2023年版 中小企業・小規模企業白書を読み解く(下)持続可能な地域づくり 業者の役割が注目され|全国商工新聞

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駒澤大学名誉教授 吉田 敬一さん

 小規模企業白書の第2部のタイトルは「地域課題を解決し、持続的な発展を遂げる小規模事業者」となっており、第1章では地域密着型小規模企業への期待が表明されています。まず自治体の立場から見て、直近4~5年で地域課題の解決と小規模事業者の役割の必要性は「とても高まっている」が15.6%、「高まっている」が66.5%と極めて高いことが注目されます(図1)。

信金信組と連携し 資金の地域循環を

 第2に金融機関の視点から5年前と比べた支援の優先度では「とても高まった」が9%、「高まった」が43%で合わせると過半数となっています(図2)。その際、小規模事業者の相談相手として大きな役割を占めている地域密着型の信金・信組等との連携強化で資金面でのローカル循環の強化が求められます。

 第3に事業者が地域課題の解決に取り組んだきっかけでは「地域の持続可能性を高めるため」が70.6%で、「自社ブランド価値向上につながる」が59.6%で、持続可能な地域づくりと営業努力の強化とが一体化されていることが注目されます。なお事業主の重要視する地域課題を年代別にみると、高齢業者では病院・買物等の生活インフラ低下への対応や住民組織の担い手不足への対応が若い世代より高く、また効率的なサービス提供や設備投資でも若い世代に匹敵する水準にあり、新陳代謝論による高齢者営業の淘汰政策が的外れであることが、うかがえます。自然環境や歴史、生活文化などの地域特性を生かした多様性と持続可能性を地域で生み出すのは、市場原理に基づく成長志向の営業だけでは実現不可能であり、地域に根差したバラエティーに富んだ中小商工業です。
 この点は第3節の商店街の分析でも確認されます。地域社会は資本ではなく、住民のためのものであり、日常生活の中で多様な出会い・ふれあいとコミュニケーションの場を生み出すのが「24時間市民」である自営業者の集合体である商店街です。
 小規模企業白書で求められるのは、自営業を中心とした小規模企業の経営難の根源を解明し、その対策を国と自治体の役割に応じた分担で示すことと、白書で欠けているローカル循環力の強化です。また白書では無視されていますが、時代遅れの企業誘致策ではなく、リフォーム助成などの自治体主体の内発的発展を可能にするため、国が財源と権限の自治体への委譲を進めるべきです。

自治体に声を届け 支援制度の拡充を

 全商連が昨年11月に全国の自治体を対象にした物価高騰支援策実施状況調査では、支援制度を検討する際に重視したこと(複数回答)について、担当部署の議論(67.6%)、首長の意見(64.9%)とともに事業者・事業者団体の意見(66.8%)が上位三つを占めており、民商運動の重要性が高まっています。


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