全国商工新聞 第3354号2019年3月25日付
24時間営業の見直しはコンビニオーナー共通の願いです。業界の健全化は待ったなし。本部と加盟店の契約適正化を図るフランチャイズ(FC)法の制定を求めるオーナーたちに業界の実態などを語ってもらいました。(コンビニ本部は、本部の了解なしにオーナーがマスコミに登場することを認めていませんので、やむなく匿名の座談会になっています。出席者=Nさん65歳、Sさん67歳、Hさん57歳)
N うちの店は日販約65万円、来店者数は1000人弱です。
オーナー仲間6人と日常的に情報交換をしていますが、「24時間営業」をやめて困るというオーナーは一人もいません。オーナーの願いは、「チャージ(ロイヤルティー=売り上げた利益をコンビニ本部と分け合い、本部に支払うお金のこと)を上げないで時短を認めてほしい」です。人手不足は深刻で、深夜の時間帯は相当時給を上げても人は確保できません。コンビニのチャージシステムは24時間営業を前提にチャージ率が決められているので、24時間をやめると2%チャージを上げられてしまいます。4月からは有給取得義務化になりますので、人件費は1割弱アップします。
店の時間ごとの来客数と売り上げ(図)ですが、午前1時~6時は、来客数は約40人、売り上げは数万円にすぎません。店としては完全に赤字です。
経費を抑えたいということから、自ら週に4~5回も夜勤に入っているオーナーもいますが、夜入ると昼のオペレーションが悪くなりますので、オーナーとしてはなるべく避けたいところです。
S うちも同様ですね。1週間分を集計してみましたが、来客は30~40人。売り上げは2~3万円で、赤字です。ワンオペでもこの状況です。
2002年から2010年にかけて、フランチャイズ契約は「現代の奴隷契約」だという私たちの問題告発を端緒に、公正取引委員会が「フランチャイズシステムに関する独占禁止法の考え方」(ガイドライン)を示すなど、いくつかの動きがありました。2009年には「見切り販売の制限」が排除され、さらに2年前には本部がチャージを1%減額するなどの成果も生まれました。
しかし、人手不足や人件費高騰など、私が店を始めた当時から経営環境は大きく変化しています。36年前は、時給420円でしたが、今は800円です。
経営は厳しくなるばかりです。コンビニは今や社会になくてはならないインフラといわれるようになっていますが、「24時間、店を開けている」ことだけを意味しているのではないでしょう。コンビニしか買い物場所がないという地域も増えていますし、最近では災害支援拠点としての役割なども期待されています。店が存続できなくては、それらの役割は果たせません。24時間営業でつぶれそうになっているのです。
N 防犯上から「24時間営業」の必要性がよく言われますが、これは、そもそもコンビニが担わなければならない問題でしょうか。駐在所がどんどん減らされ、交番に人がいないのでコンビニに対応してほしいというのでは行政の責任放棄ではないでしょうか。
H 私の店も深夜の来客は20~30人はいきませんし、売り上げも2~3万円くらい。
オーナーとしては、24時間シフトを維持するという気苦労は大変なものです。心休まる暇がありません。アルバイトから病欠の連絡が入ったりすると、「代わりが見つかるか」「明日の朝は大丈夫か」と常に気を使います。
お袋が「具合が悪い」と言った時にすぐに、病院に連れていってやれなかったことはいまだに悔やまれます。亡くなった時も含め1日も休んでいません。とても人間らしい生活が送れているとは言えません。
S 私の親父が亡くなった時も、フォローはなかった。67歳になった今も週3回、夜11時から朝6時までのシフトに入っています。夫婦二人で36年間コンビニをやってきて、老後の生活の蓄えはありません。Aタイプ(自己所有店舗)の人はどんどん辞めていっています。自己資産がなく、やめたくてもやめられないオーナーが今、残っているのが実情ではないでしょうか。
N 廃棄商品の原価は加盟店が負担するため負担は非常に重いのです。現在は本部も15%負担するようになりましたが。加盟店の経営の安定を図る上では、せめて見切り販売をもっとやりやすくしてほしいと思います。
店の廃棄ロスは1日平均2万円ぐらいにはなります。2009年から見切り販売ができるようになりましたが、手順が面倒で誰もやろうとしない。もっと簡単にできるようにするべきです。
H 本部のテレビ会議でセブンの社長が、この問題に関連し「オーナーの実態を必ずしも十分につかめていなかったのかもしれない」という趣旨の発言をしたという情報も流れています。オーナーの実情が分かっていないと思います。本当に人材確保が難しい。70代のアルバイトもいます。生活に困窮しダブルワーク、トリプルワークの人、過労で体調を崩す人もいます。
そんな人たちをある意味支えています。さまざまな意味で加盟店はセーフティーネットの役割を果たしているのではないかと思いますし、自負もあります。このような役割をもつ加盟店が存続できるよう、ふさわしく支援することが本部の責任ではないでしょうか。
S 加盟店が毎月支払うチャージは、「売上高-売上商品原価(仕入れた全商品の原価ではなく、実際に売れた商品の原価のみ)」×チャージ率(加盟者が土地・建物を用意するAタイプは43%、Cタイプはほぼ60%)という式により計算されます(図)。
人件費高騰などに対応し、加盟店の存続を図るためには、このチャージの引き下げが必要です。
また、この間いろいろな契約上の問題が起こるたびに、政府は中小小売商業振興法や独占禁止法の一部適用で対応しようとしてきましたが、限界は明らかです。業界の健全化と本部と加盟店の契約関係の適正化を図るFC法の制定が必要だと思います。私たちは、この点も強調していきたいと思います。