コロナ禍の中で、滋賀県東近江市が市税や延滞税の滞納を理由に、持続化給付金や給与が振り込まれた預金口座を差し押さえています。滋賀県商工団体連合会(県連)と湖東民主商工会(民商)は日本共産党市議団とも連携し、強権的な徴収をやめるよう市に求めています。
東近江市で建築関連の仕事をしているKさんは7月31日、持続化給付金100万円が振り込まれましたが、その直後に預金口座にあった117万9335円全額を市に差し押さえられ、固定資産税や市県民税の延滞金(約150万円)に換価されました。Kさんは当時、本税は完納しており、手術が必要な病気で療養中でした。
これまで妻が滞納整理室に出向いて延滞金を少しずつ納めていましたが、4月から担当者が代わり、「こんな金額では、いつになっても払いきれない」ときつく言われ、行きづらくなっていました。
9月2日に相談を受けた田郷正市議(共産)は、税務課に対して「預金全額を差し押さえることはコロナ禍で苦しんでいる業者を廃業に追い込むことになる」「病気で入院中という納税者の状況を全く把握していない」と指摘し、抗議。担当者は「差し押さえ予告通知書が届いてから10日を過ぎているので、どうにもならない」との態度を取り続けています。
派遣の仕事をしていたTさんは9月25日、住宅ローンと光熱費を払うため現金を引き出そうとしたところ、市から約10万円が差し押さえられていました。Tさんの毎月の給与は15万円ほどでした。Tさんは市の税務課に出向いて「半分でもいいので、返してほしい」と訴えましたが、聞き入れてもらえませんでした。
6月にTさんの妻が市の税務課に出向いて分納を相談しました。今年度分の市民税は「徴収の猶予」が適用されたものの、19年度分の固定資産税と住民税を合わせた約13万円について「2~3カ月で支払ってほしい」と迫られました。
Tさんは7月と8月に合わせて約4万円を納めていましたが、市は給与が振り込まれた直後に差し押さえを強行。滞納税金に換価しました。Tさんは、やむなく生活福祉資金を申請し、生活費に充てました。
廣田耕康市議(共産)が税務課に、「国税徴収法に定められている、給与の差し押さえができる金額を超えている」と指摘しましたが、担当者は「口座に振り込まれた段階で預金債権になるので、差し押さえ金額の制限はないと解釈している」「払える能力があると判断した」と話し、強権的な姿勢を崩していません。
県連や民商は引き続き、市と交渉し、議員団も今後、議会で追及することにしています。
コロナ踏まえた対応を 総務省が都道府県に文書
総務省は「新型コロナウイルス感染症の発生に伴い納税が困難な者への対応について」の文書を都道府県宛てに発出しています(3月18日)。滞納者が納税に誠実な意思があり、事業継続または生活維持が困難等の事由があるときは、地方団体の長は職権または滞納者の申請によって換価の猶予をすることができるとしています(地方税法15条の5、15条の6)。
また、滞納者が無財産のときや、滞納処分を執行することで、生活を著しく窮迫状態に陥れる恐れがある場合は、滞納処分の執行を停止することができる(同法15条の7)とし、コロナ禍の影響や財産状況をはじめ、滞納者の個別具体的な実情を十分に把握した上で、適切に対応することを求めています。
国会では伊藤岳参院議員(共産)が「新型コロナ危機の中、命と暮らしを守り、国民みんなで乗り切ろうというときに滞納者への差し押さえは控えるべき」と質問。高市早苗総務相は「差し押さえなどの滞納処分によって生活を著しく窮迫させる恐れがあるときは、地方税法により、執行を停止できるとされている」と答弁しています(4月30日、参院総務委員会)。