いま、コロナ危機に乗じて憲法を変えようとする、火事場泥棒のような企てが進められています。
「コロナ感染症対策に迅速に対応する」として、自民党議員が、憲法に緊急事態条項を創設するための改憲を主張。菅義偉首相に至っては、国民投票法の改定案成立を「憲法改正に関する議論を進める最初の一歩」と発言しました。
国民投票法は、第1次安倍政権が2007年に成立を強行したものです。最低投票率が定められていない問題や公務員の運動を不当に制限していること、広告費の上限がなく資金力の多寡によって広告量が左右されるなど、多くの問題が指摘されていました。
こうした根本的な問題を残したまま今国会で成立させようとしている改定案は、18年に改憲論議を進める「呼び水」として提出されました。安倍前首相が憲法9条への自衛隊明記をはじめとする「改憲4項目」を表明した翌年のことでした。
自民党が狙う改憲は9条を変えて、安保法制下の「海外でアメリカとともに戦争する自衛隊」を合法化し、国民の「平和的生存権」を奪うものです。緊急事態に対応するとの名目で基本的人権を停止する「独裁国家」づくりを狙う危険な中身を含んでいます。
民商・全商連は「平和でこそ商売繁盛」を信条とし、憲法の平和的、民主的原則を力に中小業者の営業と生活を守る運動を進めてきました。国民投票法の改定を突破口にした改憲策動は許せません。
コロナ感染の拡大が抑え込めていない中、営業の自粛要請が長期間にわたり、一時しのぎの支援策では先行きが見通せません。政治の優先課題は、改憲ではなく、コロナ対策に全力を挙げることです。憲法25条は国民の「生存権」を保障し、国に「公衆衛生の向上及び増進」を義務付けています。同29条は、私有財産を公共のために用いる場合、「正当な補償」を求めています。憲法理念に基づけば、検査体制の抜本的拡充、ワクチン接種、医療機関への財政支援、自粛要請と一体の補償など、誰一人取り残さない、継続的な支援は可能です。
変えるべきは憲法ではなく、憲法を無視し国民の命と暮らしを軽視する政治です。