自主記帳で商売に展望 手書きの青色→パソコン会計→法人決算へと進化 将来見据え新業態に挑戦|全国商工新聞

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自主記帳について語る中村さん(画像一部加工)

 民主商工会(民商)と共に、自主記帳・自主計算に磨きをかけ、手書きの青色申告書からパソコン記帳へ、そして法人決算へとまるで“昇り竜”のように進化し続ける会員がいます。鳥取民商副会長の中村真司さん。鳥取市内で運送業と遊漁船(釣り船)を営む「合同会社なかむら」の代表です。

遊漁船と中村さん

 父親の代からの運送業を引き継ぎ、遊漁船を始めたのを機に2年前、法人化しました。現在は従業員2人と、ダンプカー2台と一般貨物を運行。鳥取や島根の建設現場などへ土砂の運搬や残土の搬出を行い、貨物を輸送しています。10人乗りの遊漁船「天真丸」に釣り客を乗せて、鳥取名産のシロイカ釣りやマダイ釣りに出航します。
 父親の代は、会計や申告は税理士に任せっ放し。自身が会社に入る数年前に税務調査に入られ、数百万円の追徴課税を受けました。
 二十数年前に父親から事業を承継した後、民商会員だった伯父から「民商に入らんか」と諭され、入会。川本善孝事務局長(当時)に、記帳・申告のやり方を、みっちり仕込まれました。「ごっつう、ええかげんやったけどな(笑)」。当時は20代後半で、右も左も分らなかったと振り返ります。

民商事務所にPC持ち込み

パソコンを前に語り合う中村さん(左)と浜野弘典事務局長(画像一部加工)

 最初は、手書きの青色申告書からでした。貸借対照表は不要で、10万円控除を受けることができました。その後、会社の事務所にパソコンを導入。初代のデスクトップパソコンはまだブラウン管モニターの時代でしたが、それは雷に打たれて破損。2台目で液晶モニターのデスクトップになりました。3代目でようやく持ち運びできる中古のノートパソコンを導入。民商事務所に持って行き、「これは、どこに入れるんかいの?」と気軽に相談できるようになりました。パソコン会計に取り組み、貸借対照表も作成し、65万円控除を実現しました。
 法人化した今は、クラウド会計を導入し、煩雑な会計書類も作成します。「打ち込むだけで、詳しいことは、ちんぷんかんぷんやけどな」と謙遜しますが、毎月の事業の実績はちゃんと数字で把握しています。
 民商の浜野弘典事務局長は、「中村さんは民商事務所によく相談に来ます。『ここは、こう入れればいい』とアドバイスすると、それを繰り返し繰り返し反復する。そうやって、記帳のやり方と知識を身に付けてこられました」と目を細めます。「今では、『記帳や申告は、やっぱり自分でやらないかんの』と言うように。副会長として会内に自主記帳・自主計算・自主申告の機運を広げています」

お金の流れを正確につかみ

 自ら記帳に取り組むことで、運送業界の内実や業界の将来にも目が向くようになりました。運送業者が荷主や元請けから、いかにダンピングされているか。車の修理や燃料代に、どれだけの経費がかかっているか。自らお金の流れを追うことができるようになりました。
 運送業界は今、「物流の2024年問題」に立ち向かっています。「解決の鍵は、ドライバーの賃金をいかに引き上げるかだけど、荷主や元請けの力が圧倒的に強い業界の慣行そのものを正さないといけない。でなければこの先、ますます先細ることになる」と熱く語ります。
 将来を展望し、どうやったら暮らしを支えられるか。遊漁船という新たな業態にチャレンジしたのも、その考えからです。
 「ダンプか、遊漁船か。どちらかの一本やりでは、これからはやっていけない。自分で記帳と申告をやり始めて、そうした分析ができるようになったな。税務署から何か聞かれても、自分で答えられるようになったしな」。自らステップアップしてきた自主記帳・自主計算の歩みを確かめるように語りました。

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