各地の民商でも 相談窓口開設や自治体要請など
「キャンセル続出で売り上げが激減」「資金繰りの見通しが立たない」など新型コロナウイルス感染拡大の影響は、観光・宿泊業にとどまらず幅広い業界・業種へと拡大しています。全国商工団体連合会(全商連)は4日、実態調査に基づき、政府に緊急要請を行い、支援策の拡充を要請しました。各地の民主商工会(民商)でも「緊急相談窓口」(京都)の開設や、自治体要請などに取り組んでいます。
観光客が激減し営業継続が困難
新型コロナウイルスの感染拡大により、観光関連・宿泊・飲食業界はキャンセル続出などの直撃を受けています。
給料も払えない
「緊急事態宣言」が出された北海道では、「すでに数千万円相当のキャンセルが入っており、日本政策金融公庫に融資(セーフティネット)を申し込んだが、『申し込みが殺到しているため1カ月半かかる』と言われた。従業員の給料も払えない」(札幌北部・旅行業)、「観光客の激減で、固定費の支払いも滞りそう。緊急事態宣言による外出自粛は相当痛い。地元客も激減している。助成金とか補償とか何かしらの援助がなければ、商売を畳まざるを得ない」(小樽・飲食)、「3月の宴会予約がことごとくキャンセルに」(小樽・飲食)、「2月からホテル関係や旅行会社の仕事がすべてキャンセル。3月以降は学校関係も含めてすべての仕事が無くなった」(北見・観光バス会社)など悲鳴が上がっています。
キャンセル続出
石川県加賀市の温泉ホテルは、「昨年消費税が10%となり、忘年会・新年会など例年を下回る予約状況で、1月分の社会保険料を滞納した。『2月の連休の現金売り上げで納入したい』と連絡したが、待てないと言われ、資金をかき集めて払った。そこへ新型コロナ。毎月1千人程度の宿泊客が来る中、2月は250人、3月は300人がキャンセルに」と民商に相談。
「銀行の借入金は金利だけの支払いにしてもらっている。仕入先や取引業者には手形・先日付小切手を発行しているが決済が非常に厳しい。税金も滞納し、社会保険料も今後払える見通しがない。既往債務の借り換え融資を受けて何とか続けていきたいが、借りられるか不安で眠れない。借りても返していけるかどうか。据え置き期間の金利支払いもきつい」と助成金などの創設を求めています。
一斉休校で被害 政府は責任取れ
安倍首相が独断専行で打ち出した全国小中高一斉休校の要請も混乱と被害を拡大しています。
給食食材で損失
広島県福山市で精肉店を営み学校給食用にも納入している業者は「3月2日納品の若鳥50キロのスライス、3月3日納品の牛肉30キロのスライスがキャンセルに。冷凍保存するしかない。通常なら3月に納品して、4月に入金になるが、蓄えを吐き出して対応するしかない。全校休業はあまりに唐突」と政府の対応を批判します。
東京都江東区で学校給食食材を納品している業者は、「突然3日後から休校と言われ、3月分の注文は10校分が全部キャンセル。売り上げ全体の7割を占める。経費分くらい助成してもらえるのか」と損失補償を求めます。
卒業式なくなり
葛飾区の映像業者は「保育園、小学校の卒園式、卒業式、結婚式のキャンセルで3月だけで80万~100万円」と見積もります。また、ケータリング業者は「卒業、お別れ会、謝恩会など、今年度はすべてキャンセルに。2、3月は売り上げが0円」と無利子融資および補助金などを求めています。
資材・部品なく仕事ができない
建設資材・各種製造部品などが入らないので「仕事にならない」「納期に間に合わない」などの事態は全国各地で発生しています。
「ユニットバス、システムキッチン、便器等が中国製なので今後工事の遅れが出てくると予想され、業績悪化を心配」(東京・建設業)、「中国から墓石が入ってこなくなり、仕事ができない」(神奈川・墓石)。「中国からの部品がストップしてしまい、入荷の見通しが立たない。1年で一番自転車が売れる時期なので本当に困る」(神奈川・自転車うるし修理販売業)、「中国産の漆が今後品薄になって、値段上昇も考えられる」(京都・仏壇製造)、「中国からの材料が入らず仕事が完全にストップ」(京都・入れ歯)、「中国にある工場が閉鎖されているため、資材が入らなくて工事ができなくなっている」(大阪・空調)、「鉄工関連の材料が手に入らない。今は在庫で何とかしのいでいるが先が見えない」(大阪・鉄工)、「オール電化住宅に不可欠な給湯器の大半が中国製で全く入ってこない」(大阪・建設)、「トイレが入荷しなくて仕事が止まっている」(兵庫・水道工事)など。
緊急要請で政府動かす
無利子・無担保融資創設へ
安倍晋三首相は7日、政府の新型コロナウイルス感染症対策本部の会合で、同ウイルスの感染拡大に伴い売り上げが激減した中小・零細企業向けに「実質無利子、無担保の融資を行うこととする」と表明しました。
10日に第2弾の緊急対応策として公表を予定しているもので、「個人事業主も融資の対象にする」と言明しました。
全商連は、4日の緊急中小企業庁要請で、売り上げが激減している中小業者に対する「資金繰り支援を強めること」などを求めていました。
同要請には、太田義郎会長、岡崎民人事務局長ら5人が参加。太田会長は「消費税増税で景気が悪化し、あらゆる業種で景況が悪化している。その上でのコロナ問題だ。小中高の一斉休校で直接・間接の被害が広がっている。5千億円規模の資金繰り対策では足りない。大規模な支援を」と訴えました。
中山眞常任理事が、全商連がこの日までに掌握したコロナ感染症の影響について資料に基づき報告し、「新型コロナウイルスの感染拡大による経済的影響から中小業者の経営を守る緊急対策に関する要望」(別項)の実現を求めました。
中小企業庁の奈須野太事業環境部長は「思いは同じ、頂いた要望の実現にむけ頑張っていきたい」と語り、雇用調整助成金の特例措置の拡大を紹介しました。その他の要望事項についても「当庁の権限でできることはできる限り柔軟に対処していきたい。また、関係省庁にも要望は伝える」と答えました。
また、自営業者・フリーランスの休業補償にも前向きの考えを示しました。