岸田文雄政権が10月から強行しようとする消費税インボイス制度に対して、民主商工会(民商)や「STOP!インボイス」(インボイス制度を考えるフリーランスの会)の奮闘で、各地の6月議会で中止、延期・見直しを求める意見書が続々と採択されています。一方、自民党や公明党は、この意見書に反対し否決するとともに、「インボイス制度の円滑な導入を求める」意見書の採択を進め、インボイス中止の声にあらがっています。
奈良県天理市 全会一致で意見書採択 天理民商 市議訪ね共感広げ
奈良県天理市は6月26日、「インボイス制度導入の延期・見直しを求める意見書」を市議会本会議で全会一致で採択し、政府に送付しました。
意見書を巡っては、天理民商が村木敬市議(共産)を紹介議員として「中止・延期を求める意見書」採択を求める請願書を提出。インボイス制度を考えるフリーランスの会からも「延期・見直しを求める意見書」採択を求める陳情書が送付されていました。議会運営委員会は、双方の文案をすり合わせた形で意見書の原案を作成し、本会議へ提案しました。
本会議での意見書採択に先立ち、民商の田中幸子副会長=写真店=と桐山陽介会計=測量・設計、霜鳥純一事務局長らが各会派の市議と懇談。「物価高騰で苦しむ業者に追い打ちをかけるインボイスを止めてほしい」と訴えました。懇談には、前出の村木敬市議も同席しました。
「令和の会」では、山田哲生、藤本さゆり両市議が応対し、山田市議は「私も青果の卸売をしているので、皆さんの要望はよく分かります」と話しました。「清風会」では、市本貴志市議が「私も実家が写真店をしていたので、皆さんの気持はよく分かります。写真屋さん、頑張ってください」。鈴木洋市議も「娘が漫画家で、インボイスの対応で困っている」と打ち明けました。田中副会長らは「共感が得られて良かった。天理市から、インボイス中止・延期を発信したい」と期待を寄せていました。
意見書採択後の今月3日の理事会では、この活動を振り返り、千田健会長=建築=ら6人が「中止の文言が入らなかったのは残念だが、採択は大きな成果だ。議員訪問に取り組んだかいがあった」などと話し合いました。6月には「インボイス登録が必要になった」と入会する業者も現れ、引き続き、インボイス対策の運動を強めることを確認しました。
埼玉県、広島市など 自民、公明が画策し 「円滑導入」の意見書
「インボイス制度の円滑導入を求める」意見書は、埼玉県や広島市で採択されました。埼玉県では、埼玉県商工団体連合会(県連)も加わる消費税廃止埼玉県各界連による「インボイス制度の中止を求める」意見書を提出できないように妨害し、「円滑導入」の意見書が採択される事態も生まれました。
埼玉では、各界連がインボイス中止を求める意見書採択をめざし、県議会の各会派を訪問。自民党県議団とも懇談し、民商会員の現状やインボイス制度の問題点などを伝えていました。その後、自民党側から意見書を出すので、「中止を求める」意見書を見送るよう打診があり、提出の締め切り日に改めて自民党側の「延期」との見解を確かめ、各界連側は提出を見送りました。
その間、自民党は意見書の中身を、採決される最終日(7日)まで公開せず、各界連側は意見書提出の道も閉ざされた上に、結局、「延期」とはほど遠い「インボイス制度の円滑な導入に向けた事業者支援の強化等を求める」意見書が7日、自民党などの賛成多数(共産党と「無所属改革の会」は反対)で可決されました。
各界連の中村稔事務局長は、自民党側が策を弄して円滑導入の意見書を採択したことについて、「大変残念だが、意見書にインボイス制度の問題点などが明記されたことは、署名活動などを広げてきた民商などの取り組みが自民党を追い込んだとも言える。改めて、9月議会に『インボイス制度の中止を求める意見書』を提出したい」と述べています。
広島市は6月30日の市議会本会議で、広島民商などが求め、日本共産党議員団らが提出した「インボイス制度の中止・延期を求める意見書」は自民、公明などを中心とした各会派の反対で否決。自公などが提出した円滑導入を盛り込んだ「インボイス制度に関する意見書」が可決されました。