政府による「令和時代のスタンダードとしての生徒1人1台端末環境」の整備=GIGAスクール構想が、コロナ禍の中、前倒しで進められています。総務省が作成した標準手順書に基づき、各自治体が入札を実施し、業務委託先を決定していますが、関係業者から「これでは地域の業者は受注できない」と疑問の声が上がっています。
なぜできない分離分割発注
長崎市はGIGAスクール構想について、コンサル会社を指定して教育委員会との間で仕様書を作成し、電気通信事業向け入札(物品・業務委託)としました。長崎市でLAN工事などを営む長崎民商の徳永隆行さん=電気通信工事=は、「学校内のネットワーク環境整備には、校内LAN工事や、無線アクセスポイントや充電保管庫等の設定・設置、コンピューターの設定等などがあるが、大手に一括で発注されており、分離・分割されていない」と疑問を投げ掛けます。
県庁や長崎空港内のLAN工事なども手掛けている徳永さんは、通常のLAN工事が分離発注されれば入札に参加できる資格を有していますが、一括発注されれば受注企業の下請けとして入るしかありません。
長崎市に「なぜ、分離されないのか」と、同市の大石ふみき議員(共産)を通じて問い合わせたところ、「国の補助金(公立学校情報通信ネットワーク環境整備補助金)を活用しており、この補助金は業務を一体的に整備することが要件とされているため」と回答がありました。
「市内の小中学校100校以上を3分割して発注しているが、もっと小さく分割してもらえれば、金額的にも地域の業者が参加しやすくなる」と徳永さんは話します。
これに対し、市は「最小の経費で最大の効果を上げるようにしなければならない」との地方自治法の規定や、年度内の完了を理由に「発注は適切」と強調。「市内業者に対する受注機会を確保するために、参加資格は市内又は認定市内としている」と述べます。
官公需法では「予算の適正な使用に留意しつつ、新規中小企業者をはじめとする中小企業者の受注の機会の増大を図るように努めなければならない」とし、国や地方自治体に対し「必要な施策を講じる」ことを求めています。
徳永さんは「入札参加申請はしたものの入札金額が大きくなるため資金繰りのめどが立たず、辞退せざるを得なかった。9月議会で問題点を指摘し改善を求めていきたい」と話します。
物品・業務委託
自ら対応できない業務を、外部企業や個人のフリーランサーに委託する契約のこと。雇用契約は結ばず、特定の業務を受託者が受託することで契約が成立。事務作業などの完成義務が発生しない「委任契約型」の業務と、成果物の完成責任が発生する「請負契約型」の業務がある。
業務委託契約では指揮命令権が発生せず、受託者の裁量によって仕事が進められるため、クオリティーの担保や公共業務としての適法性・公正性の確保が難しくなる。委託の適正報酬の相場が分からず、報酬も高額になるという問題もある。
コロナ対策の持続化給付金や「Go To トラベル」の業務委託が高額であることや委託内容の不透明さなどが批判を浴び、入札のやり直しなども行われている。