市民と野党の共同で悪政を転換し、創立70周年記念式典を運動と組織の高揚で迎えよう
一、創立70周年を目前にして
全商連は8月3日、創立70周年を迎えます。結成以来、一貫して、中小業者の苦難に心を寄せ、営業とくらし、権利を守る運動の先頭に立って奮闘してきました。紆余曲折に満ちた苦難と創造の道のりは、日本社会の進歩と発展に貢献してきた歴史であり、運動の成果は、会員の実利実益にとどまらず、広く中小業者・国民全体に還元されてきました。
この間、消費税、社会保障、原発、米軍基地、東京五輪・パラリンピックなど、あらゆる面で大企業とアメリカの意向に従い、民意に背く自民党政治の害悪が誰の目にも明らかになりました。コロナ禍を機に大企業をボロ儲けさせ、中小企業を淘汰しようとする菅政権に国のかじ取りを任せるわけにはいきません。
弱肉強食の新自由主義がはびこる中、憲法と民主主義の擁護・発展、格差と貧困の是正、ジェンダー平等を掲げる市民の運動が発展し、立憲野党との共同が深化しています。
民商・全商連は、改憲・大増税に反対し、「基本方向」を土台に様々な政策を発表してきました。コロナ危機打開の運動をはじめ、全自治体要請や業種別・問題別対策を広げ、組織の前進をめざして奮闘してきました。
各地で繰り広げられてきた地道な運動と成果、到達と教訓を学び合い、実践に踏み出すことが求められています。創立記念日を節目に、11月の70周年記念集会・式典に向けて、要求実現の運動に全力を挙げ、地域に広げた信頼を組織の拡大強化に結実させましょう。
二、要求運動の重点
1、コロナ危機打開へ、政策提案と経営交流の強化を
度重なる新型コロナの感染爆発によって医療提供体制が崩壊し始めています。4月末までに死者は1万人を超え、私たちの仲間も16人が亡くなりました。経済・社会の危機的状況は、PCR検査の抜本的拡充、変異株対策、ワクチン接種、医療機関への財政支援など、打つべき対策を怠ってきた菅政権による人災です。
この間、不十分な国の対応を批判し、「コロナ禍が収束するまで、すべての中小業者を支援せよ」と迫ってきました。日本共産党議員団とも連携して実現した民商関係の持続化や家賃支援の給付金は8万2千件・797億円を超えました。「運転代行業も支援する」「民商の要請を受け、事業主への傷病見舞金を実施」など自治体独自の制度を創設・拡充させ、生きる道を切り開いてきたことは重要です。ウェブを活用した経営交流が業者として生きる意欲を引き出し、新たな挑戦を後押しするなど創意工夫を広げる力にもなっています。
1年を超えるコロナ禍によって、中小業者の苦難と要求は切実さを増し、対面で相談に応じる民商への期待が高まっています。日々変化する状況と支援策などの情報を役員と事務局員が共有し、「誰一人取り残さない」構えで危機打開の運動に全力を挙げます。あらゆる支援策を徹底活用し、経営継続に力を合わせます。SNSによる情報発信を思い切って展開し、親身な相談活動を進め、紹介を広げます。
「持続化給付金の要件を緩和し、規模に応じた額を支給」など全商連の要望は、全国知事会や自民党の一部国会議員の提案とも合致しています。一時しのぎの月次支援金にとどめず、持続化や家賃支援の給付金を改善・再支給するよう要求します。飲食業・観光業への直接支援、雇用調整助成金の特例延長など中小業者の実態と切実な要求に基づく政策提案を強め、継続的な支援を国・自治体に迫ります。
仕事確保、業態転換、資金繰りなど経営環境の激変に対応した取り組みが求められています。民商・県連規模でウェブも活用した経営交流を強めます。
2、応能負担の税制とインボイス中止の共同を
消費税率引き下げを求める粘り強い運動が、与党議員を動かし始めています。自民党の総裁選を争った元幹事長が消費税の見直しに言及し、衆参30人の自民党議員が参加する議員連盟が「10月より3年間、消費税の課税凍結」を提言しました。世界では、58の国・地域が付加価値税の減税を実施し、アメリカやイギリスでも大企業や富裕層への増税で財源を確保する動きが始まっています。
総選挙を念頭に、「消費税率を5%に引き下げ、複数税率・インボイス制度の即時廃止を求める請願署名」で世論を盛り上げます。世界で広がる付加価値税減税の動きをはじめ、コロナ対策や社会保障の財源は大企業や富裕層への優遇税制を正せば確保できることを徹底して知らせます。
国税当局はインボイス制度(適格請求書等保存方式)の実施に向けて説明会を組織するなど、業界団体への働きかけを強めています。中小業者やフリーランスを取引排除の危険にさらし、値引きの強要、新たな消費税負担を迫るインボイス制度の実施を許すわけにはいきません。
中小商工業研究所の調査では、免税事業者の96%がインボイス制度を「実施する前に廃止すべき」と回答しています。日本商工会議所、全建総連、中小企業家同友会、日本税理士会連合会、青色申告会などが公表している要望や提案は、消費税減税に対する態度は違っても、インボイス制度の実施延期・中止で一致できる可能性を示しています。政党では、日本共産党の国会議員が実施中止を財務相に迫り、自民党の一部議員や立憲民主党も実施延期を求めています。様々な業界団体や地元選出の国会議員を訪ね、インボイス制度実施中止の1点署名を入り口に懇談と共同を広げます。
コロナ禍にもかかわらず、人権無視の調査と徴収が後を絶ちません。税務署や自治体に強権的な調査や滞納処分の中止を要求します。納税緩和制度を会内外に知らせ集団申請を推進します。
コロナ感染で、共済会に入院見舞金を請求した会員は4月末で240人に上ります。国保の傷病手当の対象に事業主を直ちに加えるよう自治体に迫ります。傷病手当を実施する自治体への財政措置を継続・拡充するよう国に要求します。国保料・税のコロナ特例減免の活用を強めます。
3、総選挙勝利、平和・民主主義の擁護・発展を
国民投票法の改定をはじめ、監視国家への道を開くデジタル関連法、基地や原発周辺にある住民の土地を収用可能にする土地利用規制法のごり押しなど、「戦争する国づくり」と結びつく危険な動きが強まっています。コロナ危機に乗じて持ち出してきた緊急事態条項は民主主義を否定し、独裁政治を行うための突破口です。改憲で一致する翼賛体制の暴走を許すわけにはいきません。自民党改憲案の危険性を急いで知らせ、改憲阻止に全力を挙げます。
米中対立の深刻化に伴う「台湾有事」が現実味を帯び始めています。日本の軍事的関与を阻止するためにも安保法制を廃止し、立憲主義を回復することが急務です。自己情報を自分でコントロールできる権利の確立をはじめ、個人情報保護委員会の体制を強化・改革するなど、個人情報保護を徹底する地域・社会づくりへの共同を強めます。
コロナ対策での無為無策をはじめ、官僚の接待問題、政治とカネ、女性蔑視発言、学術会議への人事介入、福祉切り捨てと大軍拡など、安倍政権から菅政権へと引き継がれた悪政を一掃できるかどうかも問われています。
4月25日投票でたたかわれた衆参の補選・再選挙では市民と野党の共闘3候補が全勝し、菅政権打倒の可能性を示しました。立憲野党が共同して「持続化給付金の要件を緩和して支給」「原発ゼロ」など60の法案を提出するなど、国会内での共闘も強まっています。立憲野党とその候補者に、新しい政治の選択肢となるよう働きかけを強めます。「改憲発議阻止」「民主主義の再生」「消費税負担の軽減」「感染症に伴う企業への補償」など市民連合が示した政権交代をめざす15項目が共通政策となるよう立憲野党の地元候補者に申し入れ、野党連合政権の実現に向けて総選挙をたたかいます。
核兵器禁止条約が発効して初めて開催される原水爆禁止世界大会や平和大会に期待が高まっています。ウェブでの視聴を組織するなど思い切って参加を広げ、成功に貢献します。核兵器禁止条約を日本政府が批准するよう被爆者と共に運動を進めます。
三、組織建設の重点
1、助け合い相談で仲間を増やし、顕彰基準突破を
3月末までの1年間に、2770人の会員全国増勢を実現するとともに、全ての県連での会員・読者双方の総会時現勢突破をめざして奮闘してきました。4月末時点では、読者で7県連、会員で12県連が総会時現勢を上回っています。
協力金や一時支援金を中心に助け合いの申請相談を進め、消費税の減税・インボイス撤回の宣伝・対話を強めたところで、内外の信頼を高めてきました。
「右手に署名、左手に商工新聞」の取り組みを推進します。70周年リーフを読み合わせ、対話にも活用して、運動の歴史に裏付けられた民商・全商連のかけがえのない役割に確信を深め合います。「民商があって助かった」の思いを多くの紹介に結び付ける取り組みを強めます。
70周年記念式典(11月14日)で会勢の反転攻勢を内外に示すことができるよう、総会時現勢から読者で10%増、会員で5%増の顕彰基準突破に力を合わせます。
2、商工新聞で運動を組織して、悪政を変える力に
「中小業者の大同団結と平和的・民主的日本への貢献」が商工新聞発刊の精神です。読者の役に立ち、勇気を呼び起こし、運動を組織し、理解者を増やして、政治を変える確かな力になっています。また、民商・全商連の運動と組織、財政を統一的に前進させる役割を担っています。
「よく読む」気風を高められるよう、紙面の感想を出し合う機会を設け、紙面を紹介する力にします。「増やす」意義を深め合い、会員一人ひとりの多彩なつながりを、商工新聞との出会いに生かせるようにします。「配達し、集金する」際の声掛けを増やし、読者にも民商の催しや署名への賛同、購読の継続を働き掛けます。「通信・ニュースを送る」活動で双方向の紙面づくりを強め、47都道府県連での民商の頑張りを紙面で紹介できるようにします。
民商・全商連運動の根本の力となる会員拡大での前進に確信を深めつつ、政治を動かす大志を持って、読者前面の拡大を推進します。
3、全会員と対話し、機関会議と班・支部の充実を
多くの民商で仲間が増える一方、春の会員対話は全国で50%弱の集約にとどまりました。「一人の犠牲者も出さない」構えで仲間づくりを進め、「良かったことは人にも勧めよう」の機運を高めます。
全国の民商には、1万人を優に超える三役・常任理事・理事と、その2倍余の班長や支部役員が存在します。感染防止策を講じながら、機関会議と班・支部の連携を強め、活動への自覚的な参加を広げるなら、コロナ禍にも運動と組織の前進を切り開くことは可能です。
事前準備で、実績チラシやアンケート、署名の活用、会員台帳に基づく電話での声掛けや訪問の計画をすすめ、仲間一人ひとりの近況にも心を配って、全会員対話を追求します。総会方針の学習会では制度学習大綱の特別措置を生かし、ウェブ活用や複数回分割での開催も工夫します。民商の成長・発展目標を決め、月サイクルの活動を確立・強化して、計画と実践、検証、改善に踏み出します。
会員の点在を減らし、班や支部への所属を呼び掛けます。新会員に民商への理解を深めてもらえるよう、訪問や新会員歓迎学習会を増やします。
4、総合力の発揮と連合会組織の抜本的な強化を
共済会や婦人部、青年部の活動が強まることで、民商・全商連の運動と組織は豊かに発展し、総合力は発揮されます。
感染拡大を防止する検査や入院見舞金など共済制度の運用改善を知らせ、助け合いの輪を広げて民商健診を促進します。健康実態の告発を強め、医療や介護の従事者たちとの信頼関係も深めて、公助に基づく社会保障確立への国民共同を推進します。
婦人部の活動や女性の商売でのオンライン交流を支援し、業者婦人の役割が正当に評価されるジェンダー平等社会への世論と運動を広げます。助け合い相談やウェブ会議で若手の力を生かし、業者青年に魅力ある民商建設を強めて、運動の世代的な継承・発展を系統的に進めます。
全自治体要請や業種別対策でも、地域と全国を結んだ情報の共有でも、県連の役割発揮が重要です。役員会と事務局の相互理解と団結を強め、ブロック別の活動交流を工夫します。同時に、民商・県連・全商連の意思疎通にウェブを生かせるよう、対応を進めていくことにします。
四、運動の原点に立ち返って
民商・全商連運動は「集まって、話し合い、相談し、助け合って、営業と生活を守る」ことを活動の原点としてきました。今日、コロナ禍にも必死に耐える中小業者を対面相談で励まし、「民商会員で良かった」の声を広げています。助け合いの相談活動を要とも、生命線とも位置付け、中小業者に心を寄せた活動の積み重ねが、運動と組織の前進に生かされています。
新しい全商連会館は、全国の仲間の心温まる募金などによって完成しました。(株)全商連会館で立替えた建設代金の不足分を補うため、創立記念日の8月3日まで募金活動を継続し、目標の総達成をめざします。
6月の全国事務局員交流会や7月の会長・事務局長会議を成功させます。11月の70周年記念集会・式典を心から祝い合えるよう、運動と組織の高揚に力を尽くしましょう。