「2024年度税制改正大綱」をどう見るか 消費税減税はしないと宣言|全国商工新聞

全国商工新聞

 自民・公明の税制調査会が12月14日に取りまとめ、同22日に閣議決定された2024(令和6)年度税制改正大綱では、所得税・個人住民税の定額減税の実施や、賃上げ促進税制の強化などが打ち出されました。今回の大綱をどう見るのか、益子良一、菅隆徳両税理士に聞きました。

将来の軍拡増税を示唆し

税理士法人コンフィアンス 税理士 益子 良一さん

 2024(令和6)年度与党税制改正大綱では、物価上昇を上回る賃金上昇の実現を最優先課題とし、「新しい資本主義は、賃金上昇はコストではなく投資であり成長の原動力であると大きく発想を転換」して、「その趣旨を税制改正の中で明確に位置付けた」としている。
 それを受け、令和6年の所得税・個人住民税の定額減税として、納税者および配偶者を含めた扶養親族1人につき、令和6年分の所得税3万円、同個人住民税1万円の減税を実施するとし、さらに賃上げ促進税制を強化する等の税制改正を打ち出している。
 しかし定額減税の事務負担を事業者に負わせるなど事業者に過重な負担を強いている。
 また賃上げ促進税制強化策にしても、一部大企業は別として、経済が成長しない中で中小零細事業者にとっては賃金を上げることもできず、その恩恵を受けることができるか疑問である。
 ところで税制改正大綱の中に、「次期戦闘機の共同開発に係る国際機関の設立のための国際約束の締結を前提に、その国際約束に基づき保税地域から引き取られる物品に係る消費税を免除する」と、消費税の免税を織り込んでいる。
 日本経済を停滞させてきた要因の一つが消費税の増税で、消費税の増税が行われるたびに国民の実質所得は大きく損なわれ、物価高と相まって私たちの暮らしに大きな影響を与えている。諸外国では、すでに消費税率を引き下げることで景気対策等を行っている国もある。
 消費税率を引き下げることによる減税、さらには「労多くして益がない」インボイス制度は廃止すべきであるという国民の声に対し、政府与党は「絶対に消費税減税はしない」としている。そのような中で、軍事に関する物品については、さりげなく「消費税を免除する」としているのである。
 さらに増税に関しては、「防衛力強化に係る財源確保のための税制措置については、令和5年度税制改正大綱に則って取り組む。なお、たばこ税については、…3円/1本相当の財源を確保することとする。あわせて、令和5年度税制改正大綱及び上記の基本的方向性により検討を加え、その結果に基づいて適当な時期に必要な法制上の措置を講ずる趣旨を令和6年度の税制改正に関する法律の附則において明らかにするものとする。」と、将来の増税を示唆している。
 予算案と関連するので、税制法案の修正は難しいと言える。しかし通常国会では、この税制改正大綱に基づいて閣議決定された法律案について徹底的な論議が必要である。

大企業優遇税制をさらに

不公平な税制をただす会共同代表 税理士 菅 隆徳さん

 岸田首相は「所得税減税」を打ち出しましたが、内閣支持率は下がりました。5年間で43兆円の「防衛予算」を決めているのだから、国民はその先の増税を見抜いているのです。
 昨年12月14日に発表された自民・公明与党の税制改正大綱ですが、物価高に苦しむ国民が望む消費税減税には一言もふれず、大企業優遇税制を拡充する施策が数多く盛り込まれました。消費税導入から34年間で、法人税と所得税は減税で減収となり、消費税は3%から10%へ増税で大幅な増収となりました。大企業と富裕層はうるおい、中小企業と庶民は苦しく、格差社会が拡がっているのです。この税の不公平をただし、大企業と富裕層には応分の負担を求める、それを財源に社会保障や教育の充実を図ることです。この所得再配分こそ、今の税制に求められています。
 ところが日本の税金の現実はどうでしょうか。2期連続史上最高益を上げた大企業です。ほとんど税金を払っていないのです。利益上位20社の税負担の状況を公開された有価証券報告書から分析しました(図)。本来の税負担率である法定実効税率は約30%ですが、各社の実際の税負担率は、トヨタ自動車16・8%、三菱商事2・3%、日立製作所7・4%、三井物産2・0%、日本郵船0・2%と低く、平均も14・0%にとどまっています。なぜでしょうか。巨額な法人税減税が行われているためです。研究開発や受取配当金などに係る大企業優遇税制です。
 「大綱」の大企業優遇の更なる上乗せは、①大企業には賃上げ増に応じて法人税減税、赤字の中小企業は置き去り。②電気自動車1台売ったら40万円の減税など「戦略分野」の生産・販売への減税。③研究開発した知的財産の売却益への減税など。「税金は能力に応じて負担する」、これは自民党も分かっているのですが、企業献金があるので、財界の望む税制に歪められています。


 >> インボイス即時廃止を 全商連 与党「2024年度税制改正大綱」に談話

購読お申込みはこちらから購読お申込みはこちらから