インボイス実施中止に 全中連 中小業者決起集会
「政府の”インボイス強行突破”に『言いなりになりたくない』と静岡から参加。来て良かった。仲間のエネルギーを集めれば、変えられる」「みんな、生活ひっぱくが逼迫してるから、消費税は減税に」―。全国中小業者団体連絡会(全中連)は9月14日、東京都内で「9・14全国中小業者決起集会」を開き、全国から集まった505人が声を上げました。「インボイス制度の実施中止」や「現行の健康保険証を残して」など5万3千人分を超える請願署名が寄せられました。集会に先立ち、財務省、国税庁など8府省庁や国会議員への要請を行い、物価高騰に苦しむ中小業者の苦境を訴え、直接支援と予算措置などを求めました。
全中連 中小業者決起集会
主催者を代表し、太田義郎代表幹事(全商連会長)があいさつ。「岸田改造内閣が発足したが、ガソリン代値上げなどによる国民の苦しみに背を向け、ロシア問題を口実に大軍拡競争に突き進んでいる」と告発し、「平和でこそ商売繁盛、外交の力で安心して暮らせる社会をつくるのが政治の責任だ。インボイス制度、マイナ保険証などの中止へ、ともに頑張ろう」と呼び掛けました。
農民運動全国連合会常任委員で千葉県船橋市で野菜農家を営む斎藤敏之さんは「農家の圧倒的多数が免税事業者だ。JT(日本たばこ産業)による葉タバコの買いたたきが問題になったように、多くの農家がインボイスで悩んでいる」と述べ、「物価高、資材高で新規就農は最低水準。大軍拡で農業予算も減らされた。”ミサイルを食べて生きていけるか”だ。皆さんと頑張る」と表明しました。
加盟団体から保団連、FC協、全商連が決意表明。保団連理事の馬場一郎さん(歯科医師)は「マイナ保険証の誤登録は、インボイスと並ぶ社会問題で、医療現場は大混乱だ。保団連のアンケートでも、15%が自己負担割合の登録が間違っている」と現状を語り、「インボイスは中止、保険証は残せ、で頑張りたい」と力を込めました。
FC協の河合章副会長は「経産省はガイドラインを口実に、FC規制法の成立を拒んでいる。最賃引き上げでは、コンビニ本部は何もせず、オーナーの利益が減るばかりだ。インボイスへの対応でも、コンビニ加盟店は仕入れ先と直接取引している建前だが、実際には請求書も領収書も何ももらえない」と訴えました。
全商連常任理事で、京都市内でスナックを営む久保田憲一さんは「顔見知りのママに会ったら、久しぶりに店を開けると言っていたが、普段はパートに出ている。円安や物価高で業者が廃業の危機に立つ今こそ、手厚く支援すべきだ」と政府の対応を批判しました。全中連に連帯する業界団体のスピーチに大きな拍手が送られました。
住江憲勇代表幹事(保団連会長)が閉会あいさつ。「命や健康、暮らし、営業より軍事を最優先する自公政権と、その補完政党による政治を変える”大きなうねり”を地域からつくり出そう」と呼び掛けました。
日本共産党の小池晃参院議員が国会情勢を報告。同じく田村貴昭衆院議員が連帯あいさつしました。
【別項】業界団体から連帯
正しく理解し一緒に反対を
インボイス制度の中止を求める税理士の会 税理士 菊池 純さん
消費税インボイス導入は税率を上げない大増税だ。登録すれば、消費税の申告や延滞税、差し押さえ、倒産などのプレッシャーが生じる。「上から登録するよう言われている」という事業者の話を聞いてみると、その中身は誤解も多く、一緒に反対しようと呼び掛けている。
署名50万集め突き付けたい
インボイス制度を考えるフリーランスの会 フリーライター 小泉 なつみさん
9月4日に国会議員らに「インボイス中止を求める」署名36万人分超を手渡した。インボイスをおかしいと思った時、全商連ホームページで署名用紙を見なければ、私は立ち上がっていなかった。運動を続けてきたことに感謝したい。署名50万人分を首相に突き付けたい。
みんな不幸の制度は中止に
出版ネッツ 樋口 聡さん
デザイナーやカメラマン、編集者らフリーランスの組合で、「春闘宣言」では20世紀からほぼ変わらない報酬を上げるよう求めた。物価高騰で生活が窮迫し、やめる人もいる。インボイスが追い打ちをかけるのは確実だ。誰も幸せにしない制度は中止にしてほしい。
商売成り立つ政治にしよう
「生業を返せ、地域を返せ!福島原発訴訟」(生業訴訟) 原告団長 スーパー経営 中島 孝さん
8月24日から、福島第1原発の汚染水が海に流された。長期的な安全性を誰も検証せず、抜本的な対策を取ろうともしない。政府は、権力や金でメディアや国民を押さえ付けている。信頼を踏みにじる東電の姿勢を改め、私たちの商売が成り立つように変えさせよう。
8府省庁に物価高騰などの苦境訴え
財務省・国税庁 命令制度の制約徹底 「税務署に周知する」
財務省では、消費税のインボイス制度の10月実施延期や5%への緊急減税、「納税者権利憲章」制定などを求めました。「下請けの職人の消費税を、かぶらねばならない」(福岡)、「制度が複雑で、申告で大混乱が起きる」(奈良)、「税務職員が乱暴な言動で強権的な徴収を行い、納税者の権利侵害が横行」(静岡)などと訴えました。
省側は、消費税は”預かり金的”な税と述べ、「インボイス制度も問題ではない」と延期を拒否。「憲章制定よりも実利が大事で、今までも納税者サービスと利便性の向上に取り組んできた」と強弁し、憲章制定にも背を向けました。
国税庁では、勝手な修正申告の押し付けや犯罪捜査まがいの税務調査などの事例を告発。「『質問応答記録書の署名は任意』と納税者に事前に説明せよ」との要請に、庁側は「署名は任意であり、強要と受け止められないようにしたい」と述べ、「署名に応じなかったからと、不利益な扱いはしないと徹底する」と回答。「税務調査は納税者の理解と協力に基づくものであることを徹底したい」と繰り返しました。
庁側は、税務相談停止命令制度について①相談内容が、脱税や不正還付を指南するかどうかの要件の該当性を個別に判断②納税義務の適正な実現に重大な影響を及ぼすことを防ぐために緊急措置を取る必要があるかどうかを具体的な事実関係に基づいて判断する―と回答。「二重の制約」と行政手続法に基づく「弁明の機会の付与」があると認め「各税務署に周知し、法令に基づいて適切に対処する」と明言しました。
経産省・中企庁・エネ庁 物価高に直接支援を 「適当でない」と応じず
経産省・中企庁・資源エネルギー庁では、物価高騰下での中小業者への直接支援策の創設や脱炭素化に取り組む業者支援、消費税インボイス制度に登録しないことを理由にした不公正取引を許さない対策などを求めました。
広島県連の寺田拓也事務局長は、県内で独自に取り組んだ営業動向調査(2558人分)を示し、「小企業・家族経営ほど、物価高騰分を価格転嫁できていない。事業継続のため、直接支援を」と訴えましたが、中企庁取引課は「高騰した原材料費などを補てんするのは、持続可能性の観点から適当でない。賃上げや不公正取引の是正などで価格転嫁しやすい環境を整えたい」と述べるにとどまりました。寺田事務局長は「急激な物価高騰は、新型コロナの影響が続くさなかに起きており、手を貸さなければ、環境が整う前につぶれてしまう。今の苦境をしのげる支援を」と重ねて求めました。
長崎県連の徳永隆行会長は、太陽光発電事業者の「九州電力が太陽光発電の出力を制御し、十分な収益を確保できない」との声を紹介。一方的な出力制御を行わないことや減収分の補償などを求めました。
内閣府 臨交金の継続拡充を 「国として一律支援必要」
内閣府では、地方創生臨時交付金の継続・拡充や、物価高騰の影響を受ける中小業者への支援策の実施を求めました。
府側は「新型コロナの5類移行に伴い、平時に戻すべきとの議論もある。物価高騰は、全国で同様に起きており、国として一律の支援が必要」との認識を示しつつ、「具体的には、秋に取りまとめられる予定の経済対策次第」と回答しました。
京都市から参加した土木業者は、山科民商が取り組んだ実態調査アンケートを手渡し、「コンクリートなど資材が高騰していることは発注者も分かっているはずだが、見積もりを出しても単価は上がらず、赤字になる」と苦境を訴え、「自治体による直接支援があれば、ありがたい」と臨時交付金の継続実施を求めました。
金融庁 最大限柔軟な融資を 「支障ないよう万全を期す」
金融庁では、コロナ禍の影響と物価高騰にあえぐ中小業者に対し、最大限柔軟な資金繰り支援を行うことなど7点を要請。庁側は「新規融資や条件変更について、最大限柔軟な対応を取るよう金融機関に要請してきた。事業者の資金繰りに支障が出ないよう万全を期す」と回答しました。
製造卸の参加者は「卵は2~3倍、砂糖や牛乳も7~8割値上げした。融資を借りやすく、借り換えしやすいようにしてほしい」と訴え。庁側は「返済期間・据置期間の延長や借換、資金融資による事業者支援を明記した『中小企業活性化パッケージNEXT』を踏まえた事業者支援の徹底について」と題した文書(昨年9月)が活用されており、その立場は変わらないと回答しました。
損保代理店を営む参加者は「損保大手が一方的に決め、規模が小さい代理店ほど不利になる手数料ポイント制度に対し、代理店264者が7月、公取委に排除措置命令を出すよう申告した。金融庁として指導を」と求めると、「保険会社に一方的にならないようなポイント制度の検討を働き掛けていく」と応じました。
厚労省 国保滞納処分改善を 「権限ない」に批判相次ぐ
厚生労働省では、診療報酬などの引き上げや新型コロナ対策に関連した財政措置などを要望しました。
介護報酬引き上げに関しては、「介護事業所を営んでいるが、負債が積み上がり、借金しか残らない」(兵庫)と参加者が実態告発。「(介護報酬は)包括的に決めている」との回答に、「介護事業所の昨年の倒産数は、閉所を含めると500カ所弱にもなる。しっかり議論してほしい」と求めました。
国民健康保険(国保)の滞納処分では、「納付相談中に市から一方的な差し押さえを受けた。虚偽の合意文書も作成され、一向に改かがみが善されない」(岐阜県各務はら原市)という訴えを紹介。厚労省国保課は「徴収権限は自治体にある。厚労省として自治体を指導したり、通達を出すことはない」と説明。参加者から、「現場に寄り添う対応を。引き取って内部で確認してほしい」との批判が相次ぎました。社会保険料の滞納処分でも「暴言や脅迫まがいの対応がある」(神奈川)などの実態告発がありました。
健康保険証存続を求める要請に対しては、「(マイナ保険証の)メリットを広く知らせていく」と回答。参加者から「私たちにメリットは一つもない」(京都)といった発言が続きました。
総務省 滞納処分は実情見て 「丁寧な相談が基本」
総務省では、納税者の実情を無視した地方税の滞納処分を行わないよう自治体への指導を強化することなどを求めました。
省側は「滞納整理は、滞納者の個々の事情を的確に把握したうえで臨むことが基本」とし、「自治体向けに、毎年、丁寧に相談に応じるよう通知を出している」と答えました。自治体が行うマイナンバーカードの取得を促す事業への交付金をやめるよう求めたのに対して「今年度末までに全国民にカードを交付することが政府方針」と強弁しました。
自治体の納付相談窓口で「換価の猶予の書類を置いていない」「納付相談継続中に、マンションが差し押さえ」などの人権無視の滞納処分の実例を告発。省側は「国税で徴収猶予が受けられた人なら、その書類を地方団体に示して相談を」
「支払い能力があれば、差し押さえせず、事業の継続などを踏まえて判断することが望ましい」と述べました。
国交省 不払い代金に指導を 改めて相談を約束
国土交通省では、住宅関連資材への助成制度の創設や社会保険料等の負担軽減、下請け工賃への不払い問題への対応等を求めました。
省側は、物価高騰等への支援制度として「『こどもエコすまい支援事業』に取り組んでいる。経済状況や住宅価格を注視し、意見も踏まえて今後を検討したい」と回答。参加者からは制度継続とともに、小規模事業者が活用できる新制度創設を求めました。
建設業界の人手不足解消に対しては、厚労省の「建設事業主等に対する助成金」の活用が呼び掛けられました。
大分の参加者は、下請け工事代金の不払い事例を報告。省側は後日、改めて相談に応じることになりました。
全中連
1972年10月発足。中小業者の繁栄と生活の向上を図るため、中小業者団体の協力と連絡を図り、運動を促進することを目的としている。全国商工団体連合会(全商連)、全国保険医団体連合会(保団連)、全国FC加盟店協会(FC協)の3団体と、42都道府県連絡会が加盟。