「コロナ禍と物価高騰に苦しむ中小業者に、地方創生臨時交付金を活用した“手厚く、使い勝手の良い支援策”を」―。岐阜県商工団体連合会(県連)は、県内全21市への訪問・懇談を決め、11月2日までに全21市と懇談、延べ118人が参加しました。全21市との懇談は昨年に続いて2回目です。臨時交付金を原資とした支援制度の創設▽消費税インボイス制度についての認識▽国民健康保険(国保)コロナ減免の周知徹底―など5項目を要請しました。鈴村吉富会長=建設=はじめ、県連三役は分担して、全ての行動に参加。「この活動は、他の業者団体ではできないこと。絶対続けていかなければ」と確信を深めています。
地方創生臨時交付金を原資とした中小業者支援では、多くの市で「交付金を原資とした支援制度は執行し切れなかった」との声が聞かれ、追加交付金を原資に新しい施策を策定中との回答でした。
岐阜県が物価高騰対策として創設した「地場産業支援金」は、「地場産業」の枠が狭く、実際に使える業種が限られる“使い勝手”の悪い制度となっています。各自治体に対して、「県の制度に当てはまらない事業者への直接支援を」と独自施策の実施を要望しました。恵那市では、独自の物価高騰対策支援を策定したものの、1カ月の光熱費・燃油代が10万円以上からが対象となるなど、小規模事業者が使いにくい点を指摘。「多くの事業者が活用できるようにしてほしい」と改善を求めました。
交付金の活用法として、全商連が行った内閣府への要請に対する回答も示して、県内3市(本巣市、可児市、美濃加茂市)が実施している住宅リフォーム制度や商店リニューアル制度の創設を求めたのに対し、飛騨市では22年度、「工事費100万円以下は補助率5分の1(上限20万円)、100万円超で補助率3分の1(上限50万円)」と県内で最も高額の助成金を実施していることが明らかとなりました。
消費税のインボイス制度が実施されれば、地域にどんな影響を及ぼすと考えているかをただすと、多治見市の古川雅典市長は「消費税の零細事業者への影響については承知している」と明言し、職員への周知を約束しました。一方で、「(消費税は預り金だと)消費税法を勘違いしていた」(各務原市)、「こんな深刻な影響があるとは、考えていなかった」(土岐市)など制度自体が理解されていない状況が明らかに。入札参加資格についても「(公営事業・特別会計)発注業者にインボイスの提出を求めることを、検討せざるを得ないと思う」と答えた自治体が多く、総務省の通知(10月7日付)を示して、インボイス無登録の中小業者を排除しないよう求めました。
民商任せを反省 兵庫の実践学ぶ
県連は、全国で自治体要請が提起された8年前から、各民主商工会(民商)が毎年「担当エリア内の自治体を訪問して懇談する」ことを確認してきましたが、“民商任せ”では一向に進展しないことを反省。兵庫県連が全自治体訪問に先進的に取り組んでいることが商工新聞や「月刊民商」に掲載されていたことから、全商連に「なぜ兵庫では取り組めるのか」を問い合わせ、「自治体へのアポ取りの電話かけをはじめ、日程調整などを県連が主導し、担当民商に参加を求めている」と聞きました。
県連の三役会で“兵庫方式”を報告し、「コロナ禍で中小業者の声を行政に届けられるのは民商しかない」と議論。「県連がイニシアチブを執って取り組もう」「今こそ県連の役割を発揮する時」と決意を固めました。民商でも「県連が段取りしてくれるなら…」と受け止められました。
県内には42市町村があり、対する民商の数は8。多い民商(中濃、西濃)では、それぞれ11自治体を担当しています。県の面積も広く、多くが1人事務局体制ということもあり、「全自治体は断念し、まずは全21市をやり切ろう」と話し合いました。
訪問のノウハウ(依頼書の作成や送付先など)は、以前から自治体キャラバンに取り組んできた県労働組合総連合(県労連)に教わりました。昨年は懇談の申し入れが9月に入ってからでしたが、今年は8月早々には文書を送付し、段取り良く進めることができています。
参加した役員からは「業者のことをいろいろ考えてくれていて、うれしくなった」という市もあれば、「業者のことを何も知らんで、頭にきた」という市もあるなど、差がありました。鈴村会長も「消費税について全く理解しとらん」と憤る場面もありました。
それでも、2年目の今年は「地元の業者の皆さんの話を聞きたい」という回答もあり、昨年に比べて“聞く”姿勢が生まれてきており、民商の活動が市に認められつつあります。
県連では、21市の懇談の内容を踏まえて、あらためて年内に県との交渉を行う予定です。