東日本大震災で「グループ補助金」(中小企業等グループ施設等復旧整備補助事業)を活用したものの、その後、倒産に追い込まれた事業者は宮城・岩手・福島の3県で145件に上ります。そのうち、補助金の返還を迫られた割合は42%に及ぶといいます。
グループ補助金は東日本大震災を機に作られました。当初は大企業のグローバル展開を支えるサプライチェーンが認定の大半でしたが、「生活と生業の再建」を求める世論と運動が高揚し、被災業者たちの尽力もあって直接支援として生かされてきました。
申請時の補助目的に沿って事業を継続していれば、補助金を返還する必要はありません。しかし、補助金を使って買い入れた施設や設備を売却・処分すると原則、残価の補助金相当分の返納を求められます。暮らしと商売の再建も道半ばの下で、この画一的な対応に被災業者から悲鳴が上がっています。
NHK仙台放送局も8日、ウェブ特集で「補助金が被災企業の”足かせ”に」と報じました。補助金でスピード復旧した水産加工会社は、補助金で購入した魚の選別機がさび、制御基板の不具合も修理しながら使っていますが、買い替えた場合は数千万円の返還となり、二の足を踏んでいるといいます。補助金で再建した旅館は、大震災から2年後に別の場所で営業を再開したものの、相次ぐ台風での建物への浸水や「三陸鉄道」の不通、原材料・燃料費の高騰で立ち行かなくなり、破産するしかありませんでした。介護施設への事業転換を考えたものの、「別の目的での使用」も補助金の返還を求められるため、これも断念せざるを得ませんでした。
「生活と生業の再建」というグループ補助金の趣旨を生かすためにも、被災業者の経営努力を評価・考慮し、返還する補助金の減額・免除を図るとともに、循環型地域経済の確立へ事業転換にも対応する措置を確立するべきです。
能登半島地震に対応する「なりわい再建支援」も同様の補助金返還ルールが設定されていることは見逃せません。しゃくし定規な運用を見直し、被災業者の再挑戦を励ます施策に改善させることを求めていきましょう。