裏金事件の根強い批判を反映し、過去最多の9人が乱立した自民党総裁選が繰り広げられています。候補者の「公約」で見逃せないのは、早期の憲法改正を掲げていることです。自民党の憲法改正実現本部は2日、「論点整理」を発表しました。政権を投げ出した岸田文雄首相は、憲法改正を「新しい総裁にもしっかり引き継ぐ」と改憲姿勢をアピールし、候補者に競わせています。
2018年に自民党憲法改正推進本部(当時)が出した「たたき台素案」では、憲法「9条の二」を設けて自衛隊を明記するなど、4項目の案を示しました。論点整理では①自衛隊明記②緊急事態対応―の2項目に絞って議論を進めるとし、「必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として自衛隊を保持する」ことを明記しようとしています。自衛の措置には「集団的自衛権の行使」が含まれ、他国が武力攻撃を受けた際、日本が攻撃を受けていないにもかかわらず、武力行使が可能とされます。
15年に成立した戦争法(安保法制)では、「日本の存立が根底から覆された事態に武力行使ができる」との解釈が示されました。その際にも政府は、憲法9条があるため、フルスペックの集団的自衛権の行使や海外での全面的な武力行使はできないとしてきました。憲法に自衛隊を明記することで、無制限の武力行使ができるようになります。
緊急事態対応については、大規模災害以外に、武力攻撃やテロ・内乱を含み、国会議員の任期延長や、内閣が緊急政令を国会に諮らず制定することなどを議論しようとしています。
多くの国民は憲法改正を望んでいません。NHKの世論調査(9月6~8日)では、自民党総裁選で最も議論を深めてほしいのは「年金・社会保障」37.7%、「経済・財政政策」26.4%、「政治とカネ、政治改革」16・6%であり、「憲法改正」は2.9%にすぎません。
新首相の下で、早期の解散総選挙も取り沙汰されています。政治を変える最も良い方法は、自民党政治を終わらせることです。めざすべきは戦争する国ではなく、国民や中小業者の生活を中心に据える政治です。国政の革新に力を合わせましょう。