全国商工団体連合会(全商連)は8月31日、国税庁が意見公募を行った「『所得税基本通達の制定について』(法令解釈通達)の一部改正(案)」について、問題点を指摘したパブリックコメント(図)を提出し、同庁へのヒアリングを実施しました。
同改正(案)は、「雑所得の範囲を明確化する」とし、「その所得がその者の主たる所得ではなく、かつ、その所得に係る収入金額が300万円を超えない場合には、特に反証がない限り、業務に係る雑所得として取り扱って差し支えない」との規定を盛り込むこととしています。
これが実施された場合、例えば、給与所得を得ながら副業として事業を起こし、事業所得300万円未満で確定申告をしているケースなどで、実質的に増税となる場合もあることから、意見公募には多くの懸念が寄せられています。
全商連はヒアリングで、「300万円の規定をもって、税務署から一方的に雑所得とされるのではないか」「脱サラして新規開業した人が2~3年、赤字が続いた場合、事業所得なら相殺できるが、雑所得では認められない。これでは実質的に増税となり、事業の芽を摘んでしまうのではないか」など懸念される点を指摘し、国税庁の見解を求めました。
庁側は「(事業所得かどうかは)確定申告書と事業実態を見て総合的に判断することになる。300万円以下でも事業実態がある人は事業所得で申告してもらってもよい。有無を言わさず画一的に判断するものではない。通達の解説も出し、そういう運用にならないようにしたい」「反証として事業実態を示してもらえれば、従来通り事業所得として対応する。問題となるのは、他の所得との相殺目的で赤字事業を続けるようなケースで、個別判断となる」などと答えました。
全商連は「納税者にとっては一つもメリットがない。法改正ではなく、通達の改正で納税者に大きな影響が出る取り扱いを行うことは、租税法律主義を定めた憲法に違反する行為であり、認められない。改正はやめるべきだ」と要請しました。