原水爆禁止2018年世界大会
国際会議宣言

全国商工新聞 第3325号8月27日付

 73年前の8月6日と9日、アメリカが投下した原子爆弾は、広島と長崎にかつて人類が体験したことのない惨劇をもたらした。二つの都市は瞬時にして壊滅し、その年のうちに21万もの人々の命が奪われた。かろうじて命をつないだ被爆者も、放射線などによる後遺症に苦しめられてきた。破滅的で非人道的な結末をもたらす核兵器は、いかなる理由によっても、再び使用されてはならない。広島の地に集った我々は、いまだ人類の生存にとって脅威である核兵器を一刻も早く、完全に廃絶するために行動することを訴える。
 未曽有の豪雨災害をうけた広島の友人たちは、猛暑のなか被災者支援と復旧に力を注ぎながら、たぐいまれな決意と献身によって、原水爆禁止世界大会の開催を可能にしてくれた。我々はそのことに、心からの感謝と限りない連帯を表明する。
 昨年7月7日、国連会議が採択した核兵器禁止条約は、「核兵器のない世界」にむけた人類の歴史的な一歩となった。被爆者を先頭とする市民社会はこの一年間、この条約を力に核兵器の完全廃絶へと前進するために、条約を支持する諸国政府と共同して力を尽くしてきた。
 核兵器禁止条約の発効にむけて、各国の署名と批准がはじまったもとで、禁止条約を推進する勢力と、反対する勢力とのせめぎあいが激しくなっている。
 核保有国は、「核抑止力」が世界の安全に不可欠だと、禁止条約を非難するとともに、核戦力の近代化、核使用政策の強化をはかっている。米トランプ政権は「核態勢見直し」で、核兵器を使用する姿勢をつよめ、新たな「小型」核兵器の開発もすすめようとしている。ロシアのプーチン政権も、新型核兵器の開発と、戦術核兵器の先制使用態勢をつよめている。米ロの核軍拡競争の再燃は、「核抑止力」が安全ではなく、危険をもたらすものであることを明白に示している。核不拡散条約(NPT)の枠内で、核保有国も合意してきた「核兵器の完全廃絶」の「明確な約束」(2000年)やそのための「枠組をつくる特別の努力」(2010年)を否定しようとする動きも見過ごせない。
 しかし、核兵器の完全廃絶を求める流れは、世界の本流としてゆるぎなく発展している。核兵器禁止条約の発効も押しとどめることはできない。核保有国などによる逆流の土台はもろく、そこには未来への展望はない。核兵器の使用を前提とした「核抑止力」が、人類にとりかえしのつかない被害をもたらすことはあきらかである。国連決議の採択結果に見られるように、「核兵器が自国の安全に必要」との議論への支持は、核保有国とその同盟国にとどまっている。「核抑止力」論は、その説得力を失い、破たんしつつある。
 「核兵器のない世界」へと前進する決め手は世論と運動の発展である。世界はいま被爆者の訴えに耳をかたむけている。市民社会の国際的役割が飛躍的に拡大している。核兵器禁止条約を成立に導いた市民社会と諸国政府の共同の力をさらに発展させるならば、さまざまな困難をのりこえ、かならず前進をきりひらくことができる。各種世論調査では多数の市民が禁止条約への参加を求め、数多くの自治体もそうした意見を表明している。核保有国とその「核の傘」のもとにある国々での世論と運動の発展が重要になっている。
 南北首脳会談と米朝首脳会談によって、朝鮮半島の非核化と平和体制の確立にむけた歴史的な動きが開始された。我々はこれを心から歓迎する。原水爆禁止世界大会は一貫して、この危機の平和的解決を求めてきた。一連の動きの背景には、諸国民の反核平和の世論がある。このプロセスをなしとげる根本の力もまた世論である。我々は関係各国が目標達成にむけて、誠実に交渉し、合意を履行していくことを強く求める。朝鮮戦争以来の敵対関係が解消され、北東アジアが平和と非核の「発信地」となるならば、アジアと世界の情勢に大きな、積極的影響を与えるだろう。
 非核地帯の新設、強化、包括的核実験禁止条約の早期発効も、いまなお重要課題である。1995年のNPT再検討会議で核保有国も一致して決議され、2010年の会議でも合意されながらいまだ実現していない、中東非大量破壊兵器地帯についての会議を早急に開催し、この地域の非核化と平和を実現することは急務である。米トランプ政権はイラン核合意から離脱したが、我々はあくまでもこの問題の外交的解決を求める。地域紛争の平和的解決は、「核兵器のない世界」へ前進するうえでも重要である。パレスチナ問題の民族自決権にもとづく公正な解決を訴える。シリア内戦の政治対話による解決にむけ、武力行使と軍事介入の停止と外交努力の強化が必要である。
 我々は、非核平和の日本を求める運動に連帯を表明する。いまほど日本政府に、被爆国にふさわしい役割を発揮することが求められているときはない。ところが日本政府は核兵器禁止条約にかたくなに反対し、失望と批判をひろげている。日本政府は禁止条約にすみやかに署名し、批准すべきである。この問題の根本には、アメリカの「核の傘」=「核抑止力」への深い依存がある。ヒロシマ・ナガサキの悲劇を知る日本こそ、核兵器の使用を前提とした政策を厳しくしりぞけるべきである。「北朝鮮脅威」論を口実にすすめられてきた在日米軍基地の強化は中止されなければならない。我々は沖縄県民に連帯し、その尊厳を踏みにじる辺野古への米軍新基地建設計画をただちに撤回するよう強く求める。戦争放棄と戦力不保持をうたう憲法9条を守り活かした外交こそ、アジアと世界の平和の流れにそった道である。
 「命あるうちに核兵器のない世界を」との被爆者の願いにこたえ、その実現へと世界を動かしていくうえで、世論と運動の発展がいよいよ重要となっている。「核抑止力」論をうちやぶるには、核兵器の非人道性の告発がカギをにぎる。被爆者を先頭とする市民社会が、若い世代とともに被爆の実相をひろげながら、核兵器完全廃絶の緊急性を訴えていくことが重要となっている。
 諸国政府に核兵器禁止条約への参加を求めるととともに、「核兵器のない世界」実現にむけたさまざまな運動や政府レベルの動きと広く連携し、大きく合流させてくことが重要である。市民社会と諸国政府との共同をさらに発展させることが、いっそう重要となっている。
 いまこそ、核兵器に固執する勢力の抵抗をのりこえ、「核兵器のない世界」への確かな道をきりひらく壮大な運動をくりひろげよう。核兵器禁止条約を一刻も早く発効させるとともに、2020年のNPT再検討会議にむけて、これまでの合意を実行し、この条約の定める核軍縮交渉の義務(第6条)と責任をはたすよう核保有5か国に強く迫ろう。北東アジアでは、平昌につづき、オリンピックがあいついで開催される(東京夏季2020年、北京冬季2022年)。朝鮮半島の非核化とともに、北東アジアに平和体制を確立し、世界へ非核・平和を発信する地域としよう。
 我々は、以下の行動を世界によびかける。
--被爆75年にあたる2020年までに世界数億を目標とするヒバクシャ国際署名を中心に、「核兵器のない世界」を求める多様な行動を各国で発展させ、国際的共同をすすめよう。原爆展・被爆証言活動を強化、発展させよう。核軍備強化反対など各国独自の要求とむすんで運動をすすめよう。第73回国連総会での軍縮審議(2018年9~12月)、NPT再検討会議準備委員会(ニューヨーク、2019年4~5月)などを節目に、国際共同行動を発展させよう。
--被爆者への援護・連帯をすすめ、国家補償を要求しよう。核実験被害者の救済を求めよう。あらゆる核被害者、とりわけ東電福島第一原発事故の被災者への支援を求めよう。原発ゼロを求める運動との連帯を発展させよう。枯葉剤、劣化ウラン弾、化学兵器などの戦争被害者を支援しよう。
--地域紛争の平和的解決を求めよう。各国の軍事費の大幅な削減、外国軍事基地の縮小・撤去を求める行動を発展させよう。
--地球温暖化をはじめ環境保護、格差と貧困の解決、生活と福祉の向上、あらゆる差別への反対やジェンダー平等と社会的正義の実現、人権と民主主義の擁護のための運動との連帯と共同を発展させよう。
 核兵器禁止条約の成立は、世界が一部の大国によって支配されるのではなく、すべての国々が対等・平等の立場で、そのあり方を決めていく時代に入りつつあることを示している。市民社会が世論を発展させることによって、国際的に重大な問題でも、その解決に貢献できる時代が訪れようとしている。このことを深く確信して、「核兵器のない世界」へと前進しよう。

 2018年8月4日
 原水爆禁止2018年世界大会-国際会議

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