消費税インボイス制度中止・延期を求め 新潟、宮崎で「県内初」採択|全国商工新聞

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 消費税のインボイス(適格請求書)制度の実施中止・延期を求める自治体が全国で広がっています。7月末時点の256自治体423件から、9月議会で意見書採択がさらに進み、289自治体543件(9月末)に増えています。地方議会では、自営業者や農業、漁業を営む保守系の議員が制度の中止・延期を求める民主商工会(民商)の請願に賛成するなど、大きな変化が生まれています。

【新潟県佐渡市】保守議員の変化を感じ 佐渡民商 本紙活用し市議と連携

ケーブルテレビ局「佐渡テレビ」のニュースで流れた佐渡市議会の様子

 新潟県佐渡市議会は、「消費税インボイス制度の実施中止を求める」ことを国に求める請願を賛成多数(賛成14、反対5、欠1)で採択しました(9月28日)。県内では初めての採択です。佐渡民商が請願書を提出し、中川直美、中村良夫の両市議(いずれも共産)が紹介議員となりました。
 中川市議は、市民厚生常任委員会の委員に「インボイスが実施されたら、大変なことになる。農業に従事する議員にも降りかかってくる問題だよ」と働き掛け、委員会では賛成多数で採択されました。
 本会議では、農業を営む2人の市議が賛成討論を行いました。無会派の佐藤定市議は「免税事業者が課税事業者になるか、取引を断られるかなどの選択を迫られる。シルバー人材センターは消費税納税を全額負担するようになる。全国でも今年すでに地方議会から423件の意見書が国に寄せられている」と訴え。最大会派「新生クラブ」の上杉育子市議は、「賛成討論をしたい」と自ら申し出て、「事業者の多くは、より詳細な経理事務の負担となる。商売を畳めば、すぐに代わりが見つからない地方では、経済のさらなる疲弊を招くことになりかねない」と指摘しました。
 佐藤市議は6月議会の一般質問でも、インボイスの問題を取り上げました。その時、「商工新聞を資料として配布してもいいでしょうか」との了解を得るため、全商連に電話をかけていました。そのことを聞いた民商の中村いづみ事務局長が佐藤市議を訪問すると、「インボイス問題は、何とかしないといけない」と話が弾み、商工新聞を購読することに。
 6月議会の一般質問では、インボイス制度の内容や問題点を明らかにし、「佐渡市の経済、免税事業者と課税事業者の取引、佐渡シルバー人材センター、佐渡市の公営企業等と取引のある業者、農産物直売所はどんな影響が出るか」などを質問。市側は「消費税分がシルバー人材センターの負担増となる」「農産物直売所等は、課税事業者が購入する場合は適格請求書を求められる可能性があるので、対応は必要になる」などと答弁。佐藤市議は「消費税が預かり金でないこと」を強調し、「問題がある税制」と訴えました。
 民商の南壽美男会長=行政書士=は「これまでにない保守議員の対応に驚いたが、インボイスの問題を明らかにすれば、理解してもらえる。制度の狙いや事業者への負担や影響を多くの業者に知らせ、消費税減税とともにインボイス制度の実施中止・延期を実現させたい」と話しています。

【宮崎県綾町】商工会会長も実施反対 宮崎民商 町議、国会議員と懇談

 宮崎県綾町は、「インボイス実施延期を求める意見書」を賛成多数(賛成6、反対3)で採択しました(9月28日)。県内初の採択です。橋本由里町議(共産)が議員発議で提案し、採択されたものです。
 橋本町議は9月議会の一般質問でインボイス制度の問題を取り上げ、「シルバー人材センターの事務局から、インボイス制度が実施されると存続できなくなるという声が上がっている。町として、どのように対応するのか」と質問。籾田学町長は「シルバー人材センターの会員に課税事業者になってもらうことは不可能なので、センターが負担することになる」と答弁しました。
 本会議では「インボイスの導入目的は“益税”問題などを解消することにある。延期ではなく、説明会の実施や相談窓口の設置などで推進する必要がある」などと反対討論があったものの、無所属の町議2人が賛成討論を行い、「制度の周知は進んでいない。このまま拙速に施行すれば、混乱は免れない。実施延期を求める」「中小企業者への負担を増大させ、コロナ禍で社会全体が疲弊している中で、極めて問題点が多い制度」と訴え、採択されました。
 同町を担当する宮崎民商は8月24日にインボイス制度の問題で、田村貴昭衆院議員(共産)と懇談し、橋本町議も参加していました。懇談後、請願について橋本議員に相談すると、「インボイス問題は、地元事業者にも、地域経済にも、シルバー人材を含む自治体にとっても大問題だ。議員発議として議論します」と力強い返事が。
 橋本町議は翌日から他の議員に働き掛け、制度の問題点などを話し、「意見書採択に力を貸してほしい」と訴え。自営業者などの町議から賛同が得られ、商工会の会長もインボイス制度実施に反対を表明しました。
 民商の山崎栄一郎会長=設備工事=は「商工新聞で全国の仲間の奮闘に励まされ、南九州4県連の決起にも勇気づけられた。宮崎民商の会員をはじめ、全国の仲間にうれしい報告ができる。残りの宮崎市、国富町でも意見書採択を勝ち取りたい」と決意しています。

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