全国商工新聞 第3352号2019年3月11日付
裁判所前で開かれた集会であいさつする中島孝団長
東京電力福島第1原発事故の被害者約4000人が、国と東電に慰謝料と原状回復を求めた「生業を返せ、地域を返せ!」福島原発訴訟(生業訴訟、中島孝団長)の控訴審第3回口頭弁論が2月22日、仙台高裁(市村弘裁判長)で開かれました。原告3人の本人尋問が行われ、裁判所による「検証」(5月27日実施)の詳細を確認しました。
福島原発集団訴訟の、控訴審での原告本人尋問は初めて。
事故によって、浪江町から二本松市、郡山市と転々した自動車整備工場経営の櫻井良春さんは、避難先で孫がいじめにあったことに触れるとともに「仕事、友人、客との交流、浪江の自然などすべてを失った」と告発しました。
70年間暮らした南相馬市を離れ、福島市に避難し、2016年7月に南相馬に戻った吉田愛子さんは、「近所の人やサークル仲間も戻ってきていない。人がいない。家具職人だった夫はやることがなくて朝からお酒を飲み『死んだら畑に埋めてくれ』と言っている」と涙を流しました。
葛尾村から郡山市に避難した山本幸江さんは「18年4月から月10万円の東電の賠償もストップされた。友達もペットもいなくなった。安心できる生活を補償してほしい」と訴えました。
この日の弁論で原告側は、津波地震による事故は予見できなかった、とする国側主張に対する全面的な反論書面などを提出。
国が申請した専門家の証言をもとに、予見できなかったとする国の主張が誤った事実に立脚していることを明らかにするとともに、避難指示が解除された地域の帰還率などの居住状況、病院や教育機関の再開状況や経済状況などを詳細に調査した数値をもとに「避難指示解除後も、被害はいまだに継続している」と陳述しました。
5月27日に実施される裁判所による「検証」は、浪江町の原告自宅や「帰還困難区域」である富岡町夜の森地区などを回ることなどを確認しました。
裁判に先立って裁判所前の公園で行われた集会には100人が参加。弁護団共同代表の菊池紘弁護士は「安倍内閣は原発を海外に売り込んできたが、すべて破綻した。原発ゼロの大きな流れができてきた。この裁判で決着をつけよう」と呼び掛けました。