燃油高騰に中小業者が悲鳴 ガソリン税凍結・消費税減税を!|全国商工新聞

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 ガソリン、軽油、ガス、化学製品…。ロシアによるウクライナ侵略や円安の影響で、原油・天然ガス由来の燃料や製品の高騰が止まりません。そのしわ寄せが最も深刻なのは、運送業やクリーニングなど、燃油や石油製品の使用量が多い小規模事業者です。各地の民主商工会(民商)の会員など、燃油高騰に苦しむ人たちの声を聞きました。

【運送関連】1回の給油3千円増長野・須坂北信濃民商の会員ら地域間格差にも悩み

一日の仕事を終え、ダンプカーを点検する長野県内の運送業者
(右)長野県内のガソリン価格表示(左)新潟県内(同じ日に撮影、画像一部加工)

 ガソリン、軽油など、燃料費の高騰が続く中、都道府県別の平均で最も高い価格を常に競っているのが長野県。加えて地域間格差もあります。「長野県内でも一番高い」といわれる県北部を訪ねました。
 飯山市で米穀専門の卸業を営む須坂北信濃民商会員のFさんは、3トントラックを使い、農家から主に規格外米(くず米、中米)を買い取るのが仕事です。
 「8月には、近辺の現金価格はガソリン1リットル200円近く、軽油180円近くにもなった。政府の”負担軽減策”が発表され、9月にわずかに下がったものの、商売を圧迫していることに変わりはありません」
 飯山など長野県北部の相場は、県平均と比べ、さらに1リットル5円程度上回っています。「石油ターミナルのある港から遠い内陸」というのも理由の一つです。
 9~10月は稲刈りの季節。長野県北部から新潟県の上越・中越地方の米どころを1日100~200キロ走ることも。燃料費の高騰は経営を直撃しています。

県境で20円の差

 一方、北隣の新潟県では、長野市や飯山市周辺と比べ、ガソリン、軽油とも1リットル当たり約20円も安くなっています。「山を越え、片道10~20キロ走っても、新潟まで給油に行く」という人も出てきました。
 「燃料代は、コロナ禍前と比べ1・5倍くらい。新潟に集荷に行った時、なるべく給油するようにしていますが、仕事ですから、そう都合よく事は進まない」と、Fさんは話します。
 県境に近い長野県側のガソリンスタンドで、店主の話を聞くと―。
 「毎日100~200キロ走る営業車だと、1リットル20円の差は大きい。トラックなどは、新潟など安い地域に行った時にこまめに給油し、暑くても休憩中はエンジンを切ってエアコンを止めるみたい。通勤も、乗用車でなく、低燃費のバイクを使う人が増えた気もする」

生活に食い込む

 荷が重く車体が大きいダンプカーの燃費は、軽油1リットル当たり3~4キロと、さらに悪くなります。300リットルの燃料タンクを備えているとはいえ、1日で半分ほど使い切ることも少なくありません。県北部の山間部で砕石の運搬に携わる男性が言います。
 「燃料費が10円高くなると、1回の給油で3千円も出費が増えます。加えて、タイヤ、オイル、修理部品や修理代の高騰もある。もらう日当は変わらないので、ますます生活費に食い込んでいきますね」
 複数のダンプを所有する別の業者は、燃料費を切り詰めるため、他県の燃料小売り業者と遠隔で契約し、月単位の「一律価格」で給油できるよう工夫しています。それでも、今年3月から8月にかけて軽油1リットル当たり17円も急激に上昇したため、「手の打ちようがなくなった」と嘆きます。
 「さらに安いスタンドを探すにしても、移動できない山の中の現場だと、配送料を払って給油に来てもらわざるを得ない。このままでは、燃料費の高い場所では仕事ができなくなり、燃料費の安い地域に引っ越しするしかなくなります」

直接の軽減策を

 ガソリン価格に占めるガソリン税の割合は42%を超え、米国の3倍以上ですが、政府の物価対策補助金は石油元売り企業に支払われます。今、国民や中小業者の負担を直接軽減する対策が求められています。須坂北信濃民商会長の宮川光男さん=自動車修理販売=が訴えます。
 「ガソリン税の暫定税率(当分の間の税率)を廃止し、”二重取り”している消費税率を引き下げてもらうしかない。もちろん、原油高をもたらしているロシアのウクライナ侵略を止め、円安をなんとかしないと根本的な解決にはならないでしょう」

【クリーニング】ガス代など月2万円増 大阪・布施民商 Kさん

衣類をプレスするKさん(左)と息子さん(右)

 大阪府東大阪市「MKクリーニング」は、この場所で店を開いて34年。丁寧な仕上げと顧客対応で評判のクリーニング店です。
 布施民商会員のKさんと夫、息子夫妻の4人で同店のほか支店2店を経営しています。

前年比200万円減

 「売り上げは1千万円を少し超える程度。消費税を払わないかんから、かなわんな」。カウンターの中からKさんは語ります。背後には作り付けの2段のハンガーパイプ。その上段に仕上げ品はかかっていませんでした。「景気が悪くなる前は、上も下も処理済みの衣類でいっぱいやった。それが今は見ての通りや」
 コロナ禍で広がったリモートワークでサラリーマンが背広を着なくなりました。外出の機会が減り、女性が”よそ行き”の服を着る機会も減りました。対面でのやり取りを避ける傾向は、なじみのお客をコインランドリーに向かわせています。結果、クリーニング店への持ち込みは激減。今年の8月決算の売り上げは前年比で200万円減。コロナ前と比べて400万円ほど減りました。

軒並み値上がり

 加えて、物価高騰です。衣類のしわを伸ばすプレス機にかかる電気代と、スチームを噴出するボイラーを沸かすガス代などは原油高の影響で毎月2万円増。ドライクリーニング用の石油系溶剤(ゾール)やプラスチックハンガー、仕上げ品を覆うビニールなども軒並み値上がりしました。集配の範囲は狭いとはいえ、営業車のガソリン代も月3千円ほど増えました。
 さらに、消費者の節約志向の高まりで、家庭での洗濯で済ます人が増加。クリーニング店から客足を遠ざけています。
 大手クリーニング会社の取次店の出店が相次ぎ、安売り競争も強まっています。クリーニング組合に加盟する市内のクリーニング店はこの30年の間に、40店舗から十数店舗に減りました。「長いことクリーニングやってきたけど、今ほど、しんどい時は、あらへんわ」
 「これ以上、銀行からは借りられへん。何とか切り詰めて、一生懸命やっているけど、もうからんから腹立つ。経費だけは出ないと困るしな」。今は、衣替えのシーズンの10月に客足が戻ることを期待しています。

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