確定申告をした人は2018年度分が約2221万人で、そのうち納税した事業所得者は約168万人です。また、所得税の税務調査(実地)は18年7月~19年6月の1年間で約7.3万人に対して実施されています。これらの人数から実地調査の割合は約0.3%となりますが、実地調査の相手は事業所得者が多いことから、実際の調査割合はこれよりも高くなります。
税務署が納税者に接触する方法は大きくは実地調査・実地調査以外の調査・行政指導の三つです。
まず、行政指導(表の①、②)は、突然税務署から送られてくる「お尋ね」や「お伺い」といわれるものが該当します。行政指導は納税者の任意の協力によるもので、従わないことを理由に不利益な取り扱いはできません。「お尋ね」や「お伺い」の文書が届いても、すぐに回答せずに民商の仲間に相談するとよいでしょう。期限が設けられても、税務署の都合で目安を書いているだけなので、これにも従う必要はありません。
次に税務調査は、国税通則法で「必要がある場合」にしか行えないとされています。網羅的に「帳簿書類や原始記録を見せろ」という調査官もいるようですが、これでは何の「必要がある」のか分かりません。調査の必要性や目的を納得いくまで聞きましょう。
実地調査の場合は、納税者に対して一定の事項が事前に通知されることになっています。これを事前通知(表の③)といい、調査を行う手続きとして国税通則法に規定されています。調査の連絡と事前通知は電話によることがほとんどですので、しっかりと聞いて対応しましょう。
一方で、突然税務署から「〇〇税の調査について」という文書が送られてくることがあります。この文書には事前通知事項などの法的根拠がありませんので、税務署に呼び出して調査する実地調査以外の調査(表の④)であると考えられます。事前に調査なのか、行政指導なのかを明らかにさせましょう。
最後に、調査が終わり、確定申告の内容に訂正箇所があれば、修正申告するか更正処分を受けるかを選びます。国税庁の税務調査FAQでは修正申告の勧奨を断っても、修正申告に比して不利益な更正処分はしないとあります。
税務調査の内容に納得ができた場合のみ修正申告の勧奨に応じることにしてください。
(税理士・佐々木淳一)