大企業が史上最高益も 低いままの法人税負担率 原因は莫大で不公平な減税|全国商工新聞

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税理士 菅 隆徳さんが解説

 国民の暮らしや中小業者の営業を直撃している円安や物価高が、大企業の利益を史上最高に押し上げています。ところが、法人税の実質負担率は低いままです。「その理由は、大企業優遇税制による莫大な減税があるため」と訴えるのは、「不公平な税制をただす会」共同代表の菅隆徳税理士です。史上最高益を上げている大企業(利益上位20社)の利益と税負担の実態を解説します。

 大企業の今年の3月期の純利益が史上最高益と報道されています(「日本経済新聞」2022年5月18日付)。円安による輸出増、もう海外での儲けが円換算で増えた企業、世界的な資源価格や輸送価格の上昇の恩恵を受けた石油会社や海運会社、商社などがあります。国民の暮らしや中小企業の営業に苦しさを与える円安と物価高が、大企業の利益にはプラスとなっています。
 史上最高益を上げている大企業(利益上位20社)の利益と税負担の実態を分析しました(表)。内容は①税引前純利益の金額②法人3税の金額(その会社の納税した法人税、法人住民税、法人事業税)③法定実効税率(その会社が明らかにした法定負担率)④実質負担率(②÷①、その会社の実際の税負担率)です。大企業の税負担率は本来ならば、ほぼ法定実効税率と同じになるはずですが、実質負担率が法定実効税率を大きく下回っている会社も多いです。大企業優遇税制による莫大な大企業減税があるためです。平均の法定実効税率は30・4%であるのに、実質負担率の平均は18・0%なのです。
 有価証券報告書から、個別企業の減税額を推定すると、多い順に①トヨタ自動車=受取配当益金不算入(以下受配という)2367億円、試験研究費の税額控除608億円②本田技研工業=受配1768億円③伊藤忠商事=受配3430億円④三菱商事=受配1399億円―というように莫大な減税があります。

応能負担こそ

 日本経済新聞が「繰り返す法人税ゼロ」の見出しで、ソフトバンクG(株)(通信会社のソフトバンクの親会社)が、21年3月期の決算で1兆4538億円の利益を上げながら、法人税がゼロだったことを報道しています(22年8月20日付)。原因は受配4863億円の減税です。財務省出身の識者も「適法でも兆円単位の利益がある会社が何年も法人税額がゼロなのは違和感がある。制度に問題がないか検討すべきだ」とコメントしています。アメリカやヨーロッパでは、大企業の税負担の軽さが問題視され、納税情報を透明化する制度作りが進んでいます。
 日本国憲法のいう税金の「応能負担原則」に従って、法人税の不公平をただすことが必要です。大企業優遇税制を廃止し、法人税にも累進税率を導入すれば、19兆8530億円(20年度)の財源が生み出されます。

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