消費税の確定申告が3月31日に終了しました。「1年分の消費税が、こんなに高いとは…」「『2割特例』が無くなったら、とても払えない」―。税率の上がらない「ステルス増税」である消費税のインボイス(適格請求書)制度に対し、中小業者の怨嗟の声が広がりました。こうした下で、各地の民主商工会(民商)などの地道な運動が実り、3月議会でインボイス制度の廃止や見直しを国に求める意見書が次々と可決されています。昨年12月に埼玉県議会で「国に廃止を求める」意見書を可決した同県では、9自治体で国への意見書が可決され、9自治体で請願が採択されました(趣旨採択含む)。佐賀県議会では、都道府県で2番目となる「インボイス制度の見直しを求める」意見書を全会一致で可決しました。岩手県北上市議会は県内初の「廃止を求める」意見書を可決しています。埼玉県をはじめ、各地の動きを紹介します。
埼玉県 12自治体が可決・採択 民商ら請願や要請など奮闘
埼玉県内では、民商などが提出した「インボイス廃止を国に求める意見書の提出を求める請願」の採択が相次ぎ、本会議での意見書可決も広がっています。
3月議会で「インボイス廃止を国に求める意見書」を可決したのは、越谷、春日部、吉川、八潮、白岡、東松山、熊谷の7市と杉戸、宮代の2町。民商などが提出した請願を採択したのは、越谷、春日部(埼玉土建春日部支部が提出)、白岡(同宮代支部が提出)、上尾(消費税廃止各界連が提出)、東松山、飯能、加須(土建加須支部が提出)、熊谷の8市と杉戸町の1町に達しています。このうち上尾(本会議で意見書が否決)、飯能(請願採択後、意見書を審議した議会運営委員会で全員賛成とならず本会議に上げられず)、加須(趣旨採択)は、国への意見書は上げられませんでした(図)。

越谷市
越谷市議会では3月7日、埼玉東民商と埼玉土建越谷支部が共同で提出した「国にインボイス制度の廃止を求める意見書の提出を求める請願」が総務常任委員会で賛成5、反対2で採択。同18日には、本会議で賛成17、反対14の僅差で請願を採択。立民や共産などの会派が賛成し、自民、公明、維新が反対しました。
本会議の賛成討論に立った市議は「インボイス導入で課税事業者に転じた免税事業者は所得が少なく、さらなる納税負担ができる余裕はない」「物価高騰で大変な事業者が多い中、商工会議所のアンケートでも、インボイス対応で、さらにお金がかかっている」などと発言。「国にインボイス制度の廃止等を求める」意見書も可決されました。
東松山市
東松山市議会では、3月5日の総務常任委員会で、川越・東松山民商が提出した「消費税の適格請求書等保存方式(インボイス制度)の廃止を国に求める意見書」が賛成4、反対2で可決されました。同21日の本会議では、定数21人のうち12人の賛成多数で採択されました。自民、公明、幸福の各会派が反対しました。
民商は、2023年の9月議会に「『消費税インボイス制度』の『実施中止』、『延期』・『見直し』を国に求める意見書の提出を求める請願」を提出。その時は趣旨採択でした。今回の採択は、昨年12月の県議会での意見書可決以降、県内の自治体で広がるインボイス廃止を求める議論を反映したものとなりました。
民商は、申告の時期に重なる2月中旬、春の班会を連日開催する中で、役員が中心になって議会への請願提出にこぎ着けました。
本会議の討論では、請願に反対する議員も「他の商工団体のように2割特例の延長や恒久化を求めたらどうか」などと述べ、インボイス制度の問題点を認めざるを得ませんでした。請願に賛成する議員は「売り上げが1千万円以下の零細業者の9割が事務負担や税負担に苦しんでいる。『フリーランスの会(STOP!インボイス)』のアンケートでは、2割特例がある今でも、借金したり、自分の貯蓄を切り崩して、消費税を払っているのが現状だ。今後、特例が無くなれば、物価高騰につながり、全ての市民への負担となる」などと主張。その後、国への意見書も可決されました。議会傍聴に参加した野口光男副会長=農業=は「本会議でも、可決されて、うれしい。他の自治体の励みになる」と語りました。
熊谷市

熊谷市議会は、議会最終日の3月18日、民商や土建、新日本婦人の会、農民連、年金者組合が連名で提出した「インボイス廃止の意見書を国に提出することを求める請願」を、賛成14、反対13の賛成多数で採択しました。同4日の環境産業常任委員会では、賛成2、反対3の賛成少数で不採択となったものの、本会議では逆転採択の結果に。自民会派と公明党などは反対しました。その後、国への意見書も可決されました。
民商は、従来の3・13重税反対統一行動実行委員会の枠を超え、新日本婦人の会にも呼び掛けて請願を提出しました。
委員会での不採択を議場で目の当たりにした、民商の杉山正春会長=屋根工事=は委員会後に、請願の紹介議員になってくれた保守系最大会派のベテラン議員に改めて声を掛け、本会議での賛成を要請するなどロビー活動を展開。本会議の採決で、その議員が会派を賛成でまとめてくれる(維新系の2議員は棄権)などの動きを作りました。
本会議には、請願を連名で提出した団体から25人(民商から13人)が傍聴に駆け付けました。逆転採択の瞬間には、声を上げられない傍聴席で、参加者が互いに顔を見合わせて喜びをかみ締めました。
杉山会長は請願の採択を受け、次のように話します。
「会派回りや議会での討論でも、インボイスの軽減措置や経過措置に理解を示す議員が増えていることを実感した。県議会での意見書可決の影響があるとはいえ、自民党系最大会派の議員が紹介議員になり、本会議でも賛成してくれ、情勢の大きな変化を感じた。議会の様子を傍聴し、消費税そのものに疑問を持っている議員がいると感じた。今後は、消費税廃止を求める請願も進めていきたい」
佐賀は自公も賛成し 北上市は岩手県で初めて
佐賀県
全議員が提出者
佐賀県議会は3月17日の本会議で、自民、公明を含む全会一致で「インボイス制度の見直しを求める意見書」を可決しました。都道府県でインボイスの廃止または見直しを求める意見書が可決されたのは、埼玉県に続き2県目です。
議会への意見書提出を検討する会議で、共産党の武藤明美県議や立民系会派の「県民ネットワーク」の藤崎輝樹議員が同意見書の提出を主張。全会派に共同提出を呼び掛け、全議員が提出者として名前を連ねました。
佐賀・鳥栖市、東京・小金井市
「廃止」の意見書
県議会が「見直し」の意見書を可決した佐賀県の鳥栖市、東京都小金井市の3月議会でも、それぞれ、「インボイス制度の廃止を求める意見書」を可決しました。
岩手・北上市
賛成多数で可決
岩手県の北上市議会は3月21日、議員発議による「インボイス制度の廃止を求める意見書」を賛成14、反対11の賛成多数で可決しました。自民党系会派と公明党は反対しました。意見書は立民系会派の議員が提出し、共産や無所属の議員らが賛成者として名を連ねました。
大阪・吹田市
自民党も賛成に
大阪府の吹田市議会は3月24日の本会議で、共産党議員らが提出した「インボイス廃止を求める」意見書を賛成18、反対15の賛成多数で可決しました。
意見書の提出者には、共産党議員2人とともに、参政党議員1人も名前を連ねました。
同意見書には、自民党も賛成。維新と公明党が反対しました。
