東京オリンピックの開会まで60日を切りました。世論調査では「延期」「中止」が8割を超えており、開催を強行していいのかが問われています。
国民には自粛を強要する一方で、大会関係者と選手約10万人もの来日を容認する政府と、「東京に来ないで」と言いながら五輪開催を容認する小池百合子都知事の姿勢は支離滅裂の極みです。
新型コロナウイルス感染症の世界的流行は衰えることなく、日本でも変異株が猛威を振るっています。頼みのワクチン接種も、完了した人の割合は5月25日時点で2・1%と報じられています。米国38・9%、英国33・4%に比べ、桁違いの遅れです。入院できないまま亡くなる悲劇が広がり、コロナ感染による死者は1万2千人を超え、重症者も増加しています。医療崩壊が始まり、人命が危険にさらされる事態です。
マスコミ報道によって「選手のことを思うと『中止せよ』とは言いにくい」という雰囲気がつくられています。一方で、テニスの錦織圭選手は「オリンピックは死者を出してまでも行われることではないとは思う」と発言し、日本オリンピック委員会理事で女子柔道のメダリスト・山口香さんは「国民の多くが疑義を感じているのに、国際オリンピック委員会も日本政府も声を聞く気がない。対話を拒否する五輪に意義はない」と厳しく指摘しています。
外国選手団を受け入れる「ホストタウン」のうち、70以上の自治体が感染拡大の懸念から、交流事業や事前合宿の受け入れ中止を決めています。茨城県の大井川和彦知事は「県民より選手を優先できない」と選手用の専用病床確保を断っています。全国医師ユニオンは「コロナ禍においては安心・安全なオリンピックの開催などありえない」と中止の決断を政府に要請しました。日本弁護士連合会元会長の宇都宮健児氏が呼び掛けた中止要求オンライン署名は20日までに37万人を超えています。
いま急ぐべきは、コロナ対策に力を集中することです。スポーツで生計を立てているなりわいアスリートを含め、生業や生活への保障に万全を期すことであり、五輪開催への固執ではありません。