長期滞納者にも保険証 署名や運動が実る
名古屋市は8月24日、名古屋南民主商工会(民商)が加盟する「南区国保料など減免を進める会」との懇談の中で、国民健康保険(国保)の資格証明書について「原則交付しない」(保険年金課長)と明言し、これまでの制裁方針を大転換させたことを明らかにしました。
名古屋市内の民商は他団体とともに「名古屋市の国保をよくする会」を結成し、毎年、国保料の引き下げや、資格証明書交付中止などを求める署名に取り組み、市議会でも日本共産党の議員団が取り上げ、市の姿勢を厳しく追及。こうした運動が実ったものです。
名古屋市はこれまで国保料の納期限から1年以上、経過した滞納保険料がある世帯主を「長期滞納者」とし、制裁として保険証を取り上げて資格証明書を交付してきました。交付数は2019年12月末現在で3157件(国保加入者の約1%)。「よくする会」には「病院に行けない」などの相談が寄せられていました。
厚生労働省は新型コロナウイルス感染症が拡大する中で、帰国者・接触者外来の受診時について、資格証明書を保険証とみなして取り扱うことを通知(2月28日)。これを受けて市は長期滞納者に短期保険証(有効期限10月末)を交付していました。
保険証が切り替わる11月以降の対応について「検討する」と答えていましたが、市は9月1日、「国保料長期滞納者に対する措置取扱要綱」を一部改正し、新型コロナウイルス感染症にかかわらず、今後、資格証明書を交付せずに短期保険証を交付することにしたものです。
健康福祉局は各区に発出した文書(8月26日)の中で、「今回の見直しは資格証明書を交付することが目的化して滞納整理の進捗が見られない案件が散見される」ことを理由の一つに挙げています。資格証明書を交付して制裁を強めても、国保料収納率の向上につながらないことを市自身が認めたものです。
名古屋南民商の三浦孝明副会長=木枠=は「市は一番多い時で4347世帯から保険証を取り上げていた(13年)。その後、若干減ったものの、保険証がなくて病院に行けない人や命を落とす人もいた。『犠牲者を出すな』と言い続けた運動が実って本当に良かった。引き続き、国保制度の改善を求めたい」と話しています。
国保の資格証明書
「特別な理由」がなく国保料(税)を1年以上滞納した場合、保険証の返還が求められ、代わりに資格証明書が交付されます。医療機関を受診した場合、医療費全額(10割)を自己負担し、後日、市区町村に申請することで7割分が払い戻されます。