国保料滞納で東淀川区役所に民商と要請 差し押さえ42万円を解除|全国商工新聞

全国商工新聞

「職人さんに給料払える」 
大阪・東淀川民商 Kさん=内装工事

 大阪・東淀川民主商工会(民商)のKさん=内装工事=は、コロナ禍や物価高の影響で大阪市の国民健康保険(国保)料240万円を滞納。同市の東淀川区役所に銀行預金140万円全額を差し押さえられましたが、民商とともに区役所に粘り強く要請し、差し押さえ禁止財産の10万円と外注費などの経費32万2千円の合計42万2千円を解除させました。Kさんは「これで商売も続けていけるし、職人さんにも給料が払える」と胸をなで下ろしています。

売上金の入金日に口座が0円に…

 数年前の税務調査で追徴を受け、その納付が負担となり、国保料が滞納となっていたKさん。加えて、昨年から地方の現場が多く、家を空けることが度々あり、区役所からの通知に目を通せずにいました。
 そんな中、売り上げの入金日(2月20日)に預貯金を確認すると、残高が0円になっていました。「まさか、区役所が全額を差し押さえるなんて…」と言葉を失いました。
 「預貯金が0円では食事もできず、職人に給料も払えない。経費も支払えない」と途方に暮れたKさんは、インターネットで「国保滞納問題」を検索。全国商工団体連合会のホームページにたどり着き、地元の東淀川民商に「預金全額を差し押さえされた」と相談。2月25日に入会しました。
 民商では翌26日、稲冨元樹事務局長が同行し、区役所に差し押さえ解除を要請することに。事前の作戦会議で「まずは、自分の反省すべき点を認識しよう。その上で生存権を主張し、差し押さえ解除を迫ろう」と意思統一しました。
 区役所では、応対した職員が「差し押さえの解除はできない」「解除の要件は全額納付」との回答に終始。Kさんは「大阪高裁判決で『生活費までは差し押さえできない』という判断が下されている。経費も支払わないといけない」(別項に解説)と帳面も示しましたが、平行線をたどり、物別れに終わりました。

換価の猶予申請 国保料の完納へ

 諦めきれないKさんは、再度要請することを決意。要請前日、稲冨事務局長が区役所で「Kさんは売掛金が入金された数時間後に預貯金を差し押さえされており、区役所は意図的にそのタイミングを狙った。全額を差し押さえるのは違法だ。Kさんの商売をつぶす気か。このままでは今後、収納できるはずの国保料も入らない」と生存権を改めて主張しました。
 その結果、翌3月1日、Kさんと稲冨事務局長に対し、担当職員から「申し入れのあった金額を解除します」との回答がありました。
 Kさんは「自分の至らなさを反省し、今後は民商で学習して、税金にも国保料にも真正面から向き合いたい」と決意し、残った国保料は「換価の猶予」を申請し、頑張って納付することにしています。

別項 差し押さえ禁止財産の国税庁通達

 国税庁は、差し押さえ時の留意点として「実質的に(差押禁止の)給付金の支給を受ける権利を差押えたと認められるような処分をしない」よう促した大阪高裁判決(2019年9月26日)を受け、翌20年1月31日に、通達「差押禁止債権が振り込まれた預貯金口座に係る預貯金債権の差押えについて(指示)」を発出しました。
 「実質的に差押禁止債権等を差し押さえたものと同視できると認められる場合には、差押可能部分以外の部分については、差し押さえを行わない」と正式に指示し、差し押さえに当たっては、①預貯金債権の入出金状況を調査・把握すること、緊急の場合には事後に調査を行い、差し押さえが適切と認められない場合には差し押さえ解除する(国税徴収法第152条の2)②入金が差押禁止債権等の振り込みのみである場合および、前記以外の振込入金である場合であっても、実質的に差押禁止債権等を差し押さえるものと同視され得るときには、差し押さえ可能部分以外の部分については差し押さえを行わない③実質的に給料等を差し押さえるものと同視され得る場合における当該預貯金債権の差押可能金額は、徴収法76条1項各号の合計である差し押さえ禁止額を控除して算出する④差し押さえた預貯金の取り立ては、原則として差し押さえた日から10日間程度の間隔を置いた上で行う―と指示しています。

購読お申込みはこちらから購読お申込みはこちらから