保料(税)の過酷な取り立てをやめさせ、思い切った引き下げを実現することです。
事業者、高齢者、失業者に加え、年所得200万円以下の非正規労働者が増加する国保加入者。低所得者が多く、その「4割が無職」です。加入世帯の年平均所得は、1995年には230.8万円でしたが、16年には138.8万円と92万円も激減。一方、自治体などによる差し押さえ件数・金額はこの10年間で、24万件、603億円も激増しています(図)。
「協会けんぽ」より6割も高い国保料(税)。その最大の要因は、医療費に対する国の国庫負担を引き下げてきたことです(負担率を45%から84年には30%に削減)。このため、全国知事会は14年7月、「公費1兆円の投入」を要望し、国保基盤強化と負担の公平を求めてきました。
その方策の一つが、「応益割」(均等割、平等割)の廃止・減免です。岩手県宮古市など3自治体が18歳以下の均等割を全額免除し、22自治体が独自の減免を実施しています。
ところが安倍政権は、こうした声に応えるのではなく、「国保の都道府県化」を断行。国保財政の運営権限を市町村から都道府県に移し、一層の引き上げと強権的徴収、保険証の取り上げ強化を打ち出しています。
全商連は2月に、国保の制度改善を求める「7つの提言」を発表。知事会が提案する「1兆円の公費投入」で国保の「均等割」「平等割」を廃止すれば、全国で年平均16万円余の軽減ができる(40代夫婦と子ども2人世帯の場合)ことを明らかにしました(表)。
国保料(税)の引き下げを求める声に応えるのはどの党・候補者なのか、見極めることが問われています。
「仕事おこしを通じ、循環型経済振興の推進・加速を図るかどうか」が三つ目の焦点です。
14年以降、民商が実施した自治体との懇談・要請は延べ2248回に及び、全自治体数(1788自治体)の42.7%に達しました。
懇談を通じ提案してきた住宅リフォーム助成は573自治体、商店リニューアル助成は107自治体へと広がり、地域振興の“妙案”として多くの自治体が実施。「経済効果の高い施策」と反響を呼んでいます。小・中学校へのエアコン設置も仕事おこしの大きな力となっています。
さらに、中小企業や小規模企業を視野に入れた地域振興をめざす振興条例は389自治体へと広がり、循環型の地域振興は、大きな流れとなっています。群馬、静岡、広島、愛知、奈良の五つの県では、民商、県連を「小規模企業の支援団体」と認定。条例に基づく施策検討会議を開催したり、支援策の説明会にも商工会議所などとともに案内されています。
ところが安倍政権は、地域循環型の豊かな取り組みを後押しするのではなく、種子の私有化・価格引き上げにつながる「種子法」の廃止、漁業権の地元漁民への優先付与をやめ、漁協を通さずに企業に免許を与える水産改革法案を強行しました。命の水を大企業に売り渡す「水道事業の民営化」を推進するなど、地域経済と小規模経営を破壊する大企業優遇政策を進めています。
循環型の地域振興の流れを推進する勢力はどこか。中小業者の仕事確保を後押しする政治が求められます。
災害に備えた「安心・安全の自治体・地域づくり」も、統一地方選挙の大きな焦点です。
大災害の時代といわれるほど、大きな災害に襲われてきた日本列島。2010年以降だけでも東日本大震災、御嶽山噴火、熊本地震、西日本豪雨、大阪北部地震、北海道胆振東部地震などの災害が相次ぎました。
今求められているのは「災害は起こる」を前提とした「防災・減災のまちづくり」です。地域再生と結び付けることによって、地域の活性化にもつながります。
危険箇所、過去に災害が起きた地域などが記されるハザードマップの作成や、その対応には、地元業者の知識、経験、技術は欠かせません。
災害を機に、業者の知恵と提案を生かして、使いやすい耐震改修工事や危険なブロック塀の撤去・改修費用の補助制度を創設した自治体も生まれています。「土砂災害警戒区域及び土砂災害特別警戒区域」に指定された危険箇所の解消工事などを提案し、実施することも、安心安全な自治体づくりの大きな一歩です。
とりわけ、「自立・分散型」再生エネルギー事業は世界の脱炭素社会の流れに沿ったもので、再エネの資源発掘を通じて地域を見つめ直し、市民、地元企業がその事業を担うことによって地域内経済循環を作り出すことができます。
これまで域外から得ていたガソリン、電気などのエネルギーが、地域内で循環することによってお金が回り、新しい雇用、仕事を生み出すことにもつながります。
しかし未来志向の「再エネ事業」に背を向け、原発に固執しているのが安倍政権です。
自ら「トップセールスでやる」と米国、台湾、ベトナム、トルコ、インド、英国などに原発を売り込んだものの、すべて断念に追い込まれ、原発推進政策自体が追い詰められています。
世界の流れにもなっている地域、住民主体の再エネ事業に正面から挑戦し、「災害に備えた安心・安全の自治体・地域づくり」を進め、地域の再生を図るかどうか、統一地方選の大きな焦点です。
食品メーカーが相次いで値上げをしていますので、材料代が上がって経営がさらに厳しくなっています。
うちは免税業者ですので、会社関係のお客さんからインボイスを発行するように言われると非常に困ります。しかし、売り上げが減っている中で、課税業者になることなんかできない。
国はインボイスの導入によって161万の免税業者に15万円の消費税を負担させて“軽減”税率の財源にしようとしています。絶対に許せません。
国保料の引き下げは切実な要求です。家族3人が加入していますが、国保料は所得に占める割合が2割を超えています。
岐阜市は昨年度、国保料を引き上げませんでしたが、2019年度は県が5億円の引き上げが必要と試算し、3月議会で審議されます。制度によって保険料が違うのはおかしい。協会けんぽ並みに国保料を引き下げてほしい。市議会議員選挙でも、争点に押し上げたいと思っています。
広島県連は、県の小規模企業振興条例が定めた「支援団体」として認定されました。支援団体として行政への仕事おこしの提案力を強めるとともに、統一地方選で中小業者の声をしっかり受け止めてくれる議会と議員を選ぶことが地域の確かな振興や仕事おこしにつながると思います。
どの政党・議員が仕事おこしや地域づくりに力を入れているのか。地域を支える中小業者に目を向けているのか。しっかり見極めて、1票を託すことが大切ではないでしょうか。
福島原発事故の被害者にとって大事なことは、裁判に勝利し、しっかりした賠償を勝ち取ることです。同時に原発に頼らない再生エネルギーへの転換を図り、雇用や仕事を増やし、福島を再生することです。
ドイツはチェルノブイリ原発事故から再エネへの転換を図り、雇用も増え、地域の再生につなげています。今、エネルギーを大きく転換させるチャンス。福島の再生だけでなく、日本の構造をも転換させるでしょう。統一地方選挙を、その第一歩としたいですね。
◆4月7日投票日【▼道府県知事選(3月21日告示)▼政令指定都市の市長選挙(3月24日告示)▼道府県議選、政令指定市議選(3月29日告示)】
◆4月21日投票日【▼一般市長選、市議選、東京都の特別区長と区議選(4月14日告示)▼町村長選、町村議選(4月16日告示)】