大手損害保険会社が、損保代理店の主な収入源である手数料を一方的な評価で変動させ、代理店の経営を脅かす「手数料ポイント制度」。制度導入から20年を迎え、改めて、その改善を求めるシンポジウムが6月30日に大阪市内で開かれ、「(株)岩瀬保険サービス」を営む全国商工団体連合会(全商連)の岩瀬晃司副会長はじめ、長野や岐阜などの民主商工会(民商)会員ら127人が参加しました。主催は、大阪損保革新懇・代理店プロジェクト。
同会の世話人で兵庫県立大学客員研究員の松浦章さんが基調報告。損保会社による「代理店ポイント制度」や「乗り合い拒否」などの改善をめざしてきた代理店プロジェクトの15年間の運動の到達と成果を強調し、「諦めず、声を上げ続ければ“山は動く”。顧客本位の損保代理店制度の実現に向け、広く社会に発信しよう」と呼び掛けました。
パネリスト3人が発言。関西合同法律事務所の喜田崇之弁護士は「代理店手数料ポイント制度は、独占禁止法上の優越的地位の濫用に当たる」と述べ、「代理店ポイント制度を考える会」として7月に、200人以上が合同で公正取引委員会に申告を行う取り組みを報告。長野市の代理店「アイル(株)」の赤羽豊喜さん(長野民商会員)は、2022年10月から、自然災害などにも支払われる火災保険の契約で、住宅物件について、近年の豪雨災害の頻発などから「復旧義務規程」が加えられた問題を発言。「保険会社は『合理的理由があれば住宅復旧に使わなくても保険金を支払う』としているが、要は保険会社の裁量に委ねられている」と批判しました。「日本リスクコンサルティング(株)」の関西亨さんは、保険会社が代理店の整理淘汰を進める下で、「南海トラフなど大規模災害時に、地域の代理店が無ければ、対応は不可能になる」と告発しました。
日本共産党の小池晃参院議員がこの間の国会質問に触れつつ、「手数料ポイントは強きを助け、弱きをくじくもの。一緒に変えよう」とあいさつ。同じく大門実紀史前参院議員が「民間対民間の取引だから問題ないと言うが、手数料ポイント導入の責任は金融庁にある」と述べ、連帯してたたかう決意を表明しました。
岩瀬副会長は「地域のセーフティーネットとして損保代理店の果たす役割は大きい。小規模代理店の経営を成り立たせるためにもポイント制度は早急に見直すべきだ。公正取引委員会への申告人の1人として私も参加し、保険会社の『優越的地位の濫用』を正して、顧客本位の損保代理店制度の実現をめざしてたたかいます」と感想を語りました。
手数料ポイント制度
損保代理店の主な収入源である損保会社からの手数料が、損保会社が定める基準によって一方的・大幅に変動する制度。以前は、一定の基準を満たせば一律で約20%だった手数料が、基準手数料にポイントを乗じて手数料額が決まるポイント制度によって、20~130ポイントの格差が生じるようになった。
乗り合い拒否
A社の代理店が、B社の保険商品を扱うことを認めないこと。