今日から始める自主記帳③「建設業と製造業の自主記帳」|全国商工新聞

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 第3回目は、前回までの自主記帳の意義・記帳方法について、「建設業」と「製造業」に即して、より具体的に解説します。
 まず、白色申告・青色申告ともに、日々行われる取引の原始記録の保管から始めます。預金通帳、売り上げ請求書、材料請求書、外注請求書、現金領収書、クレジットカード領収書・明細書などになります。これらの書類を月別または種類別にまとめ、その金額を集計していくことが記帳となります。
 注意が必要となるのは、いつの売り上げ・費用なのか?ということです。現金商売の場合は、現金入金即売り上げ集計ということが多いです(現金売り上げと言います)。しかし、建設業や製造業の場合は、工事や商品の引き渡しと同時に現金が入金されることは少なく、通常、掛け売り上げが発生します。
 よくある間違いは”売り上げが入金された時に売り上げとしてしまう”ことです。売り上げを計上する時期は、入金された時ではなく、商品や製品の引き渡しがあった時になります。費用についても同様に、材料代を支払った時や外注費を支払った時ではなく、その材料や外注費の引き渡しが行われた時に費用を認識します。これを「発生主義」と言います。
 期末の仕入れや外注費などの売上原価は、必ず売り上げに対応して計上しなければなりません。期末に残った商品や材料の在庫や仕掛かり中となった工事費用は、その分に対応する売り上げが計上されていませんので、これらはその時の費用とせず、仕入れ等から除いて、棚卸し資産に計上し、正しい売上原価を計算します。

【建設業の記帳方法】

 建設業の売り上げは工事の請け負いになりますが、売り上げの認識は工事が完成した時(工事完成基準)、長期工事の場合は工事の進捗(工事進行基準)に合わせて売り上げを計上します(仕訳例①)。翌月、その代金が入金された時は、売り上げの計上ではなく、売掛金の入金とします(仕訳例②)。
 仕入れや材料費、外注費についても同様に、その取引が発生した時に費用を認識します。材料や商品を仕入れた時、外注の仕事をやってもらった時になります。具体的には取引先からの請求書に基づき、その月の経費にします(仕訳例③)。翌月、その代金を支払った時に買掛金の支払いとします(仕訳例④)。
 この他の人件費、ガソリン代、高速代、家賃、交際費などの費用は支払金額で集計し計上します。これらの集計ができますと、年間の売り上げ・経費が集計でき、利益がどの程度でているか把握することができます。

 【製造業の記帳方法】

 製造業の売り上げ・仕入れを認識するタイミングは建設業と同様となります。製造業の注意点は、費用に計上した仕入れや外注費などのうち、棚卸し資産に該当するかどうかを、しっかり把握することになります。商品製造における粗利を知ることができること、どこに費用がかかりすぎているのかを知ることで自己の課題解決を図ることにつながります。
 正しい売上原価を算定するためには、期末に実際の在庫に当たって、期末棚卸し高を計算します。棚卸しの金額は最後に仕入れた単価により集計をします(最終仕入れ原価法、仕訳例⑤)。また、期末に仕掛かり中の製品があれば、その原価を仕掛かり品として棚卸し資産に計上します(仕訳例⑥)。
 棚卸しは、税務調査においても問題となる項目になります。期末に発生していた仕入れや外注費に係る売り上げが、翌年に引き渡し、売り上げ計上となっている場合です。この場合の仕入れや外注費は売り上げに対応していないため、棚卸し計上漏れとして修正申告の対象となってしまいます。

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